【男女トラブル】二股をかけられていた|交際関係だけで請求できる場面
交際していた相手と別れた後、身に覚えのない請求書が届いたり、知らない会社や法律事務所から電話がかかってきたりして、元恋人が自分の名前や電話番号を勝手に使っていたと気づくことがあります。交際中は住所や生年月日、勤務先、ときには印鑑のある場所まで共有していることが多く、別れた後にその情報が使われる場面は決して珍しくありません。
この記事では、名前や電話番号が使われる典型的な形を整理したうえで、身に覚えのない連絡が来たときに確かめること、契約や保証の責任の考え方、ネット上で使われた場合の削除、刑事手続との関係、これ以上使われないための備えを順に説明します。
本記事は2026年10月時点の法令に基づいて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。
「勝手に使われた」にはいくつかの形がある
| 使われ方 | 典型的な例 | 主に問題になること |
|---|---|---|
| 契約書類に名前を書かれた | 借入れや分割払いの本人欄、連帯保証人欄に署名された | 契約の責任を負うかどうか、文書の偽造 |
| 電話番号を連絡先として書かれた | 元恋人が自分の借入れで「本人の番号」や緊急連絡先として登録した | 督促の連絡への対応、登録の削除 |
| ネット上で使われた | なりすましアカウントの作成、出会い系サイトへの登録、掲示板への書き込み | 削除、名誉やプライバシーの侵害 |
| アカウントや端末に入られた | 交際中に知ったパスワードでSNSや通販サイトにログインされた | 不正アクセス、利用された代金 |
一口に「勝手に使われた」といっても、どの形にあたるかによって、まず連絡すべき相手や取れる手段が変わります。複数の形が重なっていることもあるため、届いた書面や着信の内容から、どの場面に自分の情報が使われたのかを一つずつ切り分けておくことが出発点になります。
身に覚えのない連絡が来たときにまず確かめること
知らない番号からの着信や見覚えのない書面が届くと、慌てて詳しく事情を話したり、その場で支払いに応じたりしてしまいがちです。しかし、最初の段階では相手が誰で、何の件で連絡してきたのかを確かめることが先になります。
- 連絡してきた会社名・事務所名、担当者名、何の契約や債権についての連絡かを聞き取ります。
- 自分は契約した覚えがないこと、保証人になった覚えもないことを伝えます。
- 相手から確認のためとして生年月日や住所などを求められても、相手が誰かを確かめるまでは必要以上の情報を渡さないようにします。
- 着信履歴、届いた書面、通話の日時と内容のメモを残しておきます。
弁護士ドットコムには、別れて間もない時期に知らない法律事務所から電話があり、折り返すと元交際相手が自分の電話番号だと偽って相談者の番号を登録していたことが分かった、という相談が寄せられています。このように、相手の側も名義を使われたことに気づいていない場合があります。事情を伝えれば連絡先の登録を見直してもらえることもあるため、まずは落ち着いて「自分は本人ではない」と伝えることが大切です。
自分の名義でほかにも借入れやクレジット契約がされていないか不安な場合は、信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)に自分の信用情報の開示を求める方法があります。身に覚えのない契約が見つかれば、どこに連絡すべきかがはっきりします。
自分名義の契約や保証人にされていた場合
本人の意思がなければ、原則として契約の責任は生じない
契約は、本人がその内容に同意して初めて成立するのが原則です。元恋人が本人欄や連帯保証人欄に勝手に名前を書き、印鑑を押して提出したとしても、自分が同意していない以上、原則としてその契約に基づく支払いの責任は負いません。
ただし、交際中に自分から実印や印鑑登録証明書、身分証を預けていた場合や、過去に一度名義を貸したことがある場合には、相手方から「本人が任せていたのだから責任がある」と主張され、争いになることがあります。どのような経緯で情報や印鑑が相手の手に渡ったのかは、後の交渉で重要になるため、思い出せる範囲で整理しておくとよいでしょう。自分から身分証を渡していた場合の扱いについては、【刑事事件】身分証やマイナンバーカードを人に貸した|罪に問われるかを分ける使い道と、その後の対応もあわせてご覧ください。
請求を受けたら、支払いや承認と受け取られる対応を避ける
請求書が届いたときに一部だけでも支払ったり、「とりあえず分割で払います」と答えたりすると、契約を認めたものと受け取られるおそれがあります。名義を使われたと考える場合は、支払いに応じる前に、契約の書類(申込書や契約書の写し)の開示を求め、筆跡や記載内容を確認することが先になります。
一方で、「無効なのだから放っておけばよい」と考えて書面を無視し続けるのも避けたいところです。相手が裁判を起こし、裁判所からの書類にも対応しないでいると、言い分を述べる機会がないまま支払いを命じられるおそれがあります。裁判所から書類が届いた場合は、記載された期限を確認し、早めに弁護士へ相談してください。自分名義で借金をされた場合の進め方は、【男女トラブル】交際相手に勝手に自分名義で借金をされていた|返済義務と、貸主・相手それぞれへの対応で詳しく解説しています。
電話番号を連絡先として書かれていた場合
元恋人が自分の借入れの申込みで、こちらの電話番号を本人の番号や緊急連絡先として記載していた場合、その借金を代わりに返す義務は生じません。電話番号を書かれたことと、保証人になることとはまったく別の問題です。
また、貸金業法は、貸金業者が債務者以外の人に対して、債務者に代わって返済するよう求めることを禁じています(貸金業法21条1項)。督促の電話が続く場合は、自分は債務者でも保証人でもないことを伝えたうえで、登録されている電話番号を削除するよう求めることができます。それでも連絡が止まらない場合には、弁護士から書面で通知する方法もあります。取り立てが自分に向いた場合の線引きについては、【男女トラブル】交際相手の借金の取り立てが自分に来た|返す義務の有無と、求め方の線引きも参考になります。
ネット上で名前や電話番号を使われた場合
名前や写真を使ったなりすましアカウントが作られた、出会い系サイトに自分の電話番号で登録された、掲示板に名前と連絡先を書き込まれたといった場合は、まず画面の記録を残したうえで、サイトの運営者に削除を求めることが考えられます。大規模なプラットフォームについては、情報流通プラットフォーム対処法により、削除の申出への対応の手順が整えられています。
書き込みの内容によっては名誉毀損やプライバシーの侵害として、投稿者に損害賠償を求められることもあります。投稿者が元恋人だと推測できても確証がない場合には、発信者情報の開示を求める手続を検討します。なりすまし登録への具体的な対応は【男女トラブル】自分の写真で出会い系に登録されていた|なりすまし登録の削除で、住所まで書き込まれた場合は【ストーカートラブル】ネットに自宅の住所を書き込まれた|削除とその日の安全確保で解説しています。
交際中にパスワードを知られていて、SNSや通販サイトに勝手にログインされた形跡がある場合は、すぐにパスワードを変更し、ログイン履歴を保存しておきます。切り替えの順序は【男女トラブル】相手がSNSのパスワードを知っている|別れる前に切り替える順序をご覧ください。
刑事手続の対象になり得る行為
| 元恋人の行為 | 問題になり得る罪 |
| 契約書などに無断で名前を書き、提出した | 私文書偽造罪・偽造私文書行使罪(刑法159条・161条) |
| 名義を偽ってお金を借りた、商品を受け取った | 詐欺罪(刑法246条) |
| 知っていたID・パスワードで他人のアカウントにログインした | 不正アクセス禁止法違反 |
| 名前を使って社会的な評価を下げる内容を投稿した | 名誉毀損罪(刑法230条) |
他人の署名や印鑑を使って権利や義務に関する文書を作った場合、有印私文書偽造罪として3月以上5年以下の拘禁刑が定められています。ただし、文書偽造の罪は文書に対する社会の信用を守るためのものであり、お金をだまし取られたのが貸金業者や販売店である場合には、警察がその会社側の被害申告を重視することもあります。名前を使われた本人として何を求めるのか(契約の責任を否定したいのか、処罰を求めたいのか、これ以上の利用を止めたいのか)を整理してから相談すると、話が進みやすくなります。
なお、婚姻届に勝手に署名されるおそれがある場合には、役所に不受理申出をしておく方法があります。詳しくは【男女トラブル】婚姻届への署名を迫られている|勝手に出されないための不受理申出をご覧ください。
これ以上使われないための備え
- 信用情報を定期的に確認し、身に覚えのない契約がないかを見ておきます。
- 信用情報機関には、本人確認書類の紛失・盗難などを申告しておく制度があるため、身分証の写しを持たれている可能性があれば利用を検討します。
- 実印を相手に知られている場合は、印鑑登録を廃止して新しい印鑑で登録し直すことを検討します。
- 各種サービスのパスワードと、登録しているメールアドレスや電話番号を見直します。
- 交際中に住所を共有していた場合は、郵便物の扱いや転送の設定を確認します。
郵便物の整理については【男女トラブル】別れた後も郵便物が相手の家に届く|住所変更と受け取りの整理も参考になります。
元恋人本人への対応と、弁護士に任せる場面
名前や電話番号を勝手に使われたと分かると、すぐに元恋人へ連絡して問いただしたくなるかもしれません。しかし、直接のやり取りで感情的な言い合いになると、相手が記録を消したり、別の形で連絡を続けてきたりするなど、かえって状況が複雑になることがあります。やり取りの内容が後から「脅された」と言われる材料になることもあるため、直接の接触は慎重に考えたいところです。
弁護士に依頼した場合は、元恋人に対して利用をやめるよう求める通知を送るほか、契約先への連絡、削除の申出、損害賠償の請求、刑事告訴の検討などを並行して進めることができます。当事務所でも、元交際相手によるなりすましや嫌がらせについて、弁護士が窓口となって対応した例があります(【解決事例】元交際相手からの恐喝・なりすまし被害|受任通知で嫌がらせを止めた解決事例)。交際関係の解消に伴うトラブル全般への対応は、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご案内しています。
元恋人に名前や電話番号を使われた場合、契約の責任、督促への対応、ネット上の削除、刑事手続と、考えるべきことが同時にいくつも出てきます。届いた書面や着信の記録を手元に残し、どの場面に自分の情報が使われたのかを整理することが、次の一手を選ぶ手がかりになります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


