【男女トラブル】恋人の資格取得や学費を援助していたら、返してもらえる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。


「資格の学校に通う費用を出してあげたのに、合格した途端に別れを告げられた。あのお金は返してもらえないのでしょうか」。男女間のトラブルのご相談では、こうした声をいただくことがあります。反対に、「交際中に学費を出してもらったが、別れたら全額返せと言われた」という、援助を受けた側からのご相談もあります。

 恋人間のお金のやり取りについては、「プレゼントは返さなくてよい」「貸したお金は返してもらえる」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、学費や資格取得の費用は金額が大きく、「将来のため」「二人の生活のため」といった意味合いを帯びやすいことから、贈与なのか貸付なのかの線引きが、日常のデート代やプレゼントよりも難しくなりがちです。

 この記事では、交際相手の学費や資格取得の費用を援助していた場合に、別れた後に返還を求められるかどうかを、援助した側の視点から整理します。返還を求められた側の対応については、別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで解説しています。

学費・資格取得費用の援助は「贈与」か「貸付」か

返してもらえるかは、渡したときの約束で決まる

 お金を渡した後に返還を求められるかどうかは、そのお金が「あげたもの(贈与)」だったのか、「貸したもの(金銭消費貸借)」だったのかによって大きく変わります。名目が「援助」であっても、法律上はどちらかに当てはめて考えることになります。

 貸付であれば、相手には返す義務があります(民法587条)。借用書がなくても、お金を渡したことと、返すという約束があったことを示せれば、貸付は成立します。一方、贈与であれば、原則として返還を求めることはできません。別れたかどうかではなく、お金を渡した時点で「返す約束」があったかどうかが分かれ目になります。

「資格を取ったら返す」という約束は貸付として扱われやすい

 「合格して働き始めたら少しずつ返す」「就職したら返すね」といったやり取りがあった場合、返済の時期を将来に先送りした貸付と考えられる余地があります。いわゆる「出世払い」の約束について、裁判例では、出世したときに限って返せばよいという意味ではなく、出世するか、その見込みがなくなった時点で返済期限が来るものと理解されてきました。

 このため、「資格を取ったら返す」と約束していた場合、相手が合格すれば返済の時期が来たと主張できる可能性があります。反対に、試験を断念した場合でも、それだけで返済義務がなくなるとは限りません。

返す約束がないまま渡したお金は、贈与と見られることが多い

 「応援したい」「出世したら何か買ってね」程度のやり取りで学費を出していた場合や、返済について何も話していなかった場合は、贈与と判断されることが少なくありません。特に、交際期間が長く、日頃から生活費を分担していた関係では、援助も好意によるものと見られやすい傾向があります。

 交際中に立て替えた生活費やプレゼント代全般については、交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?で整理しています。

贈与だった場合でも、返還を求められる場面

まだ渡していない分は、約束を撤回できることがある

 書面によらない贈与は、まだ実行していない部分について解除することができます(民法550条)。たとえば「来年度の学費も出す」と口頭で約束していたものの、まだ支払っていない場合は、その分の支払いを断ることができます。ただし、すでに学校へ振り込んだ分など、履行が終わった部分は解除の対象になりません。

「結婚を前提に」という明確な条件があった場合

 「結婚することを前提に、学費を出す」というように、援助が特定の条件と結びついていたことがはっきりしている場合は、条件付きの贈与(民法127条)などとして、条件が成就しなくなったことを理由に返還を求める余地が出てきます。もっとも、恋人同士の会話の中で「将来一緒になろうね」と話していた程度では、条件とまで認められないことが多く、婚約が成立していたかどうかも含めて慎重な検討が必要です。

援助を引き出すために、事実と違う説明があった場合

 最初から返すつもりも交際を続けるつもりもないのに、「資格を取って二人の生活を支えたい」などと説明して援助を受けていた場合には、詐欺による取消し(民法96条1項)や不法行為(民法709条)として、返還や損害賠償を求められる可能性があります。ただし、別れたことだけで「だまされた」と認められるわけではなく、援助を受けた時点での相手の意図を、やり取りの記録などから示していく必要があります。

 説明が事実と違っていたと分かった後の考え方は【男女トラブル】病気や不幸の話を信じてお金を渡していた|嘘だと分かった後で、結婚をほのめかされていた場合の立証については結婚詐欺に遭ったかも|結婚詐欺の立証と損害賠償請求で解説しています。

貸付として返還を求めるために整理しておくこと

手元に残しておきたい記録

 貸付であったことを示すのは、返還を求める側の役割です。学費や資格取得の費用の場合、次のような記録が手がかりになります。

  • 学校や講座への振込記録、相手の口座への送金記録、領収書。
  • 「合格したら返す」「就職したら返済する」など、返済に触れたLINEやメールのやり取り。
  • 相手が一部でも返済した記録や、返済の予定を話した録音。
  • 援助の金額や時期を書き留めたメモや家計簿。
  • 援助の経緯を知っている家族や友人の存在。


 学費を学校へ直接振り込んでいた場合も、相手の学費を支払ったことの記録として意味を持ちます。記録は消さずに保存し、スクリーンショットは日付が分かる形で残しておくことをおすすめします。

相手が返済を認めたやり取りの扱い

 別れた後に相手が「少しずつ返す」と応じた場合、その言葉は貸付であったことを裏付ける材料になるうえ、時効を考えるうえでも意味を持ちます(債務の承認・民法152条1項)。感情的なやり取りになると、相手が態度を変えることもあるため、まずは落ち着いて、返済の意思を確認する形で連絡を取るのがよいでしょう。

時効にも注意が必要

 貸したお金の返還請求権は、返済を請求できると知った時から5年、または返済を請求できるようになった時から10年で時効にかかります(民法166条1項)。「資格を取ったら返す」という約束の場合は、合格した時期などが起算点の判断に関わります。長く時間が経っている場合は、男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかもあわせて確認しておくとよいでしょう。

返還を求めるときの進め方

話し合いと書面での請求

 まずは相手に、援助した金額と返済を求める理由を伝え、返済の方法や時期を話し合うのが一般的です。分割での返済に応じるという合意ができた場合は、金額と支払日を書面にしておくと、その後のトラブルを防ぎやすくなります。相手が応じない場合は、内容証明郵便で請求の意思を明確に伝える方法もあります。

裁判所の手続を使う場合

 話し合いで解決しない場合は、支払督促(民事訴訟法382条)、60万円以下の請求であれば原則1回の期日で審理する少額訴訟(同法368条1項)、通常の訴訟といった手続があります。相手が「贈与だった」と争うことが見込まれる場合は、少額訴訟から通常の訴訟に移ることもあるため、手持ちの記録でどこまで示せるかを見極めたうえで手続を選ぶことが大切です。借用書がない場合の立証の考え方は、恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?で詳しく整理しています。

返還を求める連絡で気をつけたいこと

 返してほしいという気持ちが強いほど、連絡が頻繁になったり、相手の職場や家族に知らせると伝えたりしてしまうことがあります。正当な請求であっても、伝え方によっては脅迫や恐喝と受け取られるおそれがあるため、連絡の頻度や内容には注意が必要です。どこからが問題になるのかは、「金を返せ」と強く迫った|正当な債権回収と恐喝の境界で解説しています。

よくあるご質問

学費を学校に直接振り込んでいた場合、学校に返金を求められますか?

 学校と在学契約を結んでいるのは通常は交際相手本人であり、学費を出した側が学校に返金を求めることは難しいと考えられます。返還を求める相手は、基本的には交際相手本人です。なお、相手が退学して学校から未受講分が返金された場合は、そのお金の扱いも含めて相手と話し合うことになります。

相手の奨学金の返済を代わりに払っていた場合はどうなりますか?

 奨学金の返済を代わりに支払った場合も、その支払いが「代わりに払ってあげた(贈与)」のか、「立て替えて後で返してもらう」約束だったのかによって考え方が分かれます。立て替えの約束が確認できれば、相手に支払った分の返還を求められる可能性があります。

資格を取った途端に別れを告げられました。慰謝料も請求できますか?

 交際の解消そのものは、原則として慰謝料の対象にはなりません。ただし、婚約が成立していた場合や、結婚をほのめかして援助を受けるなど悪質な事情がある場合には、別途、婚約破棄や不法行為として慰謝料を請求できる余地があります。援助金の返還とは別の問題として整理しておくとよいでしょう。交際が長く続いていた場合の考え方は、【男女トラブル】交際期間の長さは金銭の清算に影響するのかで整理しています。

まとめ


  1. 学費や資格取得の費用を返してもらえるかは、渡した時点で返す約束があったかどうかで決まります(民法587条)。
  2. 「資格を取ったら返す」という約束は、返済時期を先送りした貸付と考えられる余地があります。
  3. 返す約束がない援助は贈与と見られやすく、すでに支払った分の返還は原則として難しくなります(民法550条)。
  4. 結婚を前提とする明確な条件があった場合や、事実と違う説明で援助を受けていた場合には、返還を求める余地があります(民法127条、96条1項、709条)。
  5. 貸付であることを示すのは援助した側であり、振込記録や返済に触れたやり取りを保存しておくことが大切です。
  6. 返還請求権には時効があり、相手が返済を認めることで時効が更新されることもあります(民法166条1項、152条1項)。
  7. 請求の際は、伝え方が脅迫や恐喝と受け取られないよう注意しながら、話し合い、書面、裁判所の手続と段階を踏んで進めます。


恋人への援助の返還をご検討中の方へ

 学費や資格取得の費用は、援助したときの気持ちが強いぶん、別れた後に割り切れなさが残りやすいお金です。贈与と貸付のどちらに当たるのか、手元の記録でどこまで示せるのかを整理するところから始めることで、取れる手段が見えてきます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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