【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

 連絡しても返信がない。電話に出ない。書留を送っても受け取られないまま戻ってくる。あるいは、住んでいたはずの場所から引っ越していて、今どこにいるのかも分からない。男女間のトラブルでは、相手が話し合いの場に出てこないまま時間だけが過ぎていく状況が、しばしば起こります。

 こうしたとき、まず考えるのは「どうすれば相手を捕まえられるか」でしょう。ただ、手続を選ぶ前に整理しておきたいことがもう一つあります。清算したいと思っている事柄が、そもそも相手の協力を必要とするものなのかどうか、という点です。相手が動かなくても法律上は決着させられる事柄と、相手が応じない限り実現しない事柄は、はっきり分かれています。

 この記事では、交際関係の解消に伴う金銭や物の清算を念頭に、相手が応じないまま進められる手続と、進められない事柄の境目を整理します。

本記事は2026年9月時点の法令に基づいて記載しています。個別の事情によって結論は変わりますので、一般的な整理としてお読みください。


「話し合いに応じない」は三つの状態に分かれる

 同じ「連絡が取れない」という言葉でも、手続の観点からは次の三つに分かれます。どの状態にあるかで、選べる手段の幅が変わります。

状態典型的な現れ方手続の進めやすさ
届いているが応答がない既読のまま返信がない、電話に出ない住所が分かっていれば、ほとんどの手続を選べます
受け取ろうとしない内容証明や書留が「保管期間経過」で戻ってくる届いたものとして扱える場合があり、手続も進みやすい状態です
所在が分からない転居先不明で郵便が戻る、住民票上の住所に住んでいない使える手続が絞られ、事前の調査が前提になります


 この区別が大切なのは、一般に紹介されている手続の中に、三つ目の状態では使えないものが混じっているからです。相手が消えた後で慌てて申立てをすると、入口で止まることがあります。

相手の協力が要る清算・要らない清算

 次に、何を清算したいのかを分けます。金銭であれば相手の協力は要りませんが、写真の削除や「今後連絡しない」という約束は、相手が動かなければ実現しません。

清算したい事柄相手の協力協力が得られないときの道筋
金銭の支払や貸したお金の返還不要判決などを得たうえで、相手の財産を差し押さえる
預けた物や置いたままの家財の引渡し不要引渡しを命じる判決を得て、執行官による手続をとる
名義の変更など意思表示を求める事柄不要判決の確定により、意思表示があったものとして扱われる
写真や動画の削除、投稿の取り下げ必要削除を命じる判決を得たうえで、間接強制を検討する
今後連絡しないという約束必要合意はできないため、警告や別の法的手続で対応する
互いに請求しないという確認必要合意が前提であり、一方的に作ることはできない


 金銭に関する清算は、相手が最後まで一言も発しなくても、制度上は終わらせることができます。一方で、相手の行為そのものを求める事柄は、判決を得た後にもう一段の手続が必要になり、確実に実現するとは限りません。何を優先して片づけるかを決める際の、最初の物差しになります。

まず「届いた」という状態をつくる

 解除や返還の請求といった意思表示は、相手に到達して初めて効力を生じます(民法97条1項)。話し合いに応じない相手であっても、この出発点は変わりません。

受け取ってもらえないとき

 内容証明郵便が不在のまま保管期間を過ぎて戻ってきた場合でも、それだけで無意味になるわけではありません。最高裁は、差出人や内容を推知でき、受け取ろうと思えばさしたる手間なく受け取れた事情のもとでは、社会通念上、了知できる状態に置かれたとして、遅くとも保管期間が満了した時点で到達したと認めた事例があります。

 現在の民法は、相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなすと定めています(民法97条2項)。受け取らないという対応が、そのまま「届いていない」ことにはならないという建てつけです。戻ってきた封筒は捨てず、返還の理由が記された状態のまま保管してください。

所在が分からないとき

 相手が誰であるかは分かっていても所在が分からない場合には、公示による意思表示という制度があります(民法98条)。相手の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、裁判所の掲示場への掲示と官報への掲載を経て、最後に掲載した日から2週間を経過した時に到達したものとみなされます。

 もっとも、相手の所在を知らないことについて申立人に過失があるときは、到達の効力を生じないとされています。調べれば分かる状態のまま使える制度ではありません。所在の調べ方については不倫相手が音信不通・行方をくらました|請求相手を追う方法で整理しています。

相手が出てこないまま使える手続


支払督促は所在が分かっていることが前提

 相手が応じないときの手段として広く紹介されているのが支払督促です。書面審査だけで進み、出頭も不要なため、確かに負担は軽い手続です。

 ただし、支払督促は日本国内で、公示送達によらずに送達できる場合に限って発することができるとされています(民事訴訟法382条ただし書)。相手の所在が分からない事案では、そもそも使えません。相手に異議を述べる機会を保障するための仕組みですが、結果として、最も困っている状態では選べない手続ということになります。相手が異議を申し立てれば通常の訴訟に移る点も、あらかじめ知っておきたいところです。

民事調停は相手が来なければ終わる

 民事調停は費用が低く、話し合いの延長として利用しやすい手続です。呼出しを受けた関係人が正当な事由なく出頭しないときの過料の定めもあります(民事調停法34条)。

 しかし、調停はあくまで合意を目指す手続であり、相手が来なければ成立する見込みがないものとして終わります。裁判所が職権で解決内容を示す調停に代わる決定という制度はありますが(同法17条)、告知から2週間以内に異議が出れば効力を失います(同法18条)。相手が最初から関わる気のない事案では、調停に時間をかけても結論に届かないことがあります

訴訟は相手が出てこなくても進む

 訴訟は、相手が出席しなくても手続が進み、判決という形で決着がつきます。所在が分からない場合も、公示送達によって進める道があります。

 注意したいのは、公示送達で進んだ場合、相手が争わなかったことをもって主張を認めたものとは扱われない点です(民事訴訟法159条3項ただし書)。貸したお金であれば振込の記録ややり取りの履歴といった裏づけが必要になります。判決を得た後の回収については【不貞慰謝料】相手が転居・行方不明になった場合もあわせてご覧ください。

払う側・返す側から清算したい場合

 清算したいのが支払う側ということもあります。返すべき金額は用意できているのに相手が受け取らない、あるいは連絡がつかず振込先も分からない、という状況です。この場合には弁済供託という方法があります。

 供託ができるのは、弁済の提供をしたのに受領を拒まれたとき、または債権者が受領することができないときです(民法494条1項)。所在が分からない相手は、このうち受領できないときとして扱われます。同条2項の「債権者を確知することができない」場合とは誰が債権者か分からない場合を指し、住所が分からないだけでは2項には当たらないと理解されています。供託先は債務の履行地の供託所であり(同法495条1項)、持参して支払う債務では相手の住所が基準になります(同法484条1項)。

 もっとも、供託は金額が定まっている債務に向いた制度です。いくら返せば終わりなのかが争いになっている段階では、一部だけを供託しても債務が消えたとは扱われないことがあります。金額の見立てを立ててから使う手続だとお考えください。

相手の行為が必要な事柄はどこまで実現できるか

 写真や動画の削除、投稿の取り下げのように、相手が自ら動かなければ結果が生じない事柄は、金銭とは別の扱いになります。削除を命じる判決を得ても、相手が従わなければ、一定額の支払を命じて履行を促す間接強制を重ねて検討することになります。

 一方で、名義の変更のように意思表示を求める請求は、判決の確定によって意思表示があったものとみなされ、相手が窓口に来なくても完結します。共同で契約していた携帯電話や賃貸借のように、契約の相手方が事業者である事柄も、相手の同意ではなく事業者所定の手続に沿って進むことがあります。相手の協力が要るように見えて、実は要らない事柄が混じっていることは少なくありません

待っている間にも時効は進む

 連絡を待ち続けることには、時効という代償が伴います。貸したお金であれば、権利を行使できることを知った時から5年という期間が動いています。相手の行為による損害の賠償であれば、損害と加害者を知った時から3年という期間です。

 時効の進行を止める手段のうち、催告は6か月の猶予を生むにとどまり、繰り返しても延びません。協議を行う旨の合意による猶予は、相手との書面による合意が前提ですから、話し合いに応じない相手には使えません。結局、確実に止めるには裁判上の請求などの手続を起こす必要があります。相手を探す作業と、期間を止める作業は、並行して進めるのが基本です。

連絡を取ろうとして踏み外しやすい線

 連絡がつかない状態が続くと、別の経路から接触したくなるものです。ただし、次の行動はこちらの立場を悪くすることがあります。

  • 勤務先や実家に繰り返し電話をして、事情を説明させようとする。
  • 共通の知人を通じて所在を探らせ、その過程で交際や金銭の経緯を伝えてしまう。
  • SNSで相手の名前や写真を挙げて呼びかける。
  • 相手のアカウントに連日メッセージを送り続ける。


 執拗な連絡は、内容によってはストーカー規制法上の問題として扱われることがあります。周囲に事情を広げる行為が、名誉やプライバシーの問題を新たに生むこともあります。詳しくは【不貞慰謝料】相手への連絡がストーカー規制法に触れる場合をご覧ください。手段の選び方によって、本来の請求まで見えにくくなることがあります。

よくあるご質問


相手の住民票を取り寄せることはできますか

 第三者が住民票の写しを請求するには、権利行使のために必要であることなど、法律上の要件を満たす必要があります。個人からの請求が常に認められるわけではなく、契約書や請求の根拠を示す資料を求められるのが通常です。

LINEをブロックされた場合、送ったメッセージは届いたことになりますか

 相手が読める状態に置かれたかどうかで判断されるため、ブロックされている場合には到達したといえないおそれがあります。重要な意思表示は、記録の残る方法を併用しておくのが安全です。

相手が海外にいる場合はどうなりますか

 国外にいることが分かっている場合、送達には条約に基づく手続が必要となり、時間がかかります。支払督促のように国内での送達を前提とする手続は使えません。

まとめ


  • 「連絡が取れない」は、応答がない状態、受け取らない状態、所在が分からない状態の三つに分かれます。
  • 金銭や物の引渡しは、相手が応じなくても手続だけで決着させることができます。
  • 削除や接触禁止の約束のように、相手の行為や合意が必要な事柄は、別の道筋で考える必要があります。
  • 受け取られずに戻ってきた郵便も、到達したものとして扱われる場合があります。
  • 支払督促は所在が分かっていることが前提で、調停は相手が来なければ成立しません。
  • 支払う側からの清算には供託という手段がありますが、金額が定まっていることが前提です。
  • 待っている間も時効は進むため、探す作業と期間を止める作業は並行して進めます。


ご相談について

 何を取り戻したいのか、どの記録が残っているのか、相手の所在がどこまで分かっているのかによって、選ぶべき手続は変わります。待っている間にも期間は進みますので、方針だけでも早めに固めておくことをおすすめします。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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