【男女トラブル】交際に反対する相手の親から、職場に電話が来たら?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年11月時点の法令に基づいて作成しています。刑法の罰則は、2025年6月1日施行の改正により「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されたことを反映しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。


交際している相手の親から結婚や交際に反対され、ある日、勤務先に電話がかかってきた。上司に「〇〇さんと別れるよう伝えてほしい」と話された、同僚が取り次いだ電話で交際のことを詮索された。こうしたご相談は、年齢や交際の形を問わず寄せられています。

 親が子の交際に意見を持つこと自体は、珍しいことではありません。ただ、その意見を本人どうしの話し合いではなく、職場という第三者を巻き込む形で伝えてくると、仕事への影響や周囲の目が加わり、交際の問題だけでは済まなくなります。

 この記事では、交際に反対する相手の親から職場に電話が来たとき、その場でどう受け止め、勤務先とどう向き合い、どの段階で電話を止める手立てを取るかを整理します。相手の家族が交渉の場に出てきた場合の考え方は、【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方で解説しています。

職場に電話が来たとき、まず押さえること

電話があったと聞いた直後は、驚きや恥ずかしさから、すぐに相手の親へ抗議したくなるかもしれません。最初にしておきたいのは、反論よりも状況の把握と記録です。

誰が、誰に、何を話したのかを確かめる

電話を取り次いだ同僚や上司に、可能な範囲で次の点を聞いておきます。

  • かかってきた日時と、電話を受けた人の名前。
  • 名乗った名前と、こちらとの関係(交際相手の父・母など)。
  • 話した内容(交際への反対、自分についての評価、何かの要求など)。
  • 表示された電話番号や、折り返し先を告げられたかどうか。
  • 電話を受けた人のほかに、内容を聞いた人がいるかどうか。


 後で法的な手段を検討する場合、「職場の誰に、何を伝えたか」が評価の分かれ目になることがあります。聞き取りは詰問にならないよう、「ご迷惑をおかけしてすみません。念のため内容を控えておきたいので」と協力をお願いする形が無難です。

自分が電話に出てしまった場合

勤務中に自分が電話を受けた場合は、その場で議論を始めず、「業務中のため、この電話ではお話しできません」と短く伝えて切り上げるのが一つの方法です。交際の是非や相手の親への不満をその場で口にすると、言い合いが周囲に聞こえるうえ、後で「失礼なことを言われた」と別の争いの種になることもあります。

 会社の電話に通話録音の仕組みがある場合は、保存期間が過ぎる前に、録音を残しておけないか会社に相談しておくとよいでしょう。

記録はその日のうちに残す

聞き取った内容は、日付・時刻・内容を時系列でメモにし、着信履歴の画面や、相手の親から届いたメッセージ・手紙などと一緒に保管しておきます。電話が一度きりなのか、繰り返されているのかは、後で取れる手段を考えるうえで重要な事情になります。

交際への反対と、職場への電話は分けて考える

相手の親の行動を考えるときは、「交際に反対していること」と「職場に電話をかけてきたこと」を分けて見ると、整理しやすくなります。

成人どうしの交際や結婚に、親の同意は要らない

成人した二人が交際すること、結婚することは、本人どうしの意思で決められます。婚姻は両性の合意のみに基づいて成立するとされ(憲法24条1項)、2022年4月の民法改正では、未成年者の婚姻に父母の同意を求めていた旧民法737条も削除されました。親が反対していても、そのことで交際や結婚が法的に妨げられるわけではありません。

 一方で、親が子に対して「あの人とは付き合わないでほしい」と意見を伝えることは、親子の間のやり取りとして自由です。反対の意見を持つこと自体を、法的に止めさせるのは難しいのが実情です。なお、交際相手が18歳未満の場合は、親が親権者として子を監護する立場にあるため(民法820条)、事情が大きく異なります。

問題になりやすいのは「伝え方」と「伝える先」

問題になりやすいのは、反対の意見を、本人ではなく勤務先という第三者に向けて伝える場面です。職場への電話は、次のような点で、親子間の意見表明とは性質が変わってきます。

  • 交際という私生活の事柄が、仕事の関係者に知られる。
  • 人柄や素行についての評価が、事実かどうか確かめられないまま伝わる。
  • 電話の対応で、同僚や上司の業務の時間が割かれる。
  • 「別れなければ会社にいられなくなる」といった含みが、要求の手段として使われる。


 一度の電話で反対の意思を伝えただけであれば、法的な責任を問うのは難しい場合が多いと考えられます。他方、内容や回数によっては、次に見るように法的な問題になり得ます。

職場への電話が法的な問題になる場面

職場への電話で問題になり得る主なものを、表にまとめます。

考えられる問題主な要件・ポイント
名誉毀損(刑法230条1項)事実を示して社会的評価を下げる内容を、公然と伝えた場合。内容が本当かどうかを問わず成立し得る。
侮辱(刑法231条)事実を示さずに、公然と人をおとしめる言葉を伝えた場合。
業務妨害(刑法233条・234条)うその情報を流したり、執拗な電話や怒鳴るなどの威力を用いたりして、会社の業務を妨げた場合。
脅迫・強要(刑法222条・223条)本人や親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告げた場合。それによって義務のないことをさせれば強要。
不法行為(民法709条・710条)名誉やプライバシーを違法に侵害した場合の損害賠償。刑事事件にならなくても検討できる。


名誉毀損は「公然と」の要件がポイントになる

名誉毀損罪や侮辱罪は、「公然と」伝えたことが要件です。電話を受けたのが上司一人だった場合、ただちに公然性が認められるとは限りません。判例は、伝えた相手が少人数でも、そこから不特定または多数の人に広がる可能性がある場合に公然性を認める考え方(いわゆる伝播性の理論。最判昭和34年5月7日)をとっていますが、職場内の一人に伝えたことがどう評価されるかは、伝えた相手の立場や内容、その後の広がり方などによって分かれます。

 民事の損害賠償では、刑事の要件とは別に、社会的評価が下がったかどうか、私生活上の事柄をみだりに明かされたかどうか(プライバシーの侵害)という観点からも検討されます。刑事事件として扱いにくい場合でも、民事上の請求の余地が残ることがあります。

業務妨害・脅迫になり得る場面

何度も電話をかけて取次ぎを求め続ける、受付で大声を出す、事実に反する話で会社を動かそうとするといった行為が続けば、業務妨害として扱われる余地が出てきます。また、「別れないなら職場にもっと知らせる」「会社にいられなくする」と告げて交際の解消を迫る場合は、脅迫や強要の問題になり得ます。

 業務妨害の線引きについては業務妨害で立件される言動|威力と偽計の違いで、脅迫・強要・恐喝の違いについては恐喝・強要・脅迫はどう違うのか|言い方で罪名が変わるで詳しく解説しています。

ストーカー規制法が使いにくい理由

しつこい電話というと、ストーカー規制法を思い浮かべる方もいると思います。ただ、同法の「つきまとい等」は、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で行われることが要件です(同法2条1項)。交際に反対する親の行為はこの目的にあたらないことが多く、同法による警告や禁止命令の対象になりにくい場面があります。そのため、親からの電話には、上で見た刑法上の罪や、民事上の手続を中心に考えることになります。

勤務先とどう向き合うか

職場に電話が来た以上、会社に何も説明しないままでいると、かえって憶測を招くことがあります。どこまで話すかは、自分で決めてかまいません。

上司や人事に伝える範囲

説明は、「私生活上のことで、交際相手の家族から連絡が入ってしまった」「ご迷惑をおかけしており、対応を進めている」といった、事実と今後の方針にとどめるのが一般的です。交際の経緯や相手の家族への評価まで詳しく話す必要はありません。

 電話で伝えられた内容に事実と違う点があれば、その点だけは落ち着いて訂正しておくと、評価への影響を抑えやすくなります。交際の話が上司に伝わった後の対応は、【男女トラブル】別れを告げたら相手が自分の上司に話した|職場への影響を抑えるも参考にしてください。

取次ぎのルールを決めておく

再び電話がかかってくることに備えて、会社と次のような対応を相談しておくと、同僚の負担を減らせます。

  • 本人への取次ぎはせず、「個人的なご用件はお受けしていません」と伝えて切ってもらう。
  • かかってきた日時と内容を、簡単に控えてもらう。
  • 来社された場合の窓口と、受付での対応を決めておく。
  • 弁護士に依頼した後は、弁護士の連絡先を伝えてもらう。


 会社によっては、業務に支障が出る電話への対応方針をすでに持っていることもあります。職場への電話や押しかけへの対応は元恋人が職場へ電話・押しかけ|会社を巻き込む嫌がらせへの対応で、押しかけへの法的な対応は職場・自宅に押しかけられた|住居侵入・不退去・業務妨害の使い方で解説しています。

交際を理由に不利益な扱いを受けたら

私生活での交際は、本来、会社での評価とは切り離される事柄です。一般に、従業員の私生活上の行為を理由とする懲戒は、会社の事業や信用に具体的な影響が生じる場合などに限られると考えられています。相手の親から電話があったことだけを理由に配置換えや退職を勧められた場合には、その理由や根拠を確かめ、必要に応じて労働相談の窓口や弁護士に相談することも考えられます。

電話を止めるために取れる手段

対応は、穏やかなものから段階的に考えるのが一般的です。

交際相手から親に伝えてもらう

まず考えられるのは、交際相手本人から親に「職場への連絡はやめてほしい」と伝えてもらう方法です。親子の間で話すほうが、角が立ちにくい場合もあります。ただし、交際相手が親との板挟みになり、二人の関係に負担がかかることもあります。誰が何を伝えるかを二人で確認してから動くのがよいでしょう。

 自分から相手の親へ抗議の電話をかけたり、相手の親の勤務先に連絡したり、経緯をSNSに書き込んだりすることは、同じ問題をこちらが起こすことになりかねないため、避けたほうが無難です。

弁護士を窓口にする

電話が繰り返される、内容が厳しくなってきたという場合には、弁護士が代理人として相手の親に通知を送り、今後の連絡は弁護士を通すよう求める方法があります。連絡の窓口を一本化することで、職場への連絡を止めるきっかけをつくり、相手の親とのやり取りを記録に残る形に移すことができます。通知には、職場への連絡をやめてほしい旨や、続いた場合には法的な対応を検討する旨を、穏当な表現で記載するのが一般的です。

 当事務所が公開している解決事例にも、交際相手の親族を名乗る人物からの嫌がらせが、弁護士の介入によって止んだケースがあります。詳しくは【解決事例】不倫相手の親族を名乗る人物からの嫌がらせ|弁護士の介入により連絡を停止させた事例で紹介しています。勤務先への電話を伴う請求が止まった事例として、【解決事例】元交際相手からの金銭要求と勤務先への電話|接触禁止の誓約書を取得し、支払いなく解決した事例もご覧ください。

警察への相談と民事上の手続

脅すような言葉がある、職場や自宅に押しかけてくるといった場合は、最寄りの警察署や警察相談専用電話(#9110)に相談し、記録を示しながら状況を伝えます。身の危険を感じるときは、110番通報をためらう必要はありません。被害届の受理をめぐる考え方は、脅迫の被害届は受理されるのか|「民事不介入」と言われたときの再挑戦で解説しています。

 それでも止まらない場合には、裁判所に、職場への電話や面会の強要を禁止する仮処分を申し立てることや、名誉やプライバシーの侵害を理由に損害賠償を求めることも考えられます。どの手段が適するかは、電話の回数や内容、職場への影響の程度によって変わります。

よくあるご質問


Q:一度だけの電話でも、弁護士に相談してよいですか?

ご相談いただけます。一度の電話だけで法的な手続に進むことは多くありませんが、記録の残し方や会社への伝え方、次に電話が来たときの備えを早めに整理しておくと、落ち着いて対応しやすくなります。

Q:相手の親に謝罪や慰謝料を求めることはできますか?

電話の内容が名誉やプライバシーを違法に侵害するものであれば、損害賠償を求められる場合があります。もっとも、一度の電話で反対の意思を伝えただけであれば、請求は難しいことが多いと考えられます。実際には、謝罪や金銭よりも、まず職場への連絡をやめてもらうことを優先するほうが、生活と仕事を守るうえで現実的な場合が多いといえます。

Q:弁護士に頼むと、交際相手との関係が悪くならないか心配です。

弁護士が相手の親に連絡するときは、交際の是非には立ち入らず、職場への連絡をやめてもらうことに目的を絞ることができます。交際相手にどう伝えるか、通知を送る時期をいつにするかも、ご相談の中で一緒に考えていきます。

まとめ


  1. 職場に電話が来たら、その場で言い返さず、誰が誰に何を話したかを確かめて記録に残す。
  2. 成人どうしの交際や結婚に親の同意は要らない(憲法24条1項)が、親が反対の意見を持つこと自体を止めさせることは難しい。
  3. 問題になりやすいのは、反対の意見を勤務先という第三者に向けて伝える「伝え方」と「伝える先」である。
  4. 内容や回数によっては、名誉毀損(刑法230条1項)、侮辱(同法231条)、業務妨害(同法233条・234条)、脅迫・強要(同法222条・223条)、不法行為(民法709条・710条)が問題になり得る。
  5. ストーカー規制法は目的の要件(同法2条1項)から、親の行為には使いにくい場面がある。
  6. 勤務先には事実と方針を簡潔に伝え、取次ぎのルールを決めておく。
  7. 電話が繰り返される場合は、弁護士を窓口にして連絡を一本化し、警察への相談や民事上の手続も検討する。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。全国から24時間365日、電話・メール・LINEでご相談を受け付けています。

交際相手の家族から職場や自宅に連絡が来て困っている方はもちろん、自分の親の行動を止めたいと考えている交際相手ご本人からのご相談もお受けしています。サービスの全体像は【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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