その場から逃げてしまった|逃走後にできることと不利益
この記事は、2026年10月時点の「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67号、以下「性的姿態撮影等処罰法」)、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(以下「リベンジポルノ防止法」)、児童買春・児童ポルノ禁止法、刑法・刑事訴訟法に基づいて記載しています。2025年6月1日施行の刑法改正により、懲役は拘禁刑に一本化されているため、法定刑は拘禁刑で表記しています。
「飲み会の席で、交際相手の写真をスマホで友人に見せてしまった。後から相手に知られ、警察に行くと言われている」。「別れた相手が、私の画像を共通の友人に送っていたと聞いた」。性的な画像を第三者に見せたことをめぐっては、見せた側からも、見せられた側からも、このようなご相談が寄せられます。
ネット上の解説では、撮影罪、提供罪、リベンジポルノ防止法違反といった罪名が並べて紹介されることが多く、その整理自体は誤りではありません。ただ、友人に見せたという同じ行為でも、その画像がどのように撮られたものか、どのような方法で見せたかによって、問題になる法律も重さも変わります。この分かれ目は、罪名の一覧だけでは見えにくいところです。
この記事では、性的な画像を友人など身近な人に見せた・送ったという場面に絞り、性的姿態撮影等処罰法の「性的影像記録の提供」として問われる場面と、そうでない場面の分かれ目を整理します。盗撮した画像を販売した場合やSNSに投稿した場合については、撮影した画像を売った・共有した場合|提供・有償頒布のリスクや撮影物をSNSに投稿した|撮影罪と提供・公然陳列の重なりをご覧ください。
友人に見せた画像を問う法律は、画像の出どころで分かれる
性的な画像を第三者に見せる・送る行為を処罰する法律は一つではありません。どの法律の入口に入るかは、まず「その画像がどのように撮られたものか」で分かれます。
盗撮やだまし撮りの画像は性的姿態撮影等処罰法の対象
性的姿態撮影等処罰法3条は、「性的影像記録」を提供した者を処罰しています。ここでいう性的影像記録とは、同法2条1項各号の撮影行為などによって生成された記録と、その複写をいいます。
2条1項各号の撮影行為には、相手に気づかれないようにひそかに撮影すること(1号)、酒に酔って寝ているなど同意しない意思を表明しにくい状態に乗じて撮影すること(2号)、特定の人以外は見ないと誤信させて撮影すること(3号)、16歳未満の人を撮影すること(4号)が挙げられています。つまり、提供罪の対象になるのは「撮影の段階ですでに問題のあった画像」であり、性的な画像すべてではありません。どのような部位や姿態が対象になるかは、「性的姿態」とは何か|撮影罪の保護対象の範囲で詳しく扱っています。
同意を得て撮った画像はリベンジポルノ防止法の対象
交際中に相手の同意を得て撮った画像や、相手が自分で撮って送ってきた画像は、撮影の段階では違法ではないため、原則として性的影像記録にはあたりません。こうした画像は、リベンジポルノ防止法の「私事性的画像記録」として扱われます。
同法が処罰するのは、撮影された人を特定できる方法で不特定または多数の人に提供したり公然と陳列したりする行為(公表罪・3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)と、そうした公表をさせる目的で提供する行為(公表目的提供罪・1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)です(同法3条1項〜3項)。
写っている人が18歳未満なら児童ポルノ禁止法の対象
写っている人が18歳未満であれば、撮影の経緯にかかわらず、児童ポルノ禁止法の問題になります。児童ポルノを提供した場合は、相手が一人でも3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象です(同法7条2項)。本人から送られてきた画像であっても同じ扱いになる点は、未成年から送られてきた画像を保存した|受け取った側の責任もあわせてご覧ください。
以上を整理すると、次のようになります。
| 画像の出どころ | 主に問題になる法律 | 友人に見せた・送った場合の扱いの目安 |
|---|---|---|
| ひそかに撮った、寝ている間に撮った、「誰にも見せない」と誤信させて撮った | 性的姿態撮影等処罰法 | 一人への提供でも3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(同法3条1項) |
| 同意を得て撮った、相手が自分で撮って送ってきた | リベンジポルノ防止法 | 不特定・多数への提供や、公表させる目的での提供が処罰対象(同法3条)。告訴がなければ起訴されない |
| 写っている人が18歳未満 | 児童ポルノ禁止法 | 一人への提供でも3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(同法7条2項) |
性的影像記録の「提供」として問われる場面
画像が性的影像記録にあたる場合、友人に見せた・送った行為が「提供」にあたるかどうかが次の分かれ目になります。
一人に送っただけでも提供にあたる
性的姿態撮影等処罰法3条1項は、提供の相手の人数を限定していません。友人一人にLINEで送った、AirDropで渡した、共有フォルダに入れて見られるようにした、といった行為は、提供の典型的な場面です。法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
提供の相手が不特定または多数にわたる場合や、公然と陳列した場合は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(同法3条2項)。友人が多く参加するグループチャットに投稿した場合は、こちらが問題になりえます。「仲の良い友人だけ」という認識であっても、人数と方法によって適用される条文が変わる点に注意が必要です。
画面を見せただけでデータを渡していない場合
提供とは、一般に、相手がその記録を利用できる状態に置くことをいうと説明されています。スマホの画面を見せただけで、データそのものは渡していない場合には、提供にあたらないと評価される余地があります。
ただし、見せた人数や場面によっては、不特定または多数の人が認識できる状態に置いたとして、公然陳列が問題になることがあります。また、画像が盗撮などによるものであれば、見せたことをきっかけに撮影そのものが発覚し、撮影罪(同法2条)として捜査される可能性は残ります。画面を見せただけだから問題はない、とは言い切れないところです。
見せるつもりで保存していた場合や、他人から受け取った画像を回した場合
性的姿態撮影等処罰法は、提供する目的で性的影像記録を保管する行為も処罰しています(同法4条・2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金)。友人に送るつもりで画像をまとめて保存していた場合は、実際に送る前でもこの規定が問題になりえます。
また、提供罪は、自分で撮影した画像に限られません。他人が盗撮した画像を受け取り、それを別の友人に転送した場合も、提供にあたる可能性があります。画像の共有が繰り返されるほど、関わった人の範囲は広がっていきます。共有の形態ごとの整理は、撮影した画像を売った・共有した場合|提供・有償頒布のリスクで扱っています。
同意して撮った画像でも提供罪の入口に入る場面
交際相手との間で撮った画像について特に分かれ目になりやすいのが、撮影の時点で何を伝え、何を考えていたかです。
撮影の時点で、他人に見せるつもりがあったか
性的姿態撮影等処罰法2条1項3号は、特定の人以外は見ないと誤信させて、またはその誤信に乗じて撮影する行為を処罰しています。たとえば「二人だけの記録だから」と伝えて撮影しながら、実際には友人に見せるつもりだった場合、撮影そのものが撮影罪にあたり、その画像は性的影像記録になる可能性があります。そうなれば、友人に送った行為は提供罪の問題になります。
一方で、撮影した時点では誰かに見せるつもりがなく、別れた後などに見せようと考えた場合は、撮影の段階で誤信に乗じたとはいいにくく、同号の適用は難しいと考えられます。同じ「同意して撮った画像」でも、撮影時の意図によって、問われる法律の重さが変わる可能性があります。この意図は、撮影前後のやり取りや、見せた時期・相手などから推し量られることになります。
撮影後に見せた場合の扱い
撮影後に見せようと考えた場合は、リベンジポルノ防止法の問題として検討されるのが一般的です。同法の処罰対象は、不特定または多数への提供・公然陳列と、公表させる目的での提供です。友人一人に画面を見せた、広める目的なく一人に送った、という場面だけでは、同法の処罰規定に直ちにあてはまるとは限りません。
ただし、画像を受け取った友人がさらに広めることを期待して送った場合は、公表目的提供罪にあたる可能性があります。また、同法の罪は告訴がなければ起訴されない親告罪です(同法3条4項)。告訴は、原則として被害者が犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条)。これに対し、性的姿態撮影等処罰法の罪は親告罪ではないため、撮影された人が告訴しなくても手続が進む可能性がある点で違いがあります。
刑事事件にならなくても残る責任
刑事罰の対象にならない場面でも、本人の同意なく性的な画像を第三者に見せることは、プライバシーの侵害として損害賠償を求められる理由になりえます(民法709条・710条)。また、名誉毀損罪の「公然と」の要件については、相手が少人数でも、そこから広く伝わる可能性があれば認められるとする判例の考え方があり(最高裁昭和34年5月7日判決)、見せた内容や状況によっては問題になる余地があります。
画像を手元に持ち続けること自体の扱いについては、同意を得て撮影した画像を持ち続けている|削除する義務はあるのかで整理しています。また、画像を見せたことで相手と口論になり、さらに広めるといった言葉を口にしてしまった場合は、画像をばらまくと言ってしまった|脅迫・強要と私事性的画像の規制もご覧ください。
見せてしまった後に整理しておきたいこと
見せた事実を相手に知られた、警察に相談すると言われた、という段階では、まず事実関係を落ち着いて整理することが出発点になります。
見せた相手・方法・時期を書き出す
これまで見てきたとおり、問われる法律は画像の出どころと見せ方によって変わります。そのため、次のような点を、記憶が確かなうちに書き出しておくことが役に立ちます。
- その画像をいつ、どのような状況で撮ったか(相手は撮影に気づいていたか、どのような言葉を交わしたか)。
- 誰に、何人に、いつ見せたか。
- 画面を見せたのか、データを送ったのか、送った場合はどのアプリを使ったか。
- 見せた相手がさらに誰かに送った可能性があるか。
- 撮影された人の年齢(撮影時点で18歳未満でなかったか)。
画像を消す前に、扱いを相談しておく
発覚したことに動揺して、手元の画像や送信履歴をすぐに消したいと考える方は少なくありません。しかし、捜査が始まっている、または始まる見込みがある段階で記録を消すと、証拠を隠そうとしたと受け取られるおそれがあり、データは復元される場合もあります。手元の画像の扱いや、送った相手への削除の求め方は、弁護士と相談しながら進めることが望ましいといえます。この点は撮影データを消してしまった|証拠隠滅と復元の実際で詳しく扱っています。
撮影された人との示談の位置づけ
撮影された人への謝罪と被害弁償、画像の削除や拡散防止の取り決めは、示談として書面にまとめることが考えられます。示談の成立は、検察官が起訴するかどうかを判断する際の重要な事情になります。
ただし、性的姿態撮影等処罰法の罪は親告罪ではないため、示談が成立しても、それだけで手続が終わるとは限りません。この点は示談が成立しても処分が残る場合|示談=不起訴ではない理由で解説しています。また、相手は精神的に強い負担を抱えていることが多く、本人が直接連絡を取ることで事態がこじれる場合もあるため、弁護士を通じた連絡が適していることが少なくありません。
よくあるご質問
見せた友人が「誰にも言わない」と言っていれば問題にならないのですか?
友人が口外しないかどうかは、提供罪が成立するかどうかとは別の問題です。性的影像記録にあたる画像を一人に送った時点で、提供罪の要件を満たす可能性があります。友人の対応は、被害の広がりや処分の判断で考慮される事情の一つにとどまります。
画像を受け取った友人も罪に問われるのですか?
画像を受け取ったこと自体を直接処罰する規定は、性的姿態撮影等処罰法にはありません。ただし、受け取った友人がさらに別の人へ送れば提供罪、送る目的で保存していれば保管罪の問題になりえます。また、写っている人が18歳未満であれば、受け取って保存していることが児童ポルノの所持として問題になる場合があります(児童ポルノ禁止法7条1項)。
何年も前に見せたことでも捜査されるのですか?
公訴時効の期間は、法定刑の上限によって決まります(刑事訴訟法250条2項)。性的影像記録を特定・少数の人に提供した場合(上限3年)は3年、不特定または多数に提供・公然陳列した場合(上限5年)は5年が目安です。期間は行為が終わった時から数えますが、送った画像が別の人へ転送され続けている場合など、個別の事情によって見通しは変わります。前科や前歴がどのように残るかについては、前科と前歴はどう違い、どこに残るのか|期間と照会される場面をご覧ください。
まとめ
- 性的な画像を友人に見せた行為が問われる法律は、画像の出どころによって、性的姿態撮影等処罰法、リベンジポルノ防止法、児童ポルノ禁止法に分かれる。
- 盗撮・寝ている間の撮影・「誰にも見せない」と誤信させた撮影などで生じた画像は性的影像記録にあたり、一人に送っただけでも3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になる(性的姿態撮影等処罰法3条1項)。
- 不特定・多数への提供や公然陳列は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科の対象になる(同法3条2項)。
- 画面を見せただけでデータを渡していない場合は提供にあたらない余地があるが、人数や場面によって公然陳列が問題になり、撮影そのものが発覚するきっかけにもなる。
- 同意を得て撮った画像は主にリベンジポルノ防止法の問題となり、不特定・多数への提供や公表目的の提供が処罰対象で、告訴がなければ起訴されない(同法3条)。
- 撮影の時点で他人に見せるつもりがあった場合は、同意して撮った画像でも撮影罪・提供罪の問題になる可能性がある(性的姿態撮影等処罰法2条1項3号)。
- 刑事罰の対象にならない場面でも、プライバシー侵害として損害賠償を求められる可能性がある(民法709条・710条)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、性的な画像の撮影・提供をめぐる刑事事件のご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。画像を見せてしまい、相手から警察に行くと言われている方は、手元の画像を消す前や相手に連絡を取る前の段階でご相談ください。
自分の画像を第三者に見せられた、送られたと知った方からのご相談もお受けしています。画像の出どころや見せ方によって取れる手段は変わりますので、分かっている事情をお聞かせいただいたうえで、今後の進め方を一緒に検討します。


