撮影物をSNSに投稿した|撮影罪と提供・公然陳列の重なり

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

撮った画像や動画をSNSに投稿してしまった後で、それがどのような扱いになるのかを調べ始めた、という方は少なくありません。検索して最初に目に入るのは「アップロードすると刑が重くなる」という説明で、多くの場合そこで話が終わっています。

ただ、ご相談をお受けしていて理解の食い違いが生じやすいのは、重さの話よりもむしろ「数え方」の話です。撮った行為と投稿した行為は一つの出来事として扱われるのか、それとも別々に扱われるのか。罪名がいくつも並んだとき、その刑はそのまま足されるのか。ここが整理されないままだと、見通しの立て方そのものがずれていきます。

この記事は、撮影という行為と、それをSNSに投稿するという行為が、法律の上でどのように重なり、どのように分かれるのかを整理したものです。見取り図であって、個々のケースの結論ではありません。読む方の立場も限定していません。

この記事が想定している場面


次のような場面を念頭に置いています。

・自分で撮った画像を、SNSのアカウントに投稿した
・知り合いから送られてきた画像を、グループのチャットに転載した
・見かけた投稿をスクリーンショットで保存し、別の場所に上げ直した
・鍵をかけたアカウントや、参加者が限られたグループの中だけで共有した
・投稿はしていないが、上げるつもりで端末に保存したままになっている

あわせて、前提を四点だけ置いておきます。

・写っているのが成人である場合を前提にしています。十八歳未満の可能性がある場合は、別の法律が重なり、見通しの立て方が変わります
・すでに呼び出しや捜索を受けている場合は、一般論ではなく個別の相談が要ります
・行為の時期によって、適用される法令が変わることがあります
・条文の位置を知ることは、責任を免れる方法を探すためのものではありません。画像が広がった状態は、写された方にとって被害が続いている状態です

投稿の話に入る前に、何が写っていたかで枠組みが変わる


「盗撮」「SNS」「投稿」といった言葉で調べると、出てくる説明は大きく二つに割れています。一つは性的な姿態の撮影を処罰する法律の説明、もう一つは肖像権やプライバシーの侵害という民事の説明です。同じ言葉で調べているのに着地する場所が違うのは、書き手の関心の違いではなく、写っていたものによって働く枠組みがそもそも異なるからです。

投稿された画像の内容主に検討される枠組み
同意なく撮影された、性的な部位やそれを覆っている下着などの姿態性的な姿態を撮影する行為等を処罰する法律のうち、提供・公然陳列に関する規定
同意を得て撮影された、性的な内容の画像私事性的画像記録の提供等を規制する法律、名誉に関する刑法の規定
性的な内容ではないが、本人に無断で撮影・公開された姿肖像権やプライバシーの侵害として、民事上の責任


この分岐は「どれなら問題にならないか」を示すものではありません。どの枠組みに入っても、写された方が受ける不利益は残ります。民事の枠組みだから軽い、ということにもなりません。以下では、一段目にあたる場面を中心に見ていきます。

撮った行為と投稿した行為は、別々に数えられる


性的な姿態を同意なく撮影する行為を処罰する規定と、その撮影によって作られた記録を提供したり公然と陳列したりする行為を処罰する規定は、同じ法律の中の別の条文に置かれています。前者が第二条、後者が第三条です。

ここで見落とされやすいのが、この二つが段階の関係ではなく、並列の関係だという点です。撮影の罪が成立したうえで、投稿があるとその刑が重くなる、という構造にはなっていません。撮影は撮影として、投稿は投稿として、それぞれ独立に成立し得る形で条文が組まれています。

そのため、同じ一枚の画像をめぐって、撮った行為と投稿した行為の二つが問われることがあります。「撮影の件として処理されるのだから、投稿の話はその中に含まれているはずだ」という理解は、条文の構造とは合いません。

誰に向けて投稿したかで、条文が分かれる


第三条は一項と二項に分かれています。一項が提供一般についての規定、二項が不特定または多数の者に対する提供と公然陳列についての規定で、二項の方が重く定められています。

投稿がどちらに当たるかは、アカウントの公開設定、参加者の範囲、閲覧できる人の数といった事情から判断されます。公開のアカウントへの投稿では二項が検討されやすく、特定の一人に個別に送った場合には一項が検討されやすい、というのがおおまかな見当です。

ただし、鍵をかけたアカウントであれば当然に一項にとどまる、参加者が限られたグループであれば当然に多数には当たらない、とまではいえません。公然と陳列したといえるかどうかは、実際に何人が見たかではなく、見得る状態に置かれていたかで考えられるためです。この境界の詰め方は、それだけで一つの論点になりますので、別の解説で扱っています。

自分で撮っていない画像でも、投稿は対象になり得る


「撮ったのは自分ではないから」という説明が通るかどうかは、条文の作りを見ると見当がつきます。

第三条が対象としている記録は、条文の中で定義が置かれています。そこには、撮影行為によって作られた記録そのものだけでなく、その記録の全部または一部を複写したものも含まれる、と書かれています。

複写したものが含まれるということは、他人が撮ったデータを受け取って上げ直した場合も、すでに投稿されていた画像をスクリーンショットで保存して別の場所に上げ直した場合も、対象となる記録であること自体は変わらない、ということです。撮影に関与していないことは、撮影の罪が成立しない理由にはなりますが、提供や公然陳列に関する規定の外に出る理由にはなりません。

ここは、投稿された画像が次々に転載されていく場面で、実際の受け止め方と条文の作りがずれやすいところです。「元をたどれば自分が撮ったものではない」という感覚は自然なものですが、条文はその感覚とは別のところに線を引いています。

投稿していなくても、準備の段階を捉える条文がある


第四条は、提供や公然陳列をする目的で記録を保管する行為についての規定です。目的が要件として書かれているため、端末に残っているというだけの状態は、この条文の対象ではありません。

もっとも、目的は本人の説明だけで決まるものではありません。投稿の準備をうかがわせるやり取りや、そのために用意されたアカウントの存在といった外形的な事情から判断されることがあります。「まだ上げていない」という一点だけで、この条文の話が終わるとは限りません。

重なり方によって、刑の決まり方が違う


ここが、この記事でお伝えしたい中心にあたる部分です。罪名が複数出てきたときの扱いには、大きく二つの型があります。

重なり方刑の決まり方についての定め
別々の行為が複数ある場合(撮影と、その後の投稿など)確定裁判を経ていない二個以上の罪として、あわせて処断される(刑法第四十五条前段)
一個の行為が複数の罪名に触れる場合(一回の投稿が二つの法律に触れるなど)その最も重い刑によって処断される(刑法第五十四条第一項前段)


撮影と、その後の投稿は、時も場所も異なる別の行為です。したがって、上の段の型で考えられることになります。一方、一回の投稿が、性的な姿態の撮影に関する法律と、別の法律の両方に触れる場合には、行為そのものは一個ですから、下の段の型が問題になります。

どちらの型で処理されるかは、行為の個数をどう捉えるかによって決まり、事案ごとの判断です。ここでは、型が二つあるということと、その違いが刑の決まり方に効いてくるということを押さえておけば足ります。

罪名が並ぶことと、刑が足し算されることは違う


罪名が三つ並んだのだから、それぞれの上限を三つ足した重さになるのではないか。そのように受け止めて見通しを立てておられる方が、ときどきいらっしゃいます。

複数の罪をあわせて処断する場合についても、刑法は上限の決め方を別に定めており、単純な合計になるわけではありません。一個の行為が複数の罪名に触れる場合には、そもそも最も重い刑によって処断される、と定められています。

逆に、罪名が一つだから軽い、ともいえません。実際の量刑は、条文に書かれた上限ではなく、画像の点数、期間、写された方の人数、広がり方、その後の対応といった事情の積み重ねから判断されるためです。条文の重さを比べる作業と、見通しを立てる作業は、別のものだとお考えいただくのがよいかと思います。

重なりが手続にもたらす三つのこと


条文が重なることは、抽象的な整理にとどまりません。手続の進み方にも影響します。

・示談の相手方が、罪ごとに異なることがある。撮影と投稿で写された方が同じであれば一つの交渉になりますが、他人が撮った画像を投稿した場合には、投稿について向き合う相手と、撮影について向き合う相手が別になります。また、示談は被害者として特定された方との間でしかできません
・期間の計算が、罪ごとに別々に進む。撮影と投稿は行為の時が異なり、条文も異なるため、公訴時効の計算も別になります。撮影の時から相当な時間が経っていても、投稿についての期間はまだ進行中である、ということが起こり得ます
・立証の対象が、罪ごとに異なる。撮影については、いつ、どこで、どのような態様で撮られたかが問われます。投稿については、どのアカウントから、いつ、どの範囲に向けて上げられたかが問われます。片方についての説明で、両方が片づくわけではありません

投稿を消した後に残ること


投稿を削除しても、削除の前にすでに提供や公然陳列に当たる状態が生じていたのであれば、その評価がさかのぼって消えるわけではありません。

また、投稿の取り下げと、端末に残っているデータの扱いは別の問題です。後者は証拠との関係が出てきますので、自己判断で進める前に弁護士に確認しておかれることをお勧めします。削除しても記録が残る経路や、押収されたデータの消去についての手続は、別の解説で扱っています。

自分が写った画像を投稿された方へ


この記事は投稿した側の視点で書いていますが、写された側から見ると優先順位は変わります。刑事の手続とは別に、投稿の削除を求めること、投稿した人を特定するための手続をとること、民事上の賠償を求めることが、それぞれ別の経路として用意されています。刑事の処分がどうなるかを待たずに動ける部分がありますので、早い段階で相談先を確保しておかれるとよいかと思います。

相談の前に整理しておきたいこと


次の点が分かっていると、話が早く進みます。

・いつ、どの端末から、どの範囲に向けて投稿したか
・投稿した画像を、自分で撮ったのか、他から受け取ったのか
・アカウントの公開設定と、閲覧できた人のおおよその範囲
・同じ画像を、ほかの場所にも上げていないか
・写っている方について、心当たりがあるか、まったく分からないか

記憶があいまいな部分は、あいまいなままお伝えいただいて構いません。無理に埋めた説明は、後から出てくる記録と食い違って、かえって不利に働くことがあります。

避けたい対応


・アカウントやデータをまとめて消してしまう
・写っている方や、その関係者に個別に連絡を取る
・投稿の削除を第三者に頼み、経緯が分からなくなる形にしてしまう
・調べた情報だけをもとに、自分の行為を先回りして評価してしまう

まとめ


・調べたときに刑事の説明と民事の説明が並ぶのは、写っていたものによって枠組みが分かれるため
・撮影を処罰する規定と、提供・公然陳列を処罰する規定は、段階の関係ではなく並列の関係にある
・そのため、同じ一枚の画像について、撮った行為と投稿した行為の双方が問われることがある
・誰に向けて投稿したかによって、提供に関する条文の一項と二項が分かれる
・公然と陳列したといえるかは、実際に見た人数ではなく、見得る状態に置かれていたかで考えられる
・対象となる記録には、複写したものも含まれると条文に書かれている
・したがって、他人が撮った画像の転載や、スクリーンショットの上げ直しも、同じ枠に入り得る
・提供等の目的での保管を捉える条文もあり、投稿する前の段階でも問題になる場面がある
・罪名が並ぶときの扱いには、別々の行為が複数ある型と、一個の行為が複数の罪名に触れる型がある
・重なりは、示談の相手方、期間の計算、立証の対象という三つの場面に影響する

早めに相談したからといって、望ましい結果が約束されるわけではありません。ただ、どの条文についての話をしているのかが整理されないまま進むと、説明の仕方も、優先順位の付け方も定まらないままになります。まずは事実関係を時系列で書き出すところから始めていただければと思います。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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