店からの電話・LINEを無視し続けるとどうなるか|放置の先に起きることの時系列
撮影した画像を売った・共有した場合|提供・有償頒布のリスク
撮った画像や動画を、人に渡してしまった。あるいは、いくらかの対価を受け取って売ってしまった。そのあとで調べてみると、多くの解説に「提供罪は有償・無償を問わず成立します」と書かれています。
説明はたいてい、そこで止まります。ではお金を受け取ったことには意味がないのか、というとそうではありません。撮影罪の条文では有償かどうかが要件になっていない一方で、別の法律では「有償で頒布する目的」が正面から要件として書かれており、受け取った代金そのものを対象とする規定も置かれています。
この記事では、「売った」「共有した」という行為が、どの条文のどこにぶつかるのかを順に確認します。刑の重さを比べるための記事ではなく、自分の置かれた位置を正確に把握するための記事です。
- この記事は、性風俗を利用した客側の立場から書いています。
- 成人を対象とした撮影を前提としています。相手が18歳未満であった可能性がある場合は、別の法律が重なるため、記事ではなく個別のご相談をおすすめします。
- すでに逮捕されている、警察から呼び出しを受けているといった段階の方は、記事を読むよりも先に弁護士にご相談ください。
- 条文を確認する目的は、責任を免れる方法を探すことではありません。撮影された側に被害が生じている点は、どの条文を読んでも変わりません。
「売った」「共有した」はひとつの条文で決まらない
まず、関係し得る規定を並べてみます。ひとつの行為に複数の規定が重なることがあり、それぞれ要件が違います。
| 場面 | 主に問題になる規定 | 「有償かどうか」が要件になるか |
|---|---|---|
| 撮影罪に当たる撮影で作られた画像を人に渡した | 性的姿態撮影等処罰法3条(提供・公然陳列) | 要件ではない |
| 渡す目的・公開する目的で手元に置いていた | 同法4条(保管) | 要件ではない |
| わいせつと評価される画像・動画を頒布した、公然と陳列した | 刑法175条1項 | 要件ではない |
| わいせつと評価される画像・動画を、売る目的で持っていた・保管していた | 刑法175条2項 | 要件になる |
| 売って受け取った代金 | 刑法19条・19条の2、組織的犯罪処罰法 | 有償であることが前提 |
「有償・無償を問わない」という説明は、この表の上から3行までについては正確です。しかし4行目と5行目は、対価が動いたことを前提に組み立てられています。
撮影罪の条文では、有償か無償かで分かれない
性的姿態撮影等処罰法3条は、撮影罪に当たる行為で作られた記録を人に渡す行為を対象としています。1項が3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、2項が5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科です。
この1項と2項を分けているのは、対価の有無ではありません。渡した相手が特定かつ少数なのか、不特定または多数なのか、あるいは公然と陳列したのか、という点です。
したがって、条文からは次の二つがいずれも導けません。ひとつは「無料で渡しただけだから軽い」という理解。もうひとつは「売ったのだから直ちに別の重い罪になる」という理解です。金銭のやり取りは、3条の枠内では罪名も刑の幅も動かしません。
なお、3条の対象は「撮影罪などに当たる行為で作られた記録」です。同意を得て撮影した画像は3条の対象になりません。この点は後ろの章で改めて触れます。
「有償」が正面から出てくるのは刑法175条
175条1項と2項
刑法175条1項は、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、または公然と陳列した者を処罰しています。後段では、電気通信の送信によってわいせつな電磁的記録を頒布した場合も同様と定めています。法定刑は2年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、またはその併科です。
注目したいのは2項です。「有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする」と書かれています。売る目的で持っていた段階を、実際に売った場合と同じ枠で扱う規定です。
ただし「わいせつ」に当たるかどうかは別に判断される
175条は、対象が「わいせつ」と評価されることを前提としています。最高裁は、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをわいせつと述べています(最高裁昭和32年3月13日判決)。
また、1項後段の「頒布」については、不特定または多数の者の記録媒体上に記録を存在するに至らしめることをいうと判断されています(最高裁平成26年11月25日判決)。
つまり、撮影罪に当たる画像であれば当然に175条にも当たる、という関係ではありません。内容や渡し方によって、どちらか一方だけが問題になることも、両方が問題になることもあります。
手元に置いている段階で問題になる二つの規定
| 規定 | 要求される目的 | 対象 | 有償性 |
|---|---|---|---|
| 性的姿態撮影等処罰法4条 | 提供・公然陳列の目的 | 撮影罪などで作られた記録 | 要件ではない |
| 刑法175条2項 | 有償で頒布する目的 | わいせつと評価される物・電磁的記録 | 要件になる |
どちらも「まだ渡していない」段階を扱う規定です。両方に共通するのは、外形だけでなく目的が問われるという構造で、そこでは保存の仕方ややり取りの履歴が判断材料になります。
対価が動くと、受け取った代金そのものが問題になり得る
あまり解説されていませんが、条文を追うとここに行き当たります。
刑法19条1項は、犯罪行為によって得た物や、その対価として得た物を没収できると定めています。没収できないときは、19条の2により価額を追徴することができます。
さらに、組織的犯罪処罰法は、財産上の不正な利益を得る目的で犯した「死刑または無期もしくは長期4年以上」の罪の犯罪行為によって得た財産などを犯罪収益と定義し(2条2項1号イ)、これを没収できる旨(13条1項)、没収できないときは価額を追徴できる旨(16条)を定めています。
ここで条文の非対称が出てきます。3条2項(不特定または多数への提供・公然陳列)は5年以下ですから、この「長期4年以上」の枠に入り得ます。一方、3条1項(特定かつ少数への提供)は3年以下ですから、この枠には入りません。渡した相手の範囲が、刑の幅だけでなく代金の扱いにも影響し得るという構造です。
なお、画像や動画そのものについては、性的姿態撮影等処罰法8条に没収の規定が置かれています(犯人以外の者に属しない物に限られます)。これは代金の話とは別枠です。
実際に没収や追徴がされるかどうかは事案によります。ただ、「売って得たお金は自分の手元に残る」という前提で見通しを立てるのは適切ではありません。
お金の記録が示すのは、金額だけではない
銀行口座、決済サービス、電子マネー、暗号資産、販売サイトの精算明細。対価が動いていれば、どこかに記録が残ります。
その記録から読み取られるのは、金額だけではありません。
- 何回渡したか。
- いつからいつまで続いていたか。
- 相手が何人いたか。
- 継続的だったか、一度きりだったか。
これらは、そのまま3条1項なのか2項なのかという判断材料になり、4条や175条2項の「目的」の認定にも関わり、営利性や常習性の評価にもつながります。金額の多寡だけを見て軽重を判断できる話ではありません。
そのため、「1回だけだった」「少額だった」という説明は、記録と突き合わせて検討されることになります。記憶があいまいな部分を断定して話すと、後から食い違いが生じます。確認できていることと、確認できていないことを分けて説明するほうが安全です。
なお、データを消してしまった後にどうなるかについては、別のコラムで扱っています。ここでは、自己判断での削除や初期化がかえって不利に働く場面があるとだけ触れておきます。
「同意を得て撮った画像」を売った場合
風俗の場面では、ここが分かれ目になることがあります。
性的姿態撮影等処罰法3条の対象は、撮影罪などに当たる行為で作られた記録です。撮影自体について有効な同意があったのであれば、その画像は3条の対象になりません。
ただし、それで終わりではありません。私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)3条は、第三者が本人を特定できる方法で私事性的画像記録を公表する行為などを処罰しています。内容によっては刑法175条も関わります。刑事責任とは別に、民事の損害賠償請求も残ります。
そして、風俗の場面で誤解が生じやすい点が三つあります。
- 店が撮影を許可していることと、写っている本人が同意していることは、別のことです。
- 「撮ってよい」という同意と、「人に見せてよい」「売ってよい」という同意は、別のものです。
- 顔が写っていなくても、源氏名・店名・部屋・日時などから本人が特定されることがあります。
三つ目は民事で実害として現れやすい部分です。特定されれば、勤務先への影響や、退店を余儀なくされたことによる損害が主張されることになります。
相手が18歳未満であった可能性がある場合
この場合は児童買春・児童ポルノ禁止法が重なります。同法は提供や公然陳列だけでなく、所持の段階にも規制が及ぶ点で、撮影罪の枠組みより射程が広くなっています。
年齢を確認していなかった、そう見えなかった、という事情がそのまま責任を打ち消すとは限りません。心当たりがある場合は、記事で判断せず個別にご相談ください。
ネットの説明を読むときの注意
- 「有償・無償を問わない」で説明が終わっているもの。そこから先の、175条2項や代金の扱いに関する部分が抜け落ちます。
- 「懲役」と書かれているもの。2025年6月1日に拘禁刑へ一本化されており、古い表記が残っている記事があります。
- 個別の逮捕報道を並べているもの。報道は起訴・不起訴や判決まで追えないことが多く、自分の見通しを読み取る材料にはなりません。
- 母集団の分からない割合の数字。何件のうち何件なのかが示されていない数値は、比較の材料になりません。
相談の前に整理しておくとよいこと
- いつ撮影したものか(性的姿態撮影等処罰法の施行は2023年7月13日です)。
- 誰に、何回、どの経路で渡したか。分かる範囲でかまいません。
- 対価の有無と、受け取った方法(口座、決済サービス、暗号資産、現金など)。
- 渡した相手はおよそ何人か、公開範囲はどうなっていたか。
- 撮影時の状況。同意の有無、店やキャストとのやり取り、年齢の確認をしたかどうか。
あいまいな部分は、無理に埋めないでください。「思い出せない」は、事実と違う説明をするより、はるかに扱いやすい情報です。
一方で、次の三つは避けたい対応です。
- 自己判断でのデータ削除、端末の初期化、アカウントの消去。
- 相手方本人や店舗への直接連絡。
- その場での現金の受け渡しや、内容を確認しないまま念書に署名すること。
まとめ
- 撮影罪の3条は、有償か無償かで条文が分かれていません。分かれ目は、渡した相手が特定かつ少数か、不特定または多数かです。
- 「有償」が正面から要件になっているのは刑法175条2項(有償頒布目的の所持・保管)です。
- 175条は対象が「わいせつ」と評価されることを前提としており、撮影罪に当たる画像がつねに175条にも当たるわけではありません。
- 渡す前の段階でも、4条や175条2項では「目的」が問われます。
- 売って受け取った代金についても、刑法19条・19条の2、組織的犯罪処罰法に没収・追徴の規定があります。
- お金の記録は、金額のほかに回数・期間・相手方の人数・継続性を示します。
- 同意を得て撮影した画像は3条の対象外ですが、リベンジポルノ防止法や民事責任は残ります。
- 相手が18歳未満であった可能性がある場合は、規制の射程が変わります。
早く相談したからといって、良い結果が約束されるわけではありません。ただ、まだ説明していないことが多い段階のほうが、選べる進め方は多く残ります。ご自身の状況に近い部分があれば、記事の内容を持って一度ご相談ください。


