尿検査が陰性でも立件されるのか|検出可能期間と他の証拠
未成年の相手から性的な画像が送られてきて、それが自分の端末に残っている。自分から求めたわけではない、送られてきただけだ――そう説明したい状況で、法律がどこを見ているのかを知っておきたい、というご相談があります。
この点について、法律は「望まないまま受け取ってしまうことがある」という場面を、あらかじめ想定して条文を書いています。児童買春・児童ポルノ禁止法の所持・保管に関する規定には、条文そのものにかっこ書きが置かれており、一方的に送りつけられた場合をそのまま処罰の対象とはしない形になっています。
もっとも、そのかっこ書きが外れる分かれ目は、画像が届いた瞬間ではなく、届いた後に受け取った側が何をしたかに置かれています。この記事では、「送られてきた画像を保存した」という一つの状況が、経緯によってどの条文の問題になるのかを整理します。
条文は「送られてきた場合」を書き分けている
児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項は、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した者について定めていますが、その主語には二重のかっこ書きが付いています。「自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る」という部分です。データの保管についても、同じ書き方が並べられています。
このかっこ書きは、本人が望まないまま手元に来てしまった場合を、処罰の対象から外すために置かれたものです。立法の際には、嫌がらせとして送りつけられた場合や、端末が不正なプログラムに感染して自動的に取り込まれた場合が、例として挙げられていました。
後半の「当該者であることが明らかに認められる者」という部分は、家族で共用している端末や、多数の人が書き込めるサーバーのように、誰が持っているのかを特定しにくい場面を想定したものです。前半と後半で、それぞれ別の心配に応えている構造になっています。
かっこ書きが見ているのは「受け取った瞬間」ではない
ここで誤解されやすいのが、このかっこ書きを「送られてきたものであれば、その後どう扱っても対象外になる」という意味に読んでしまうことです。条文はそこまでのことは書いていません。
自己の意思に基づいて所持や保管をするに至ったかどうかは、所持に至った動機や経緯、データの量、持ち方といった外から見える事情から判断されるとされています。つまり、画像が届いた一瞬だけを切り取って判断するのではなく、届いた後にその画像がどう扱われたかを含めて見られることになります。
学説でも、意図せず手元に来た場合について、それが児童ポルノであると分かった後もなお持ち続けている状態をどう評価するか、という形で議論が積み重ねられてきました。条文の関心が、受け取る瞬間ではなく、その後も持ち続けている状態の側に向いていることは、この議論からも読み取れます。
もう一つの要件である「自己の性的好奇心を満たす目的」
7条1項には、「自己の性的好奇心を満たす目的で」という要件も置かれています。これは、学術研究のように正当な理由がある場合や、保護者が子どもの成長の記録として撮った写真を持っている場合を、処罰の対象から外すために設けられたものです。
ただし、この目的についても、本人がどう思っていたかという説明だけで決まるわけではありません。所持や保管に至った経緯、その画像をどこに置いていたか、どれくらいの期間持っていたかといった事情から判断されることになります。
同じ「保存した」でも、経緯によって動く条文が変わる
「送られてきた画像を保存した」という言い方は同じでも、そこに至る経緯によって、問題になる条文は入れ替わります。整理すると次のようになります。
| 保存に至った経緯 | 主に問題となる行為の類型 |
|---|---|
| 自分からは求めておらず、相手から送られてきた | 所持・保管 |
| 自分が求めた結果として送られてきた | 製造 |
| 受け取ったものを、さらに他の人に送った | 提供 |
この記事の入口である「送られてきただけ」という状況は、表の一行目に当たります。ただし、実際のご相談では、やり取りの記録を確認すると二行目や三行目にまたがっていた、ということが少なくありません。
自分から求めていた場合は「製造」の側に移る
同法7条4項は、児童に姿態をとらせて児童ポルノを製造した場合について定めています。「姿態をとらせ」とは、行為者の言動などによって相手がその姿態をとるに至ったことをいい、強制によることまでは求められていません。求め方が穏やかであっても、この条文の外に出るとは限らないということです。
そして、この製造については、行為者の端末に画像のデータが保存された時点で既遂になると理解されています。自分から求めていた場合には、「保存した」という同じ動作が、所持や保管の話ではなく、製造という別の罪が完成した時点そのものになります。法定刑も所持・保管より重く定められています。
求めた段階でどの条文が動くのかについては、条例による規制も含めて別の記事で整理していますので、そちらもご覧ください。
一人に転送しただけでも「提供」になる
受け取った画像を、さらに誰かに送った場合は、同法7条2項の提供の問題になります。提供とは、相手方において利用できる状態に置く行為全般をいうとされており、有償か無償かを問いません。相手方の受信箱に届いた段階で成立すると説明されています。
「一人に送っただけ」「無料だった」「相手が見なかった」といった事情は、提供に当たるかどうかの結論を動かすものとしては扱われていません。不特定または多数の人に送ったり、閲覧できる場所に置いたりした場合は、さらに重い7条6項の問題になります。
「相手が自分から送ってきた」という説明はどう扱われるか
受け取った側からは、「頼んでいないのに相手が勝手に送ってきた」という説明がなされることがあります。事実としてそのとおりであることも、もちろんあります。
ただし、この法律の各規定は、写っている児童が同意していたかどうかにかかわらず成立すると理解されています。18歳未満の人については、性的な事柄について自分で判断する力がまだ十分に備わっていないという前提が置かれているためです。相手が進んで撮影し、進んで送ってきた画像であっても、それを第三者が持ち続けることは、別に評価される仕組みになっています。
この点は、受け取った側の説明が信用されるかどうかとは別の問題です。経緯として送られてきたものであるという事情は、後述するように、処分を考えるうえで意味を持つ場面があります。
送った側と保存した側では、行政の説明の仕方も異なる
警察庁は、学校などを通じた広報のなかで、友人などの裸の写真を送るよう求めたり、他人に送ったりするほか、友人などの裸の写真をスマートフォンに保存した場合にも、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の被疑者として検挙・補導されることがあると伝えるよう求めています。
一方で、自分自身の裸の写真を送ってしまった側については、同じ書き方はされていません。この法律が誰を守るために置かれているかを考えれば、当然の書き分けともいえます。相手も同じ立場にいるはずだ、という前提で状況を整理してしまうと、見通しを誤ることになります。
なお、この広報が「友人など」を対象にしていることからも分かるとおり、保存した側が18歳未満であっても、この整理は変わりません。
相手が18歳未満かどうかで、持っている状態の扱いが変わる
性的な画像に関わる法律は複数ありますが、持っている状態それ自体を正面から取り上げているものは限られています。
| 相手の年齢 | 持っている状態そのものを取り上げる規定 |
|---|---|
| 18歳未満 | 児童ポルノ禁止法7条1項が所持・保管を定めている |
| 18歳以上 | 撮影に関する法律の保管の規定は提供などの目的が要件とされ、私事性的画像に関する法律は提供・公然陳列を対象としている |
相手が18歳以上であれば、持っていること自体を取り上げる規定は基本的に置かれていません。ただし、これは何をしても問題にならないという意味ではありません。撮影の経緯によっては撮影に関する法律が動きますし、他の人に送ったり公開したりすれば、そこから先は年齢を問わず別の条文の問題になります。
また、やり取りだけで相手の年齢を確かめられる場面は多くありません。18歳以上だと考えていたという説明が、そのまま通るとは限らない点は、次に述べるとおりです。
「年齢を知らなかった」という説明
これらの罪が成立するには、対象が児童ポルノであるという認識が必要です。相手を成人だと考えていた場合には、この認識を欠くことになります。
もっとも、実務では、「18歳未満かもしれない」という程度の認識があれば足りると理解されています。そして、その認識があったかどうかは、やり取りの記録そのものから判断されます。相手が学校生活について話していた、年齢に関する話題を避けていた、といった事情は、いずれも記録として残っています。年齢に関する説明が問題になる場面については、別の記事で詳しく整理しています。
消せば終わるのか
保存したデータを削除すれば済むのではないか、というご質問もよくいただきます。
一度成立した罪が、その後の削除によってなかったことになるわけではありません。また、自分の事件の証拠を自分で処分しても証拠隠滅罪には問われないと説明されますが、それは別の罪が加わらないという意味にとどまります。
実際には、端末の解析や通信サービス側に残る記録から、受け取った経緯そのものが確認されることがあります。そして、削除した事実や端末を手放した事実が分かった場合、それは身柄を拘束すべきかどうかを判断する場面で、本人に不利な方向に働くことがあります。手元の記録をどう扱うかは、自己判断で動く前に確認しておいたほうがよい事柄です。
条文が「処分するための時間」を用意したのは一度だけ
所持や保管を対象とする規定は、この法律に最初からあったものではなく、平成26年の改正で設けられたものです。このとき、改正法の附則には、7条1項の規定を施行の日から1年間は適用しない、という定めが置かれました。実際に適用が始まったのは平成27年7月15日です。
この1年間は、それまで手元に持っていた人が処分をするための猶予として設けられたものだと説明されています。裏を返せば、その期間が終わった後については、手元に持ち続けている状態そのものが問われる設計になっているということです。交際していた当時に受け取ったものであっても、何年も前のものであっても、この点は変わりません。
交際していた相手から受け取った画像を持っている場合
当時交際していた相手から送られてきたもので、その後関係が終わってからも端末に残っている、というご相談もあります。
撮影された当時に相手が18歳未満であった場合、その後相手が成人したとしても、画像そのものの性質が変わるわけではありません。また、関係が続いていた当時の事情がどこまで意味を持つかについては、議論のあるところで、当然に問題がなくなると言い切れるものではありません。
この種のご相談では、相手方の側から画像の削除を求められている、あるいは求められた記録が残っている、といった事情が併存していることもあります。そうした経緯は、その後の見通しを左右します。
どこから発覚するのか
このような事案が表に出てくる経緯としては、次のようなものが挙げられます。
・相手方が保護者や学校に相談し、そこから相談が持ち込まれた場合
・相手方の端末が別の理由で確認され、やり取りが判明した場合
・別の事件の捜査の過程で、端末が調べられた場合
・インターネット上の違法な情報を対象とした調査から、たどられた場合
・利用していたサービスの側から、アカウントの停止などの措置を受けた場合
いずれの経路でも、最初に確認されるのは端末やアカウントに残っている記録です。受け取った側が説明したい経緯も、同じ記録の中から出てきます。
連絡が来た段階で整理しておきたいこと
警察から連絡があった段階、あるいは相手方から連絡があった段階で、次の点を書き出しておくと、相談の際に話が早く進みます。
・相手とどこで知り合い、どのくらいの期間やり取りが続いていたか
・画像が送られてきたのがいつで、その前後にどのようなやり取りがあったか
・自分から求めたことがあったかどうか、あった場合はどのような言い方だったか
・受け取った後、その画像に対して自分が何をしたか
・他の人に送ったこと、共有設定にしたことがあるかどうか
・相手の年齢について、どの時点で何を聞いていたか
反対に、この段階で避けておきたい対応もあります。
・相手方本人やその家族に直接連絡を取ること
・端末やデータを自己判断で処分すること
・記録を作り直したり、書き換えたりすること
・警察からの連絡に応答しないまま放置すること
弁護士に確認できること
弁護士に相談することで、次のような点を早い段階で整理できます。
・手元の記録から、どの条文の問題として扱われる可能性があるか
・自分から求めたと評価されうる部分が、やり取りの中にあるかどうか
・在宅のまま進む見通しか、身柄を拘束される可能性がある事案か
・相手方への対応を、どの段階で誰を通じて行うべきか
・勤務先や学校への影響について、今の段階で取れる対応があるか
性犯罪に関わる事案では、相手方が未成年である場合、本人ではなく保護者との対応になります。当事者同士でのやり取りが難しい場面が多く、この点も含めて確認しておくことをおすすめします。
まとめ
・児童ポルノ禁止法7条1項には二重のかっこ書きがあり、望まないまま手元に来た場合を対象から外す形になっている
・そのかっこ書きが外れるかどうかは、受け取った瞬間ではなく、受け取った後の扱いを含めて判断される
・自分から求めていた場合は、同じ「保存」が製造という別の罪の完成時点になる
・一人に転送した場合でも、提供の問題として扱われる
・相手が同意していたかどうかは、これらの罪の成立を左右しないとされている
・持っている状態そのものを取り上げる規定は、相手が18歳未満の場合に置かれている
・削除しても成立した罪は消えず、削除の事実がかえって不利に働くことがある
「送られてきただけ」という説明は、条文がもともと想定している事情であって、口にした瞬間に退けられる種類のものではありません。ただし、その説明が通るかどうかを決めるのは、本人の記憶ではなく、端末とやり取りの中に残っている記録です。心当たりがある段階でご相談いただければ、その記録を前提にして、今どの位置にいるのかを一緒に確認することができます。


