【ストーカートラブル】被害を家族に言えない|一人で相談に行くときの準備
別れた後、部屋の物の位置が少し変わっている気がする、自分しか知らないはずの部屋の様子を相手が知っていた、返してもらった合鍵とは別にもう1本作られていたのではないか。こうした不安は、確証がないぶん誰にも相談しにくく、毎日の帰宅そのものが負担になりがちです。この記事では、元恋人に合鍵を作られていたかもしれないときに、法律上どう扱われるのか、鍵交換をどう進めるか、費用を相手に求められるかを順に整理します。
本記事は2026年10月時点の法令をもとにした一般的な解説です。実際の対応は、住まいの契約内容や相手との経緯によって変わります。
合鍵を作られていたかもしれないと感じる場面
- 別れたときに合鍵は返してもらったが、相手が別にもう1本持っている気がする。
- 留守中に物の位置が変わっていたり、小物がなくなっていたりする。
- 部屋の中の様子や最近買った物を、相手がなぜか知っていた。
- 交際中に鍵を長時間預けたことがあり、その間に複製されたかもしれない。
- 返してほしいと伝えても「捨てた」「なくした」と言われ、本当かどうか確かめられない。
鍵は、現物がなくても鍵番号や写真から複製を注文できる種類のものがあります。交際中に鍵を貸したり、鍵の写真が相手の手元に残っていたりすると、返してもらった後でも「もう1本あるのでは」という不安は残ります。複製の有無を自分で確かめる方法は限られているため、確証を得ることよりも、住まいの安全を先に整えるという順序で考えるのが現実的です。
合鍵を作ること自体は罪になるのか
作っただけでは処罰されにくい
合鍵を無断で作ることを直接禁じる法律はありません。そのため、相手が合鍵を作っただけの段階では、刑事事件として扱われることは多くないと考えられます。もっとも、複製した鍵を返さずに持ち続けることは、貸した物を返す義務の問題として民事上の請求の対象になり得ますし、何のために作ったのかという事情によっては別の評価を受ける余地もあります。
合鍵を使って入れば住居侵入罪が問題になる
住んでいる人の承諾なく部屋に入れば、交際していた相手であっても住居侵入罪(刑法130条)が成立する可能性があります。法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。「合鍵を持っているのだから入ってよい」という理屈は、別れた後には通りにくいと考えられます。部屋から物を持ち出していれば、窃盗罪などが別に問題になることもあります。
ストーカー規制法の対象になる場面
好意やそれが満たされなかった恨みの感情から、住居に押し掛けたり、住居の付近で見張ったりする行為は、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたり得ます。合鍵で部屋に入る、帰宅を待ち構える、といった行動が繰り返されている場合は、警察による警告や禁止命令の対象として相談できる可能性があります。
| 行為 | 問題になり得る法律 | ポイント |
|---|---|---|
| 合鍵を無断で作る | 直接の処罰規定はない | 返還を求める民事上の請求は考えられる |
| 合鍵で部屋に入る | 住居侵入罪(刑法130条) | 別れた後は承諾がないと評価されやすい |
| 部屋の物を持ち出す | 窃盗罪など | 元は相手が贈った物でも問題になり得る |
| 自宅への押し掛け・見張りを繰り返す | ストーカー規制法 | 警告・禁止命令の対象になり得る |
「かもしれない」段階でまず確認すること
- 相手が室内にいる可能性がある、帰宅時に気配がするなど危険を感じるときは、部屋に入らずに110番すること。
- 物の位置の変化やなくなった物を、日時とともにメモと写真で残すこと。
- 交際中に鍵を渡した時期、返してもらった時期、本数をLINEなどの履歴から整理すること。
- 相手が部屋の中の様子を知っていたと分かる発言やメッセージを保存すること。
- 鍵の種類と鍵番号、マンションのオートロックや郵便受けの鍵も同じ鍵か確認すること。
記録は、警察に相談するときにも、後で費用を求めるときにも土台になります。「気のせいかもしれない」と感じる小さな変化でも、日付をつけて残しておくと、後から振り返って一連の流れとして説明しやすくなります。玄関まわりを防犯カメラで記録する方法は【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点もあわせてご覧ください。
鍵交換を先にするか、確証を待つか
合鍵が作られたかどうかを確かめてから動こうとすると、その間も相手が部屋に入れる状態が続きます。不安があるのであれば、確証を待たずに鍵を替えることを優先して考えてよい場面が多いといえます。鍵を替えてしまえば、仮に合鍵が残っていても使えなくなるためです。
賃貸の場合は管理会社や大家に連絡してから
賃貸住宅の鍵は貸主の設備なので、借主が無断でシリンダーを交換すると、退去時に元に戻す費用を求められるなどの行き違いが起きることがあります。まずは管理会社や大家に事情を伝え、交換の手配や費用の負担について確認してください。防犯上の事情を伝えると、交換の段取りを早めてもらえることもあります。
持ち家の場合
持ち家であれば、ご自身の判断で鍵を交換できます。分譲マンションでは、共用部分のオートロックの鍵は管理組合の管理になっていることが多いため、専有部分の玄関とあわせて管理会社に相談しておくと安心です。
鍵交換とあわせて見直したいこと
- 郵便受けや自転車、車など、同じ時期に預けた鍵がほかにないか。
- 新しい鍵の鍵番号を人に見られない保管の仕方になっているか。
- 窓や補助錠、玄関の防犯カメラなど、鍵以外の備えが足りているか。
- 新しい鍵を誰に渡すかを、しばらく限っておけるか。
自宅の周りに来られている様子がある場合は、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで、建物の管理側と連携する方法を解説しています。
鍵交換の費用を元恋人に請求できるか
合鍵を返さない・なくしたと言われた場合
交際中に渡した合鍵は、一般に返してもらう前提で貸したものと考えられます。返還を求めても応じない、なくしたと言う、といった場合には、鍵交換にかかった費用を損害として請求することが考えられます。弁護士ドットコムに寄せられた相談でも、まず返還を求め、応じなければ書面で交換費用を求めるという順序が多く取り上げられています。一方で、渡すときに「あげる」と伝えていたなど、渡し方によっては相手から反論が出ることもあるため、当時のやり取りを確認しておくことが大切です。
複製が疑われるだけの場合
合鍵自体は返してもらっていて、複製されたかもしれないという段階では、相手に費用を負担させるのは簡単ではありません。請求する側が、相手が合鍵を作ったことや、作った合鍵で入ったことを示す必要があるためです。返却後に部屋に入られた形跡がある、相手が複製を認める発言をしている、といった事情があれば、交換費用に加えて慰謝料を求められる余地も出てきます。
請求の進め方
金額が数万円程度であれば、内容証明郵便で請求し、応じなければ少額訴訟を検討するという流れが考えられます。ただし、相手の勤務先や実家に請求書を送ると、交際の事情を周囲に知らせることになり、かえって名誉やプライバシーの問題を指摘されるおそれがあります。送り先に迷うときは、送る前にご相談ください。ストーカー行為を伴う場合の請求項目は、【ストーカートラブル】ストーカー被害の慰謝料|請求できる項目と組み立てで整理しています。
警察への相談と、その後の手続
留守中に入られた形跡がある、物がなくなっている、という場合は、警察に相談することができます。顔見知りの間のことだからと、被害届の提出を控えるよう勧められる例もあるようですが、相談した記録を残しておくこと自体に意味があります。その後に同じことが続いたとき、経緯を説明しやすくなるためです。
相手が自宅周辺に来ることが続いているのであれば、ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令を求めることも考えられます。手続の流れは【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間で、警察と弁護士のどちらに先に話すかは【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序で解説しています。
自分でしないほうがよいこと
- 確かめるために一人で相手に会い、合鍵を作ったかを問い詰めること。
- 相手の家に行って鍵や持ち出された物を取り返そうとすること。
- 「合鍵を作られた」とSNSや共通の友人に広めること。
- 賃貸住宅で、管理会社に伝えないまま鍵を交換すること。
相手を問い詰めても、作ったと認めることは多くありませんし、接触が増えることで関係がこじれるおそれがあります。相手の家に無断で入れば、今度はご自身が住居侵入を問われかねません。不安な気持ちが強いときほど、相手に直接働きかけるのではなく、住まいの安全と記録を整えることに力を向けるのが望ましいといえます。
弁護士に依頼してできること
弁護士が代理人になると、相手との連絡はすべて弁護士を通すことになり、ご本人が相手と顔を合わせる必要がなくなります。合鍵の返還、複製した鍵があれば提出すること、今後自宅に近づかないことなどを書面で求め、応じる場合には接触禁止や違約金を定めた合意書にまとめることも考えられます。鍵交換の費用や慰謝料の請求、警察への相談に同行する際の資料の整理もあわせて進められます。
すでに部屋に入られていたことが分かっている場合の対応は、【男女トラブル】別れた相手に勝手に部屋へ入られていたでも取り上げています。
よくあるご質問
合鍵を作られたかどうか、警察に調べてもらえますか
侵入の形跡や物がなくなった事実があれば、相談として受け付けてもらえることがあります。ただ、複製の有無そのものを調べてもらえるとは限らないため、鍵の交換は警察への相談とは別に進めておくのが安全です。
鍵を替えたことを相手に伝える必要はありますか
相手の荷物が部屋に残っているなどの事情がなければ、伝える義務は通常ありません。荷物の受け渡しが残っている場合は、受け渡しの方法とあわせて弁護士から伝えることもできます。
引っ越すべきでしょうか
鍵を替えても相手が自宅の場所を知っている以上、不安が残ることはあります。転居する場合は、新しい住所を知られないための手続を先に整えておくことが大切です。詳しくは【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序をご覧ください。
関連する解説記事
- 【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断
- 【ストーカートラブル】自宅に盗聴器が仕掛けられているかもしれない|調べ方と法的な手段
- 【ストーカートラブル】郵便物が開けられている形跡がある|確かめ方・記録・情報が漏れる経路の止め方
- 【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段
合鍵の不安は、確かめようとするほど相手との接触が増え、かえって負担が大きくなりがちです。鍵を替えて住まいの安全を先に確保し、記録を残したうえで、請求や手続を落ち着いて選んでいくことが、結果として早い解決につながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


