被害者参加制度|法廷でできることとできないこと

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

ご家族を亡くされた事件や、ご自身が大きなけがを負った事件で、加害者の刑事裁判が始まると聞いたとき、「傍聴席から見ているしかないのだろうか」と感じる方は少なくありません。

 被害者参加制度は、一定の事件について、被害を受けた方やご遺族が「被害者参加人」として法廷の中に入り、裁判に関わることを認める仕組みです。平成19年の法改正で設けられ、平成20年12月1日から実施されています。ただし、参加が認められれば法廷で何でもできるというものではなく、行為ごとに、どこまで行えるかが条文で区切られています。

 この記事では、被害を受けた方やご遺族の立場から、法廷でできることとできないことを同じ粒度で整理します。参加するかどうかを考えるとき、また、参加したうえで何を準備するかを考えるときの材料としてお読みください。

この記事で扱うこと


  • 被害者参加制度の対象となる事件と、参加が認められるまでの流れ。
  • 法廷でできる5つの行為と、それぞれに付いている範囲の限定。
  • 制度の枠の外にあること(できないこと)。
  • 費用を抑える仕組みと、賠償・判決後の手続とのつながり。


 示談交渉の進め方、民事の賠償額の算定方法、加害者側の対応については扱っていません。また、以下は一般的な説明であり、実際の取扱いは事件の内容や裁判所の判断によって異なります。

傍聴・証言・意見陳述との違い

 刑事裁判で被害を受けた方が関わる場面は、被害者参加だけではありません。傍聴は誰でもできますし、検察官から証人として証言を求められることもあります。被害に関する心情を述べる意見陳述の制度も別に用意されています。

 これらと被害者参加が違うのは、座る場所と立場です。参加が許可されると、傍聴席ではなく法廷の中に入り、検察官の隣などに着席します。証人として呼ばれたときのように一場面だけ関わるのではなく、審理の進行を通して関わることになります。

対象となる事件

 被害者参加ができる事件は、刑事訴訟法316条の33第1項に列挙されています。

対象となる罪主な例
1号故意の犯罪行為により人を死傷させた罪殺人、傷害、傷害致死、強盗致死傷、危険運転致死傷
2号刑法176条、177条、179条、211条、220条、224条から227条までの罪不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ・監護者性交等、業務上過失致死傷、重過失致死傷、逮捕監禁、略取誘拐、人身売買
3号2号の罪の犯罪行為を含む罪(1号を除く)強盗・不同意性交等など
4号自動車運転死傷処罰法4条、5条、6条3項・4項の罪過失運転致死傷、無免許運転による加重類型
5号1号から3号までの未遂罪殺人未遂、不同意性交等未遂など


 列挙されていない罪は対象になりません。たとえば窃盗、詐欺、恐喝、人が死傷していない強盗、迷惑防止条例違反としての痴漢、性的姿態等撮影罪は、被害者参加の対象事件ではありません。この点は、被害の重さと一致しないと感じられることがある部分です。

 実際にどの罪名で使われているかを見ると、令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の通常第一審における実施状況の罪名別構成比は、自動車運転死傷処罰法違反が33.8%、不同意わいせつと不同意性交等の合計が32.0%、殺人・傷害・強盗致死傷の合計が26.9%でした。交通事件と性犯罪が大きな割合を占めています。

参加が認められるまでの流れ


  1. 事件を担当する検察官に、参加したい旨を申し出ます。裁判所へ直接申し出る形にはなっていません。
  2. 検察官が、参加についての意見を付けて裁判所に通知します。
  3. 裁判所が、被告人または弁護人の意見を聴きます。
  4. 犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときに、参加を許可する決定が出ます。


 申出は、起訴された後、事件が裁判所で審理されている間であれば行えます。審理の途中から申し出ることもできますが、証人尋問や被告人質問に関わることを考えているのであれば、早い段階で申し出ておくほうが準備の幅は広がります。

 なお、いったん許可された後でも、参加を認めることが相当でないと判断されるに至ったときや、罰条の変更によって対象事件に当たらなくなったときは、許可が取り消されることがあります。

法廷でできること


1 公判期日に出席する

 法廷の中に着席して審理に立ち会えます(316条の34)。公判期日は参加人に通知されます。証人尋問や検証が行われる公判準備の場にも、同じ扱いで出席できます。

2 検察官の権限行使に意見を述べる

 証拠調べの請求や論告求刑といった検察官の活動について、意見を述べ、説明を求めることができます(316条の35)。検察官は、その権限を行使する、あるいは行使しないと決めたときは、必要に応じて理由を説明することとされています。求刑の重さについての希望を伝える場面も、実務ではここに含まれます。

3 証人を尋問する

 裁判所の許可を受けて、証人に質問できます(316条の36)。ただし範囲の限定が二重にかかっており、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項に限られます。被告人の家族が「今後は自分が監督します」と述べた場合に、同居しているのか、これまで注意をしたことがあるのかを確かめる、といった形の尋問がこれに当たります。申出は、検察官の尋問が終わった後、直ちに行う必要があります。

4 被告人に質問する

 裁判所の許可を受けて、被告人に直接質問できます(316条の37)。証人尋問と違い、質問できる事項は情状に限られません。ただし、後で述べる意見陳述をするために必要と認められる場合に、その範囲で許されるという建て付けです。関係のない事項に及ぶときは、裁判長が制限します。

5 事実または法律の適用について意見を述べる

 検察官の論告求刑の後に、事実の評価や法律の適用について意見を述べられます(316条の38)。述べられるのは訴因として特定された事実の範囲内で、起訴されていない別の出来事にまで広げることはできません。この陳述は証拠とはならないものとされています。

制度の枠の外にあること

 「できないこと」も同じくらい重要です。事前に把握しておくと、法廷で予想と違う展開になったときの負担が小さくなります。

法廷で望まれることの多い事柄制度上の扱い
証拠の取調べを自分で請求したい請求できるのは検察官と被告人側です。参加人は検察官に意見を述べる形で関わります
犯罪事実について証人を尋問したい尋問できるのは情状に関する事項の範囲で、犯罪事実に関する事項は除かれています
公判前整理手続にも出席したい出席できるのは公判期日と、証人尋問や検証が行われる公判準備です
求刑した刑を言い渡してほしい意見として述べた求刑は、裁判所の判断を拘束するものではありません
判決に納得できないので控訴したい上訴できるのは検察官と被告人側です。参加人は上訴の当事者にはなりません
起訴するかどうかを決めてほしい起訴・不起訴を決めるのは検察官です。不起訴となった場合は検察審査会への申立てが別に用意されています


 このほか、参加人や委託を受けた弁護士が多数になる場合には、出席する代表者を選ぶよう求められることがあります。審理の状況によっては、期日の全部または一部への出席が認められないこともあります。

2つの意見陳述は性質が違う

 被害者が法廷で意見を述べる制度は2つあり、混同されやすいところです。

項目心情等の意見陳述(292条の2)事実・法律の適用についての意見陳述(316条の38)
使える事件罪名の限定はありません被害者参加の対象事件に限られます
前提被害者等として申し出ます被害者参加人であることが前提です
述べる内容被害に関する心情その他の意見訴因の範囲内での事実の評価や法律の適用
述べる時期公判期日(証拠調べの手続の中で行われることが一般的です)検察官の論告求刑の後
証拠としての扱い犯罪事実の認定のための証拠にはできません証拠とはならないものとされています


 注目したいのは1行目です。心情等の意見陳述には罪名の限定がないため、被害者参加の対象外の事件でも、法廷で気持ちを述べる道は残されています。窃盗や詐欺の被害に遭われた方が「自分は何も関われない」と受け取ってしまうことがありますが、そうとは限りません。

 もう一点、心情等の意見陳述をした後は、趣旨を明確にするために、裁判官や訴訟関係人から質問を受けることがあります。書面を提出する方法が選ばれる場合もあります。何を述べるかを事前に整理しておく意味は、ここにもあります。

負担を軽くするための仕組み

 法廷に入ること自体が負担になる場合に備えて、いくつかの措置が用意されています。

  • 年齢や心身の状態を考慮して、適当と認められる人に付き添ってもらう措置。
  • 被告人から参加人の様子が見えないようにする遮へいの措置(弁護人が出頭している場合に限られます)。
  • 傍聴人との間で互いに様子が見えないようにする遮へいの措置。
  • 氏名や住所などを公開の法廷で明らかにしない、被害者特定事項の秘匿決定。


 心情等の意見陳述の場面でも、付添い、遮へい、ビデオリンク方式の規定が準用されます。また、令和5年の法改正により、性犯罪の事件などでは、起訴状の抄本を被告人に送達するなどして個人を特定させる事項を伝えない扱いが可能になりました(令和6年2月15日施行)。

 参加の申出と、尋問や質問といった個々の行為の申出は別に行います。出席だけにとどめる、意見陳述だけを行うといった関わり方も選べますので、無理のない範囲を検察官や弁護士と相談しながら決めていくことになります。

弁護士に委託する場合と費用

 出席、尋問、質問、意見陳述は、委託を受けた弁護士(被害者参加弁護士)が代わりに行えます。ご本人は出席せず、弁護士だけが法廷に立つという形も可能です。

 資力が200万円に満たない場合には、裁判所が弁護士を選定し、国が費用を負担する国選被害者参加弁護士の制度があります。資力の計算では、6か月以内に犯罪行為を原因として治療費などを支出する見込みがあるときは、その費用が控除されます。希望する場合は法テラスに申し出ます。

 公判期日等に出席した参加人には、旅費・日当・宿泊料が支給されます。ただし、傍聴席で傍聴したにとどまる場合や、被害者等として心情等の意見陳述を行ったのみの場合は対象外です。請求は裁判が終了してから30日以内に行う必要があります。

賠償を求める手続との関係

 被害者参加は刑罰に関する手続であり、賠償金の支払を命じるものではありません。賠償については別の制度が用意されています。

 示談がまとまった場合は、その内容を公判調書に記載してもらう刑事和解という方法があります。記載されると裁判上の和解と同じ効力を持つため、約束が守られないときに、あらためて民事訴訟を起こさずに強制執行の手続を取れます。

 もう一つが損害賠償命令制度です。刑事事件を担当した裁判所が、有罪判決の後に引き続き審理し、原則として4回以内の期日で決定を出します。申立手数料は2,000円で、申立ては起訴された時から審理手続が終結するまでの間に行います。決定に異議が申し立てられると、通常の民事訴訟に移ります。

 ここで気をつけたいのが対象事件のずれです。業務上過失致死傷や過失運転致死傷は、被害者参加の対象ではあっても、損害賠償命令の対象からは外れています。過失の割合が争点になりやすく、短期間で終える手続になじみにくいためと説明されています。交通事件では、賠償は保険会社との交渉や民事訴訟で進めることになります。

判決の後にできること

 刑事裁判が終わっても、関われる場面はあります。判決の内容や加害者の処遇状況について知らせを受ける被害者等通知制度、仮釈放の審理にあたって意見を述べる意見等聴取制度、被害に関する心情を聴き取ってもらい加害者に伝えてもらう心情等聴取・伝達制度です。

 心情等の伝達は、以前は保護観察中の加害者に限られていましたが、令和5年12月1日から、刑事施設や少年院に収容されている段階でも利用できるようになりました。法廷での意見陳述とは別の機会として覚えておくとよい制度です。

誤解されやすい点


  • 申し出れば当然に参加できるわけではなく、裁判所が相当と認めたときに許可されます。
  • 参加が許可されても、尋問や質問は行為ごとに申し出て、そのつど許可を受けます。
  • 被告人への質問は情状に限られませんが、意見陳述に必要な範囲という枠が付いています。
  • 論告求刑の後に述べる意見は、証拠とはならないものとされています。
  • 被害者参加の対象外の事件でも、心情等の意見陳述は罪名を問わず申し出られます。
  • 被害者参加をしても、賠償の支払を命じてもらえるわけではありません。


まとめ


  • 被害者参加制度は、一定の事件で被害を受けた方やご遺族が法廷の中に入り、審理に関われる仕組みです。
  • 対象事件は刑事訴訟法316条の33第1項に列挙され、窃盗や詐欺などは含まれません。
  • 申出は検察官に行い、被告人側の意見を聴いたうえで裁判所が許可します。
  • 法廷でできるのは、出席、検察官への意見、証人尋問、被告人質問、事実・法律の適用についての意見陳述の5つです。
  • 証人尋問は情状に関する事項の範囲に限られ、証拠調べの請求や上訴はできません。
  • 心情等の意見陳述は罪名の限定がなく、参加の対象外の事件でも利用できます。
  • 国選被害者参加弁護士の制度と旅費等の支給があり、費用面の負担は抑えられます。
  • 賠償は刑事和解や損害賠償命令、民事訴訟という別の手続で扱われます。


 どこまで関わるかに正解はありません。法廷に立って直接伝えたいという方もいれば、弁護士に任せて結果だけを聞きたいという方もいます。制度の範囲を知ったうえで、ご自身にとって無理のない関わり方を選んでいただくことが、この記事の目的です。

 当事務所では、被害を受けた方やご家族からのご相談を承っています。参加の申出をどの段階で行うか、どの行為まで委託するか、賠償をどの手続で求めるかは、事件の内容によって組み立てが変わります。刑事裁判の進行には期限のある手続も含まれますので、迷われている段階でも早めにご相談ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼