【ストーカートラブル】元配偶者からのつきまとい|子の面会を口実にされる

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点の法令に基づいて書いています。ストーカー規制法、配偶者暴力防止法(2024年4月施行の改正を反映)、2026年4月1日に施行された改正民法(父母の離婚後の子の養育に関する見直し)の内容を踏まえています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。


「離婚して2年になりますが、面会交流の日程を決める連絡のたびに、私の交際相手や仕事のことを聞かれます。断ると『子どもに会わせないつもりか』と言われ、最近は家の近くで見かけることも増えました」。ご相談の現場では、こうした声を子と同居している親の側から伺います。一方で、別居している親の側から「子どもに会いたくて連絡しただけなのに、ストーカー扱いされて面会も止められた」というご相談をいただくこともあります。

 元配偶者からのつきまといには、ストーカー規制法やDV防止法の保護命令で対応できる、という説明がよく見られます。それ自体は誤りではありませんが、面会交流が絡むと話は単純ではありません。面会交流は子のための取り決めであり、つきまといを止めたいからといって面会交流そのものを一方的に打ち切ると、今度は止めた側が責任を問われる場面があるからです。

 この記事では、子の面会を口実にした接触について、正当な求めとつきまといの境目、使える法的手段とその限界、そして面会交流を続けながら親同士の接触を減らす方法を整理します。ストーカー規制法とDV防止法の制度の違いや、警告・禁止命令の手続そのものについては、別の記事にまとめていますので、あわせてご覧ください。

面会交流の求めとつきまといは、どこで分かれるのか

 まず押さえておきたいのは、面会交流を求めること自体は正当な行為だという点です。問題になるのは、面会交流の調整という範囲を超えて、同居している親本人への接触が広がっていく場合です。

面会交流は子のための取り決めで、親同士の接触を広げる根拠ではない

 離婚の際には、子と別居する親との交流について取り決めることが予定されており、その際には子の利益を最も優先して考えなければならないとされています(民法766条1項)。なお、2026年4月の改正法施行後は「親子交流」という呼び方が使われることも増えています。

 ここで大切なのは、面会交流で認められているのは「子との交流」であって、元配偶者が同居親の生活に関与する権利ではないということです。面会交流の取り決めがあっても、同居親の交際関係や勤務先、転居先を知る権利が別居親に生じるわけではありません。日時や場所、受け渡し方法の調整に必要な範囲を超えた連絡は、面会交流の名目があっても、別の問題として見ていくことになります。

「口実」と感じる接触の典型

 ご相談で多いのは、次のような形です。

  • 面会の日程調整の連絡に、復縁の話や同居親の私生活についての質問が混ざる。
  • 返信をしないと「子どもに会わせない気か」と短時間に何度も連絡が来る。
  • 取り決めのない日に自宅の近くや最寄り駅で待っている。
  • 学校や保育園、習い事の場所に事前の連絡なく現れる。
  • 子に同居親の様子や交際相手のことを聞き出し、それを同居親に伝えてくる。
  • 受け渡しの場で同居親を引き止め、長時間話し続ける。


境界を見るときの目安

 正当な調整とつきまといに近い行動の違いを、場面ごとに整理すると次のようになります。あくまで目安であり、実際には頻度や経緯、言葉の内容を合わせて判断します。

場面面会交流の調整として通常考えられる範囲つきまといに近づく行動
連絡の内容日時・場所・受け渡し方法、子の体調や行事の確認同居親の交際・勤務先・転居先の詮索、復縁の話
連絡の頻度取り決めた方法・頻度の範囲返信がないと短時間に何度も送る、深夜や早朝の連絡
場所取り決めた受け渡し場所自宅周辺や勤務先での待ち伏せ、取り決めのない日の来訪
子への接触取り決めた日時の交流学校・保育園への無断の来訪、子を通じた同居親の様子の聞き出し


ストーカー規制法はどこまで使えるのか

 元配偶者の行動がつきまといにあたる場合、まず考えられるのがストーカー規制法です。ただ、面会交流が絡む場面では、この法律の要件との関係で判断が分かれることがあります。

面会の要求そのものも「つきまとい等」に含まれうる

 ストーカー規制法は、待ち伏せや押しかけ、うろつきのほか、「面会、交際その他の義務のないことを行うことの要求」や、拒まれたにもかかわらず連続して電話やメッセージを送る行為などを「つきまとい等」として定めています(ストーカー規制法2条1項)。対象には本人だけでなく、その直系や同居の親族も含まれるため、元配偶者が子の学校の周辺で待つといった行動も、同居親を目的とするものであれば規制の対象になりえます。

 つきまとい等が繰り返されると「ストーカー行為」となり、警察による警告や、公安委員会による禁止命令の対象になります(同法4条、5条)。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が定められています(同法19条1項)。詳しい流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで解説しています。

目的の要件で判断が分かれる

 一方で、ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で行われる行為を対象にしています(同法2条1項柱書)。「子どもに会いたい」という動機だけが前面に出ている場合、この目的の要件を満たすかどうかで判断が分かれることがあります。

 ただ、連絡の中に復縁を求める言葉が繰り返し出てくる、離婚や同居親への恨みを述べている、同居親の交際相手に強い関心を示しているといった事情があれば、元配偶者本人への執着がうかがえる材料になります。警察に相談する際には、面会交流の話とは別に、こうした言葉や行動を時系列で示すことが大切です。つきまとい等とストーカー行為の違いについては連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いもご参照ください。

ストーカー規制法にあたらない場合に考えられる手段

 目的の要件を満たさないと判断された場合でも、ほかの法律で対応できることがあります。危害を加えると告げる言動は脅迫罪(刑法222条)、拒んでいるのに住居の敷地や共用部分に立ち入る行為は住居侵入罪(同法130条)にあたる可能性があります。また東京都では、恨みなどの悪意の感情を満たす目的でのつきまといを条例で規制しています(東京都迷惑防止条例5条の2)。民事では、接近や連絡を禁じる仮処分を裁判所に求める方法もあり、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで使い分けを整理しています。

離婚前から暴力や脅迫があった場合の保護命令

 婚姻中から暴力や脅迫を受けていた場合には、DV防止法の保護命令も選択肢になります。保護命令は、ストーカー規制法と違って目的の要件がないため、面会交流が絡む事案で検討の対象になりやすい制度です。

元配偶者が対象になる条件

 保護命令の対象となる「配偶者」には、離婚前に暴力等を受け、離婚後も引き続き暴力等を受ける場合の元配偶者が含まれます。2024年4月施行の改正で、身体への暴力や生命・身体への脅迫に加えて、自由・名誉・財産に対する脅迫を受けた場合も申立てができるようになり、心身に重大な危害を受けるおそれが大きいときに発令されます(配偶者暴力防止法10条)。接近禁止命令の期間も6か月から1年に延びました。

 ただし、離婚後になって初めて暴力や脅迫が始まった場合には、保護命令は使えません。この場合は、ストーカー規制法や民事保全の手続で対応することになります。両制度の違いはストーカー規制法とDV防止法の違い|自分のケースはどっちで守られる?でまとめています。

子への接近禁止命令と面会交流の関係

 保護命令には、申立人本人への接近禁止命令とあわせて、同居している子への接近禁止命令や電話等禁止命令を求める制度もあります。元配偶者が子を連れ去るおそれがあり、そのために申立人が元配偶者と会わざるを得なくなる事情がある場合などに検討されるもので、子が15歳以上であれば子本人の同意が必要です。

 子への接近禁止命令が出ている間は、取り決めどおりの面会交流を実施することは事実上難しくなります。そのため、保護命令の申立てと並行して、面会交流の取り決めをどう扱うかも整理しておく必要があります。

面会交流を続けながら、接触の経路を切り分ける

 暴力や脅迫まではないものの、面会交流の連絡を通じた接触に負担を感じている場合、多くの事案で現実的なのは、面会交流そのものではなく「親同士がやり取りする経路」を整理する方法です。

連絡の窓口を一つにする

 面会に関する連絡を、代理人の弁護士、親族、または面会交流の連絡に限定したツールなど、一つの窓口にまとめます。窓口を一つにすると、面会の調整に必要な連絡とそれ以外の連絡を切り分けやすくなり、面会と関係のない話題には応じない対応がとりやすくなります。

受け渡しを第三者に任せる

 面会交流の支援を行う第三者機関には、連絡の調整だけを担う形、子の受け渡しを担う形、面会に付き添う形などがあります。受け渡しを第三者に任せれば、同居親が元配偶者と顔を合わせる場面そのものをなくすことができます。費用や利用条件は機関ごとに異なるため、取り決めの段階で費用の分担もあわせて決めておくと、後の対立を避けやすくなります。

取り決めそのものを見直す

 当事者間の話し合いが難しい場合は、家庭裁判所に面会交流の内容の変更を求める調停を申し立てることが考えられます。受け渡しの方法や場所、連絡手段といった具体的な条件を調停で定め直すことで、口実となる余地を減らすことができます。改正法の施行後は、家庭裁判所の手続中に交流を試行的に行う制度も設けられており(家事事件手続法152条の3)、実際の様子を踏まえて条件を検討しやすくなっています。

一方的に面会交流を止める前に知っておきたいこと

 つきまといへの不安から、面会交流を止めたいと考えるのは自然なことです。ただ、取り決めがある場合には、止め方によっては同居親の側が不利になることがあります。

取り決めがあれば、止めた側が問われることもある

 調停や審判で面会交流が決まっている場合、相手方は家庭裁判所に履行勧告を求めることができます(家事事件手続法289条)。さらに、面会の日時や頻度、受け渡しの方法などが具体的に定められている場合には、実施しないことに対して金銭の支払いを命じる間接強制が認められた例もあります(最高裁平成25年3月28日決定)。不安があるときこそ、一方的に止めるのではなく、手続を通じて条件を変える道を選ぶほうが、結果として自分と子を守ることにつながります。

改正後の「人格尊重・協力義務」は双方にかかる

 2026年4月施行の改正民法では、父母が子の利益のために互いの人格を尊重し協力しなければならないことが明記されました(民法817条の12第2項)。別居親が同居親の子育てに不当に干渉することや、同居親が取り決めた面会を理由なく拒むことは、この義務に反する場合があるとされています。他方で、暴力や虐待から避難するために必要な対応は、この義務に違反しないと説明されています。

 面会交流を口実にした詮索や待ち伏せは、別居親の側のこの義務との関係でも問題になりえます。逆に、面会を止める場合には、それが避難や安全確保のために必要な対応であったことを、後から説明できるようにしておくことが大切です。

子の安全に懸念がある場合

 面会の場で子が危険にさらされるおそれがある、子が強く面会を嫌がっているといった事情がある場合は、面会交流の制限や一時停止を家庭裁判所に求めることも考えられます。この場合も、具体的な出来事や子の様子を記録として残し、手続の中で示していくことになります。

記録の残し方と、住所を守るための手当て

 警察への相談でも家庭裁判所の手続でも、判断の材料になるのは記録です。面会交流が絡む事案では、記録の分け方に少し工夫が必要です。

面会の連絡とそれ以外の接触を分けて残す

 面会の日程調整のやり取りと、それ以外の連絡や待ち伏せの記録を分けて整理しておくと、「面会交流の名目で、それを超えた接触が続いている」ことを示しやすくなります。メッセージは画面の保存だけでなく送信日時が分かる形で残し、待ち伏せなどは日時・場所・状況をその都度メモしておきます。相手を刺激しない連絡の断ち方や証拠の残し方は、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方でも解説しています。

転居先を知られたくない場合の支援措置

 離婚後に転居した場合でも、元配偶者は子の親として、子の住民票や戸籍の附票から住所を知ることができる場合があります。暴力やつきまといの被害を受けている場合には、市区町村に申し出て、住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付を制限する支援措置を受けられることがあります。ご自身だけでなく子の分も対象にしておくことが大切です。

 すでに自宅を知られている場合の管理会社との連携や防犯面の対策については、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることをご覧ください。

弁護士が間に入ると何が変わるのか

 面会交流を口実にした接触では、「面会交流は続ける、ただし親同士の接触は必要な範囲に限る」という線を、相手方に対して明確に示すことが出発点になります。

面会の調整と、つきまといへの対応を同時に進められる

 弁護士が代理人になると、面会交流の連絡窓口を引き受けたうえで、それを超えた接触にはやめるよう求める通知を送ることができます。必要に応じて、警察への相談への同行や、面会交流の条件変更の調停、保護命令や仮処分の申立てを並行して進めることもできます。面会交流の手続とつきまといへの対応を別々に進めると、互いの主張が食い違って不利になることがあるため、全体を一つの方針で組み立てることが重要です。代理人を立てる意味については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味でも詳しく解説しています。

子に関わる場への働きかけ

 学校や保育園に元配偶者が現れる場合には、引き渡しの際の確認方法などを園や学校と事前に共有しておくことも考えられます。子を介した要求や、学校・習い事の場での圧力への対応は、【不当要求対応】子どもを介した要求|学校・習い事の場での圧力もあわせてご参照ください。

よくあるご質問

つきまといがあれば、面会交流を拒否してもよいのでしょうか。

 暴力や子への危険があり、避難や安全確保のために必要な場合は、面会を見合わせることが正当化される場面があります。ただ、取り決めがある場合に一方的に止めると、履行勧告や間接強制を求められることもあります。まずは連絡窓口や受け渡し方法を見直し、それでも難しい場合は家庭裁判所の手続で条件の変更や制限を求めるのが、後々のことを考えると安全な進め方です。

面会の日程連絡を無視すると、こちらが不利になりますか。

 面会交流の調整に必要な連絡まで無視すると、取り決めを守っていないと受け取られるおそれがあります。面会の日時・場所・方法に関する連絡には、決めた窓口を通じて事務的に応じ、それ以外の話題には応じないという対応が考えられます。

元夫が「子どもに会いたいだけだ」と言っている場合でも、警察は動いてくれますか。

 ストーカー規制法の目的の要件との関係で、判断が分かれることがあります。ただ、脅迫や住居侵入にあたる行為があれば、目的にかかわらず対応の対象になります。相談の際には、面会交流の取り決めの内容と、それを超えた接触の記録をあわせて示すと、状況が伝わりやすくなります。

まとめ


  1. 面会交流は子のための取り決めであり、同居親の私生活に関与する根拠にはならない(民法766条1項)。
  2. 面会の要求や拒否後の連続した連絡も、ストーカー規制法の「つきまとい等」に含まれうる(ストーカー規制法2条1項)。
  3. 同法は恋愛感情や怨恨の感情を満たす目的を要件とするため、「子に会いたい」という動機だけでは判断が分かれることがある。
  4. 規制法にあたらなくても、脅迫罪(刑法222条)や住居侵入罪(同法130条)、東京都迷惑防止条例、民事保全で対応できる場合がある。
  5. 離婚前から暴力や脅迫を受けていた場合は、子への接近禁止を含む保護命令を検討できる(配偶者暴力防止法10条)。
  6. 取り決めがある面会交流を一方的に止めると、履行勧告(家事事件手続法289条)や間接強制を求められることがある。
  7. 改正民法の人格尊重・協力義務(民法817条の12第2項)を踏まえ、窓口の一本化や第三者機関、調停での条件変更により親同士の接触を整理する。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、つきまといやストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。面会交流が絡む事案では、子との交流と親同士の接触を切り分け、警察・家庭裁判所の手続を見据えながら対応の順序を組み立てていきます。

元配偶者からの連絡や待ち伏せに不安を感じている方はもちろん、面会のやり取りがこじれて、どこまでが正当な求めなのか分からなくなっている方も、一人で抱え込まずにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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