【FAQ】風俗トラブルで多い質問20|逮捕・示談・費用・秘匿をまとめて解説
「逮捕されたら退学になるのか」「内定は取り消されるのか」。学生の方や、来春の入社が決まっている内定者の方にとって、この二つは刑事事件そのものより先に頭に浮かぶ心配かもしれません。ただ、この二つの言葉は、実際の手続よりもかなり大きな輪郭で語られがちです。
この記事では、大学が学生に対して行う処分と、企業が内定者に対して行う内定取消しの二つに絞って、それぞれが何を根拠に、誰が、どういう手順で決めるものなのかを整理します。性風俗をめぐるトラブルで捜査を受けている方を想定していますが、考え方の枠組みは事件の種類を問いません。
なお、逮捕や捜査の事実が大学や企業にどの経路で伝わるのか、資格や免許はどうなるのか、公務員の身分はどう扱われるのかは、それぞれ別のテーマとして扱っています。ここでは触れません。
学生と内定者には三つの時計がある
刑事手続には、逮捕から72時間、勾留の10日と延長の10日、起訴から判決まで、といった独自の時間の流れがあります。しかし学生と内定者には、それとは別に動いている時計が二つあります。進級と卒業を区切る「年度」と、入社日です。
この三つは、互いの結論を待つ関係にありません。刑事手続が長引くうちに年度が変わることも、刑事の結論が出る前に入社日が来ることもあります。それぞれが何を見て動いているのかを並べておきます。
| 観点 | 刑事手続 | 大学の処分 | 内定取消し |
|---|---|---|---|
| 決めるのは誰か | 検察官・裁判所 | 学長など学内の機関 | 会社 |
| 根拠になるもの | 刑法などの法律 | 学校教育法と学則・懲戒規程 | 内定通知と誓約書、労働契約のルール |
| 見ているもの | 犯罪が成立するか、どの刑にするか | 学内の秩序と教育上の判断 | 従業員としての適格性 |
| 区切りになる時点 | 処分や判決が出るまで | 年度末、進級・卒業の判定 | 入社日 |
三つの列が別々である以上、刑事で不起訴になったからといって、大学の処分や内定取消しが自動的になくなるわけではありません。逆に、起訴されたからといって、大学や会社の判断が自動的に決まるわけでもありません。この記事の出発点はここです。
大学が学生に対してできることの種類
「退学になる」と一言でいっても、大学が学生の在学関係に手を加える場面にはいくつも種類があり、法的な性質が違います。まずこれを分けておくと、届いた通知が何なのかを読み違えずに済みます。
| 名称 | 位置づけ | 決め方 |
|---|---|---|
| 訓告 | 懲戒のうち最も軽いもの | 学則・懲戒規程に沿った処分 |
| 停学 | 懲戒。期間を定めるものと定めないものがある | 学則・懲戒規程に沿った処分 |
| 退学処分 | 懲戒のうち最も重いもの | 学校教育法施行規則で事由が限定されている |
| 除籍 | 懲戒ではない。学費未納や在学年限の超過などによる学籍の抹消 | 学則の定めに従った事務上の扱い |
| 自主退学の勧告 | 処分ではない。本人が退学願を出すよう促すもの | 学内の指導として行われる |
除籍は懲戒ではない
除籍は、学費が納められていない、在学できる年数を超えた、といった理由で学籍がなくなる扱いで、懲戒処分とは根拠も手続も別です。ただし、身柄拘束が長引いて学費の納入期限を逃したり、休学の手続が取れなかったりして、結果として除籍の要件に当たってしまうことはあります。刑事事件そのものではなく、事件によって手続ができなくなったことが原因になるという点で、注意の向け方が違います。
停学には期間を定めるものと定めないものがある
停学には、期間を区切る有期のものと、期間を区切らない無期のものがあります。無期停学は、一定の期間が過ぎた後に本人の状況を見て解除する運用が一般的ですが、いつ解除されるかがあらかじめ決まっていないため、単位や進級への影響を読みにくくなります。後で触れる奨学金の扱いも、この二つで変わります。
自主退学の勧告は処分ではない
大学から「自分で退学願を出してはどうか」と促されることがあります。これは懲戒処分ではなく、本人が退学願を出せば自分の意思で辞めたことになります。処分ではないので、後から「処分が重すぎる」と争う土台も基本的になくなります。その場で書くよう求められても、いったん持ち帰ってよいかを聞いてかまいません。
退学の事由は法令で限定されている
退学処分については、学校教育法施行規則26条3項が、次の四つに事由を限っています。
- 性行不良で改善の見込がないと認められる者。
- 学力劣等で成業の見込がないと認められる者。
- 正当の理由がなくて出席常でない者。
- 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者。
ここに「逮捕された者」「刑事事件を起こした者」という項目はありません。事件を理由に退学処分をする場合は、四つ目の「学校の秩序を乱し、その他学生としての本分に反した」に当たるかどうかという形で判断されることになります。逮捕そのものが事由なのではなく、行為の中身が学生としての本分に反すると評価できるかが問われる、という構造です。
各大学の学則は、この四つを受けて退学事由を書いています。施行規則の文言をほぼそのまま写している大学もあれば、独自の項目を足している大学もあります。まず自分の大学の学則がどう書いているかを確かめるのが出発点です。
大学には処分の手続を定める義務がある
あまり知られていませんが、学校教育法施行規則26条5項は、学長は、学生に対する退学、停学及び訓告の処分の手続を定めなければならないと定めています。大学は、処分を思い立ったときに好きなやり方で決めてよいのではなく、あらかじめ手続を定めておくことが求められている、ということです。
また、同条2項により、退学・停学・訓告の処分を行うのは校長、大学の場合は学長(学長の委任を受けた学部長を含む)とされています。学生課の担当者や指導教員から口頭で言われたことが、それだけで処分になるわけではありません。
学則と懲戒規程のどこを読むか
多くの大学は、学則とは別に「学生懲戒規程」といった名前の内規を持っており、ウェブサイトの規程集に公開されていることが少なくありません。読むときの手がかりは次のとおりです。
- 懲戒の種類として何が挙げられているか。
- 誰が調査し、どの会議体が審議し、最終的に誰が決めるのか。
- 本人が事情を説明する機会(弁明の機会)が置かれているか。
- 処分を書面で通知することになっているか、理由が書かれるか。
- 処分に納得できない場合の申立てについて定めがあるか。
弁明の機会が規程に置かれているのに実際には与えられなかった、といった事情は、後に処分の当否が争われたときに考慮されうる材料になります。呼び出されてから慌てて探すより、事前に目を通しておくほうが落ち着いて臨めます。
裁判所は大学の処分をどこまで見るか
大学の処分に納得できない場合、裁判で争うこと自体はできます。ただし裁判所の見方には特徴があります。最高裁は昭和49年7月19日の判決(昭和女子大学の事件)で、学生に対する懲戒処分について、おおむね次のような整理をしています。
- 学生の懲戒は、大学の内部規律を維持し教育目的を達成するために認められる作用であり、懲戒に値するか、どの処分を選ぶかは、学内の事情に通じた者の合理的な裁量に委ねられる。
- 退学処分は学生の身分を奪う重大な措置であるから、その要件の認定には、他の処分を選ぶ場合と比べて特に慎重な配慮を要する。
- 他方で、退学処分をする前に本人の反省を促す指導の過程を経なければならないという法的義務までは認められない。
この三点は、学生にとって有利な方向と不利な方向の両方を含んでいます。退学は特に慎重に判断すべきものだとされている一方で、大学の裁量そのものは広く認められている、というのが全体像です。裁判所が処分を取り消すのは、その判断が社会通念に照らして著しく妥当を欠き、裁量の範囲を超えていると評価できる場合に絞られます。
実際の裁判例も一方向ではありません。刑事事件を理由とする退学処分を有効とした例もあれば、事案の程度に比べて退学は重すぎるとして違法と判断した例もあります。どこかで見た事例だけを手がかりに自分の結論を決められるものではない、ということでもあります。
停学が刑事の処分より重く効く場面
刑事の側では罰金や不起訴で終わったのに、学生生活のほうが長く止まる、という順序は珍しくありません。停学の期間は授業に出られず、試験も受けられないのが通常なので、次のような形で影響が積み上がります。
- その学期の単位が取れず、進級や卒業の要件を満たせなくなる。
- 必修科目や実習など、実施時期が決まっているものを逃す。
- 卒業が延びることで、内定先の入社日に間に合わなくなる。
- 研究室やゼミの継続、留学・派遣プログラムの選考に影響する。
特に、卒業が入社の前提になっている内定では、停学そのものよりも「卒業できないこと」が内定の側に跳ね返るという経路があります。停学の見通しを聞くときは、期間の長さだけでなく、その期間が単位や卒業判定でどう扱われるのかまで確かめておくとよいでしょう。
奨学金への影響は見落とされやすい
日本学生支援機構の給付奨学金(返還を要しない奨学金)については、奨学生向けの案内に、懲戒処分による退学、除籍、無期停学又は3か月以上の停学の場合には、支給を打ち切ったうえで、すでに支給された分の返還を求めるという趣旨の定めが置かれています。また、この理由で認定を取り消された場合には、その後に改めて給付奨学金を受けることもできないとされています。
つまり、大学の処分は在学関係だけの問題では終わらず、すでに受け取ったお金を返す話に直結しうるということです。無期停学と3か月以上の停学がここで基準になっている点は、先ほど停学の種類を分けた理由でもあります。
貸与型の奨学金については、在学し続ける場合に、届出によって返還の期限を猶予する仕組みがあります。処分の話と並行して、学校の奨学金窓口に確認しておくほうが安心です。
内定取消しは「解雇に近い扱い」から出発する
内定については、まず出発点を押さえておく必要があります。最高裁は昭和54年7月20日の判決(大日本印刷の事件)で、採用内定によって、就労の始期を定め、一定の場合に解約する権利を会社に留保した労働契約が成立していると判断しました。
内定は「まだ何も始まっていない口約束」ではなく、すでに契約が成立している状態だということです。そのため内定取消しは、契約を一方的に終わらせる行為として扱われます。同じ判決は、取消しが認められるのは内定当時に知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由に取り消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる場合に限られるとしています。
この基準は、内定者にとって守りになる面があります。会社が誓約書に取消事由をたくさん並べていても、それだけで自由に取り消せるわけではない、という意味だからです。
不起訴でも内定取消しが有効とされた例がある
一方で、刑事の結論と内定の結論が一致しない場合があることも知っておく必要があります。最高裁は昭和55年5月30日の判決(電電公社の近畿電通局の事件)で、内定者が無届のデモに参加して現行犯逮捕され、起訴猶予処分となった事案について、内定取消しを有効と判断しました。
この事案では、逮捕された事実だけで結論が出たわけではなく、当時の職場の状況のもとで秩序が乱され業務が妨げられる具体的なおそれがある、という評価が前提になっていました。労働運動をめぐる古い時代の事案でもあります。それでも、起訴猶予、つまり不起訴で終わった事案について内定取消しが有効とされた最高裁の判断があることは、押さえておくべき事実です。
「不起訴なら安心」でも「起訴されたら終わり」でもない
この二つの判決を並べると、内定取消しは刑事の結論をそのまま写し取る仕組みにはなっていない、ということが見えてきます。不起訴になっても取消しが有効とされることはありえますし、逆に、起訴されたことだけを理由とする取消しが当然に有効になるわけでもありません。判断されるのは、その事実が、その会社の従業員としての適格性にどう関わるかです。
だからこそ、刑事の見通しと内定の見通しは、別々に組み立てて考える必要があります。
会社の側にも踏むべき手続がある
内定取消しは会社が一方的に通知して終わり、という印象を持たれがちですが、新規学卒者については、会社の側にも法令上の手続があります。職業安定法施行規則35条2項は、新規学卒者の採用内定を取り消そうとする事業主は、あらかじめ、所定の様式によりハローワークと学校の長に通知することとしています。
この様式には、次のような事項を書くことになっています。
- 内定取消しの対象となる人数。
- 内定取消しを行わなければならない理由。
- 内定取消しを避けるために検討した事項。
- 対象となる学生への説明の状況。
- 対象となる学生に対する支援の内容。
さらに同規則17条の4は、報告された内定取消しの内容が一定の場合に当たるときに、厚生労働大臣がその内容を公表できるとしています。ただし、この公表の対象からは取消しの対象となった本人の責めに帰すべき理由によるものが除かれています。本人側の事情による内定取消しは、企業名の公表という仕組みには乗らない、ということです。
公表制度は経営上の理由による内定取消しを主に念頭に置いたものですが、通知そのものは本人側の事情による場合も含めて求められていると読めます。会社が理由や説明の状況を書いて学校にも通知する立場にある、という前提を知っておくと、大学の就職課に相談する意味も見えてきます。
内定辞退を求められたときに立ち止まる
実務でよく問題になるのが、会社が「取消し」ではなく「自分から辞退してほしい」と求めてくる場面です。この二つは法的な性質が違います。内定取消しは会社が契約を終わらせる行為なので、後からその有効性を争う余地があります。これに対して内定辞退は、内定者が自分から契約を終わらせる行為です。辞退届に署名して提出すると、自分の意思で終わらせたことになり、争う土台は大きく狭まります。大学の自主退学の勧告と同じ構造です。
その場で署名を求められたときに確認しておきたいのは、次の点です。
- 会社が求めているのは「取消し」なのか「辞退」なのかを、言葉として確かめる。
- 取消しであれば、理由を書面で示してもらえるかを尋ねる。
- 返答の期限を確認し、その場で決めずに持ち帰る旨を伝える。
- 署名を求められた書面は、写しを手元に残す。
- 大学の就職課やキャリアセンターにも状況を伝えておく。
持ち帰りたいと伝えること自体は、何かを拒んだことにはなりません。
自分から会社に伝えるべきかどうか
「今のうちに会社に話しておいたほうがよいか」という相談を受けることがあります。これは一律に答えの出る問題ではありません。
まず確認したいのは、提出した誓約書や内定承諾書に、身上に重大な変化が生じたときは報告するといった趣旨の条項があるかどうかです。条項がある場合と、何も書かれていない場合とでは、伝えなかったことの意味合いが変わってきます。また、見通しが固まっていない段階で伝えるのか、処分が決まってから伝えるのかによっても、会社の受け止め方は変わります。伝えないと決めた場合でも、入社日までに刑事手続が終わらない可能性がどの程度あるのかは、あわせて考えておく必要があります。事件の内容と誓約書の文言、そして時期の見通しをそろえて検討する種類の判断です。自己判断で急ぐより、材料をそろえてから決めるほうが、後から動かせる余地が残ります。
刑事の段階でしておくと後に効くこと
大学の処分や内定取消しは刑事手続の外側で決まりますが、刑事の段階で残したものが、後の説明の材料になることはあります。
- 自分の大学の学則と学生懲戒規程を先に読み、手続の流れを把握しておく。
- 呼び出しや面談を受けた日時、話した内容、渡された書面を記録として残す。
- 処分の通知は書面で受け取り、理由の記載があるかを確認する。
- 不起訴になった場合、検察庁に請求すれば不起訴処分告知書を受け取れることを知っておく。
- 奨学金の扱いについて、学校の奨学金窓口に処分の種類を伝えて確認する。
なお、弁護士が大学や会社に事情を説明することはできますが、説明したからといって処分が軽くなることを約束できる性質のものではありません。できるのは、事実関係と手続の状況を正確に伝え、判断材料をそろえてもらうところまでです。
まとめ
- 刑事手続、大学の処分、内定取消しは別々の手続で、互いの結論を待つ関係にはない。
- 退学の事由は学校教育法施行規則で四つに限られており、「逮捕された」という項目はない。
- 大学は退学・停学・訓告の処分手続を定めることが求められており、学則と懲戒規程が出発点になる。
- 裁判所は退学処分に特に慎重な配慮を求める一方で、大学の裁量そのものは広く認めている。
- 内定は成立した労働契約として扱われ、取消しには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる。
- 起訴猶予で終わった事案について内定取消しを有効とした最高裁の判断もあり、刑事の結論だけで決まる仕組みにはなっていない。
最後に一つだけ。早く動けば処分や取消しを避けられる、という性質のものではありません。決めるのは大学と会社です。こちらにできるのは、どの手続でどんな判断がされるのかを知ったうえで、必要な材料を落とさずに用意しておくことにとどまります。それでも、何がどこで決まるのかが分かっているだけで、選べることの幅は変わります。


