【男女トラブル】交際相手が自分の家族に借金をしている|別れる前に整理すること

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月時点の民法(2020年4月1日施行の債権法改正後の規定)、民事訴訟法、裁判所法にもとづいて書いています。2020年3月31日以前に結ばれた保証契約などには、改正前の規定が適用される場合があります。


「彼が私の父からまとまったお金を借りています。別れたいのですが、別れたら返してもらえなくなるのではと心配です」。交際相手との関係を終えようとしている方から、このようなご相談をいただくことがあります。反対に、交際相手の親から借りたお金について「別れたら一括で返せと言われるのではないか」と不安を抱えている方からのご相談もあります。

 交際相手の借金について解説した記事の多くは、相手が金融機関などから借りている場合を想定し、「肩代わりしない」「保証人にならない」といった心構えや、債務整理の方法を説明しています。その説明自体は誤りではありません。ただ、貸しているのが自分の親やきょうだいである場合には、お金の当事者は家族と交際相手であり、ご自身はそのどちらでもないのに間に立っている、という別の構造が生じます。別れ話を始める前にこの構造を整理しておかないと、別れた後に誰が誰に何を求めるのかが曖昧になりがちです。

 この記事では、交際相手が自分の家族からお金を借りている場合や、家族が交際相手の保証人になっている場合に、別れる前に何を確認し、どのような順序で整理するかを解説します。ご自身が交際相手に直接お金を貸した場合の回収や、ご自身が保証人になった場合の責任については別の記事で扱っていますので、本文中で適宜ご案内します。

まず「誰と誰の間の借金なのか」を確定させる

貸主は家族、借主は交際相手|交際の終了で借金は消えない

 お金の貸し借りは、貸した人と借りた人の間の約束です。親が交際相手にお金を渡し、交際相手が返すことを約束していれば、二人の間に金銭消費貸借契約が成立します(民法587条)。この契約は、ご自身と交際相手の交際関係とは別のものです。そのため、交際が終わっても借金がなくなるわけではなく、交際相手は引き続き親に対して返済する義務を負います。

 反対に、別れたことを理由として、それまでの約束よりも早く一括で返すよう求められるかといえば、原則としてそうではありません。返済期限や分割の約束があれば、それが基準になります。別れることは、借金があるかどうかにも、返済の条件にも、直接は影響しないという点を最初に押さえておくと、整理がしやすくなります。ただし、貸した時点で「交際が続くあいだは返済を待つ」「別れたら残りをまとめて返す」といった取り決めをしていた場合には、その内容が問題になります。

お金の受け渡しを自分が仲介していた場合

 注意が必要なのは、親から受け取ったお金をご自身が交際相手に手渡していた場合や、親の口座からいったんご自身の口座に移してから交際相手に送金していた場合です。このような流れでは、記録の上では「あなたが交際相手に貸した」ように見えることがあります。

 後で返済を求めるときに、貸主が親なのかご自身なのかがはっきりしないと、誰が請求するのかが定まらず、話が進みにくくなります。当時のLINEなどに「父が貸してくれるそうです」「母から預かったお金です」といったやり取りが残っていれば、貸主が誰かを示す材料になります。別れる前に、こうしたやり取りが残っているかを確認しておくとよいでしょう。

「私が責任を持つ」と親に伝えていた場合

 交際相手が親からお金を借りる際に、ご自身が「何かあったら私が返すから」と親に伝えていたケースもあります。保証契約は書面(またはその内容を記録した電磁的記録)でしなければ効力を生じないため(民法446条2項・3項)、口頭で伝えただけで保証人になるわけではありません。

 もっとも、言い方ややり取りの内容によっては、保証ではなく、ご自身も交際相手と並んで返済する約束(併存的債務引受。民法470条)をしたと評価される余地もあります。親子の間で実際に請求が問題になることは多くないかもしれませんが、当時どのような言葉を交わしたかは確認しておく価値があります。なお、仮にそのような約束があったとしても、交際相手の返済義務がなくなるわけではありません。別れた後に交際相手が「彼女が払うと言っていた」と持ち出しても、それだけで交際相手が支払いを免れることにはなりません。ご自身が交際相手の借金を肩代わりした場合や保証人になった場合については交際相手の借金を肩代わり・連帯保証したとき|返済義務の有無と、払ったお金の取り戻し方で詳しく解説しています。

「家族への借金」の中身を三つの型に分ける

 「交際相手が家族に借金をしている」といっても、実際の中身はさまざまです。別れた後に何が残るのかは型によって変わるため、まずはどれに当たるかを確認します。

型家族の立場別れた後に残るもの
家族が直接お金を渡した貸主(または贈与者)貸付と評価できれば、交際相手への返還請求
家族が交際相手の保証人になっている保証人交際相手が払わなければ、家族が支払う責任
家族名義の契約を交際相手が使っている契約の当事者(名義人)契約先への支払義務と、交際相手との精算


家族が直接お金を渡した場合|貸付か贈与か

 最初に確認するのは、そのお金が「貸したお金」なのか「あげたお金」なのかです。親が娘の交際相手を応援する気持ちで「生活の足しに」「引っ越し費用に」と渡した場合、返済の約束がはっきりしていないと、交際相手から「もらったものだ」と主張されることがあります。書面によらない贈与は、すでに渡し終えた部分については解除できません(民法550条)。

 貸付であることを示す材料としては、借用書のほか、「月々いくらずつ返す」「賞与で返す」といったやり取りや、実際に一部が返済された記録などが考えられます。結婚を前提に援助したお金であれば、別の観点からの検討も必要になります。この区別については別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いと結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかもあわせてご覧ください。なお、個人間の貸し借りでは、利息の約束がなければ利息を請求することはできません(民法589条1項)。

家族が保証人になっている場合|別れても保証は続く

 親が交際相手の賃貸住宅やローンの保証人になっているケースもあります。この場合、親が負う責任は、交際相手と家主・金融機関などとの契約から生じるもので、ご自身との交際とは関係なく続きます。賃貸借の保証のように継続的な債務を保証する個人根保証であっても、元本が確定するのは、保証人の財産への強制執行の申立て、保証人の破産、主たる債務者や保証人の死亡といった場合に限られており(民法465条の4第1項)、交際が終わったことはこれに当たりません。

 別れた後に交際相手が家賃を滞納すれば、親に請求が来る可能性があります。2020年4月1日以降に結ばれた個人根保証契約は、極度額(保証の上限額)を定めなければ効力を生じないため(民法465条の2第2項)、契約書を確認し、上限がいくらになっているかを把握しておきましょう。また、交際相手から頼まれて保証人になった場合、親は債権者に対して、支払いが滞っていないかや残額について情報の提供を求めることができます(民法458条の2)。

 別れる前の段階で、交際相手に保証人の変更や保証会社への切り替えを相談しておくことが、現実的な対応になります。保証人の変更には家主や金融機関の同意が必要なため、交際相手の協力が得られる時期に話を始めておくことが望ましいといえます。

家族名義の契約を交際相手が使っている場合

 携帯電話の回線や車のローン、クレジットカードなどを親の名義で契約し、実際には交際相手が使って支払いをしているケースです。この場合、契約先に対して支払義務を負うのは名義人である親です。交際相手が支払いをやめれば親が支払うことになり、その後に交際相手へ立て替えた分を求めるという順序になります。

 別れた後も名義が親のままだと、利用を止めることも含めて交際相手と連絡を取り続けなければなりません。別れる前に、名義変更や解約、残っている支払いの扱いを決めておくことが望ましいといえます。名義を貸した側の対応については、住まいの例ですが【男女トラブル】同棲していた部屋から相手が出ていかない|名義を貸した側にできることも参考になります。

別れ話の前に整理しておくこと

家族と一緒に「いつ・いくら・何のために」を一覧にする

 親から事情を聞き、次の項目を書き出しておくと、後の話し合いや請求の土台になります。

  • お金を渡した日付と金額、渡した方法(現金・振込)。
  • 返済の約束の有無と内容(期限、分割の回数や月額)。
  • これまでに返済された日付と金額、現在の残高。
  • 貸したことを示す資料(借用書、LINEなどのやり取り、振込記録、通帳の記載)。
  • 保証契約や名義契約がある場合は、契約書の写しと極度額・残っている支払いの額。


 この作業を通じて、親とご自身との間でも認識をそろえておくことが大切です。親は「貸した」と考えていたのに、ご自身は「援助だと思っていた」という食い違いが、別れた後になって表面化することがあります。

交際相手に残高を確認してもらう

 交際中は、交際相手も借りていること自体は認めているのが通常です。この時期に、残高と返済方法を書いた簡単な確認書を作り、交際相手に署名してもらえれば、貸付があったことと金額を示す有力な資料になります。借金があることを認める行為は「承認」にあたり、その時点から消滅時効があらためて進行します(民法152条1項)。

 ただし、別れを告げる直前に強く迫って署名させると、後で「脅されて書かされた」と争われるおそれがあります。強迫による意思表示は取り消すことができるため(民法96条1項)、署名は落ち着いた状況で、内容を読んで納得したうえでしてもらうことが前提です。確認書の作り方や効力については【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力で解説しています。

別れた後の窓口を誰にするか決めておく

 別れた後も返済が続く場合、誰が交際相手と連絡を取るのかを決めておく必要があります。貸主は親ですから、本来の請求者は親本人です。ご自身が窓口を続けると、別れた相手との連絡が途切れず、負担が長く続くこともあります。

 返済を親の口座への直接の振込に切り替える、連絡は親から書面やメールで行う、といった形にしておけば、ご自身が間に入る場面を減らせます。当事者同士での連絡が難しい場合には、弁護士が親の代理人として窓口になることも考えられます。別れ話そのものの進め方や記録の残し方については【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方も参考にしてください。

別れた後に返済が止まった場合の進め方

返済期限の約束があるかないかで出発点が変わる

 期限や分割の約束がある場合は、期限が過ぎた分から請求することができます。分割の約束で、支払いが滞ったときに残りをまとめて支払うという取り決め(期限の利益の喪失)がなければ、期限が来た分ごとに請求していくことになります。返済の時期を決めていなかった場合は、貸主は相当の期間を定めて返還を求める(催告する)ことができます(民法591条1項)。

 いずれの場合も、まずは親の名前で、金額と支払期限を明記した書面を送るのが一般的な出発点です。請求するのは貸主である親であり、ご自身の名前で請求するものではないという点も意識しておきましょう。

裁判所の手続を使う場合

 書面での請求に応じない場合には、裁判所の手続を検討します。相手が争わないと見込まれる場合には支払督促(民事訴訟法382条)、60万円以下の請求であれば原則として1回の期日で審理する少額訴訟(同法368条1項)、それを超える場合や争いが見込まれる場合は通常の訴訟という選択肢があります。通常の訴訟は、請求額が140万円以下であれば簡易裁判所、それを超えれば地方裁判所が担当します(裁判所法33条1項1号)。

 交際相手と連絡が取れなくなった場合の対応は【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法、元交際相手への貸金回収の進め方は恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?で詳しく扱っています。

時効にも目を配っておく

 貸したお金の返還を求める権利は、権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年で、時効により消滅します(民法166条1項)。親子の間では「急がなくてよい」と考えて請求を先送りしがちですが、別れた後に連絡が途絶え、気づけば長い期間が過ぎていたということもあります。前述の確認書や一部の返済があれば時効は新たに進行しますので、その記録を残しておくことが大切です。

整理を進めるうえで避けたいこと

返済と交際の継続を結び付けない

 「別れるなら今すぐ全額返して」と求めたり、反対に交際相手から「別れないなら返す」と言われて別れを先延ばしにしたりすると、お金の問題と関係の問題が絡み合い、どちらも整理しにくくなります。返済の条件は親と交際相手との約束で決まるものであり、交際を続けるかどうかとは切り離して考えることが、結果として話し合いを進めやすくします。

交際相手の家族や勤務先への請求には慎重に

 返済が滞ると、交際相手の実家や勤務先に連絡したくなる場面があるかもしれません。しかし、交際相手の親やきょうだいは、保証人になっていたり、自ら返済を引き受けたりしていない限り、返済する義務を負いません。義務のない人に支払いを求めたり、勤務先に借金の事実を伝えたりすると、かえって名誉やプライバシーの侵害を主張されるおそれがあります。正当な請求であっても、方法によっては問題が生じます。この線引きについては恐喝と借金の取り立ての境界|個人間の債権回収がアウトになる線で解説しています。

よくあるご質問

別れたら、親への借金はなくなるのですか。

 なくなりません。借金は親と交際相手の間の約束であり、交際の終了によって消えるものではありません。ただし、渡したお金が貸付ではなく贈与と評価される場合には、そもそも返還を求めることが難しくなります。どちらに当たるかは、渡したときのやり取りや、その後の返済の状況から判断されます。

交際相手の親に、代わりに返してもらうことはできますか。

 交際相手の親が保証人になっていたり、自ら返済を引き受けたりしていない限り、返済を求めることはできません。交際相手の家族が話し合いに出てきた場合の対応については【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方をご覧ください。

親の代わりに、私が交際相手と返済の話をしてもよいのですか。

 親から任されたうえで話をすること自体は可能です。その場合は、どこまでを任されているのか(残高の確認だけか、分割や減額に応じることまでか)を親との間で明確にしておきましょう。任された範囲を超えて合意しても、親が認めなければ、原則として親はその合意に拘束されません(民法113条1項)。また、別れた後も窓口を続けると相手との連絡が長く続くため、どの時点で親本人や代理人に引き継ぐかもあわせて考えておくとよいでしょう。

まとめ


  1. 交際相手の家族への借金は家族と交際相手の間の契約であり、交際が終わっても消えない(民法587条)。
  2. お金の受け渡しを自分が仲介した場合や「私が返す」と伝えていた場合は、誰が当事者なのかを先に確認する(民法446条2項・3項、470条)。
  3. 渡したお金が貸付か贈与かで結論が変わる。書面によらない贈与は、渡し終えた部分については解除できない(民法550条)。
  4. 家族が保証人になっている場合、別れても保証は続く。極度額と残額を確認し、保証人の変更を相談しておく(民法465条の2第2項、465条の4第1項、458条の2)。
  5. 別れる前に、家族と金額・日付・返済状況を一覧にし、交際相手に落ち着いた状況で残高を確認してもらう(民法152条1項、96条1項)。
  6. 返済が止まったら親の名前での書面請求から始め、必要に応じて支払督促・少額訴訟・通常訴訟を選ぶ(民法591条1項、民事訴訟法368条1項、382条)。
  7. 返済と交際の継続を結び付けず、返済義務のない第三者への請求は避ける。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。交際相手がご家族からお金を借りている、ご家族が交際相手の保証人になっているといった事情があり、別れる前に整理しておきたい点がある方は、早めにご相談ください。

交際相手のご家族からの借入れについて、返済を求められている側の方からのご相談もお受けしています。貸付か贈与か、返済の条件がどう決まっていたかを確認したうえで、話し合いの進め方を一緒に検討します。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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