ホスト・地下アイドル・推しへの高額課金|返金や取り消しはできるか
「配偶者の不倫相手に慰謝料を請求したところ、相手から『こちらこそ請求したい』という書面が返ってきた」というご相談があります。反対に、慰謝料を請求された側から「独身だと聞かされていたので、こちらからも請求したい」というお話を伺うこともあります。
こうした場面については、「基本的に支払う義務はない」と説明されることが多くあります。その説明自体が誤っているわけではありません。ただ、実際に届いた書面を前にすると、支払義務があるかどうかを判断する前に確かめておきたいことがいくつも残ります。その請求は誰に宛てられているのか、何を理由としているのか、こちらが起こした請求とどうつながっているのか、といった点です。
この記事では、慰謝料を請求した側が逆に請求を受ける場面を、宛先と根拠の違いという角度から整理します。個々の行為が名誉毀損にあたるかどうかの判断や、恐喝との境界、求償の計算方法などは、それぞれ別の記事で扱っています。
この記事で扱う範囲
先に、この記事で述べることと、別の記事に譲ることを整理しておきます。
- 扱うのは、慰謝料を請求した側が、相手方から金銭の支払いを求められた場面の見取り図です。
- 請求の進め方のうち、どこから別の責任が生じるのかという線引きは、勤務先や家族への連絡、公表の影響を扱った記事に譲ります。
- 既婚であることを知らなかったという主張がどこまで通るのかは、故意・過失を扱った記事で述べています。
- 求償の負担割合や、放棄の条項をどう置くかは、求償を扱った記事で述べています。
- 金額の目安、示談書の条項の作り方、訴訟手続の進み方はここでは扱いません。
「逆に請求された」には、性質の違う三つの流れが混ざっている
同じ「逆に請求された」という言葉で語られていても、その中身は一つではありません。出てくる場所も、向けられている相手も、こちらの請求との関係も異なります。
三つの流れ
整理すると、次の三つに分かれます。
| どこから出てくるか | 向けられている相手 | こちらの請求との関係 |
|---|---|---|
| 請求の進め方そのもの | 請求した本人 | 別々の問題として並び立つ |
| 関係が始まった経緯 | 不貞をしたとされる配偶者 | こちらの請求そのものは減らない |
| 支払いが行われた後の分担 | 不貞をしたとされる配偶者 | 受け取った額の手元への残り方が変わる |
このうち一つ目だけが、請求した本人に向けられたものです。二つ目と三つ目は、相手方と配偶者との間の話であり、請求した側が当然に支払う立場に立つわけではありません。「逆に請求された」と感じた場面の多くは、実際には自分ではなく配偶者に向けられた話が混ざっています。
どれであっても、こちらの請求が自動的に消えるわけではない
三つのいずれについても、相手方から請求が向けられたことによって、こちらの請求が打ち消されるという関係にはありません。二つの責任は、それぞれの理由に基づいて別々に判断されます。話し合いの中で全体をまとめて解決することはありますが、それは合意によるものであって、法律上当然にそうなるという意味ではありません。
最初に確かめるのは、その請求が誰に宛てられているか
届いた書面を読むとき、金額や表現の強さに目が向きがちですが、先に見ておきたいのは宛名です。
宛名から分かること
自分の氏名が宛名になっているのであれば、請求した側自身の行為が理由とされている可能性が高いといえます。配偶者の氏名が宛名になっているのであれば、相手方と配偶者との間の話であり、こちらが支払う立場に立つとは限りません。同じ封筒が自宅に届くため一体のものに見えますが、法律上は別々の話です。
自分あてでも、理由が書かれていないことがある
自分あての書面であっても、「不当な請求を受けたので慰謝料を請求する」とだけ書かれ、どの行為を問題としているのかが具体的に書かれていないことがあります。請求を受けたこと自体は、それだけで責任の理由にはなりません。何を問題としているのかが読み取れない場合は、返事の前にその点を確かめることになります。
請求の進め方が、別の責任として評価される場合
一つ目の流れです。請求する権利があることと、その求め方が適切であることは別に判断されます。
不貞があったことは、進め方を正当化する理由にはならない
不貞の事実があり、慰謝料を請求できる立場にあったとしても、その過程で行った行為が民法709条や710条にいう不法行為と評価されれば、その部分について別に責任が生じることがあります。よく問題になるのは、伝えた相手の範囲、伝え方、求めた内容の三つです。具体的にどこで線が動くのかは、勤務先や家族への連絡、公表を扱った記事で述べています。
二つの責任は差し引き合わない
こちらの請求が認められる事案であっても、進め方について生じた責任がそれによって消えるわけではありません。逆に、進め方に問題があったとしても、不貞についての請求権が失われるわけでもありません。二つは別々に立ち、それぞれの理由と範囲で判断されます。交渉の場では両方を合わせて一つの金額にまとめることもありますが、その場合も、何と何をまとめたのかを書面に残しておく必要があります。
もともと相手の側にあった請求は、配偶者に向かう
二つ目の流れです。相手方が「独身だと聞いていた」「結婚するつもりだと言われていた」と述べて金銭を求める場合、それは関係が始まった経緯についての主張です。
向けられている相手は配偶者
このような主張は、その関係の当事者である配偶者に向けられるものです。請求した側が、配偶者と並んでこれを負担する立場に当然に立つわけではありません。この点は、相手方の書面でも混同されていることがあります。どこまでの説明があれば認められるのかは、故意・過失を扱った記事で述べています。
支払義務の所在と、家計から出ていく金額は別の話
もっとも、配偶者と婚姻関係を続けていく場合には、配偶者が支払う金額が結果として同じ家計から出ていくことになります。自分に支払義務がないことと、家計から出ていく金額が変わらないことは、同じ意味ではありません。請求を続けるかどうかを考えるときは、法律上の支払義務の所在と、最終的に手元に残る金額の両方を見ておくことになります。
支払われた後に、配偶者へ向かう分担の精算
三つ目の流れです。相手方がこちらに慰謝料を支払った後、その負担を配偶者との間で分け直すよう求めることがあります。これが求償と呼ばれるものです。
新しい請求ではなく、支払われたものの分け直し
求償は、こちらの請求とは別に生じた損害についての請求ではありません。いったん支払われた金額について、二人の間でどのように分担するかを精算するものです。三つの流れのうち、こちらの請求が実現したことによって初めて動き出す点が、他の二つと違います。
配偶者と婚姻関係を続ける場合に影響が出やすい
配偶者と離婚しない場合、求償に応じた分は同じ家計から出ていくことになります。示談の段階で扱いを決めておくかどうかで結果が変わるため、負担割合の考え方や条項の置き方は、求償を扱った記事をご覧ください。
「請求する」と言われた段階と、請求として立っている段階は違う
同じ内容であっても、それがどの段階で示されているかによって、こちらがすべきことは変わります。
| どの段階か | そこで起きていること | 考えておきたいこと |
|---|---|---|
| 話し合いの中で口頭で告げられた | 主張として示されている段階 | 返事の前に、何を理由としているのかを確かめる |
| 書面で金額と期限を示された | 請求として形になった段階 | 宛名と、理由として書かれた事実を確認する |
| 訴訟の中で立てられた | 同じ手続の中で審理される段階 | 裁判所が定める期限に沿った対応が必要になる |
口頭で告げられた段階では、支払いを求めることそのものよりも、こちらの請求額を引き下げる材料として持ち出されていることがあります。その場合、返す言葉によっては、こちらの請求の条件についてまで答えたと受け取られることがあります。話が二つ並んでいるときは、どちらについての返事なのかを分けて伝えておくと、後の食い違いを避けやすくなります。訴訟の中で相手方から反対向きの請求が立てられる場合の手続については、別の記事で述べています。
どの流れでも共通して確かめておきたいこと
三つのどれにあたるかを見分けるために、書面の中で見ておく点を挙げます。
- 宛名が誰になっているか。
- 支払いを求める理由として、どの出来事が書かれているか。
- その出来事がいつのことか。
- 金額と期限が、どのような書き方で示されているか。
- こちらからの請求について、何か書かれているか。
- 差出人が本人か、代理人か。
このうち、理由として書かれた出来事がいつのことかは見落とされやすい点です。関係が始まった経緯についての主張であれば二つ目の流れ、請求を始めた後の出来事についての主張であれば一つ目の流れにあたります。同じ書面の中に両方が混ざっていることもあります。
逆の請求として述べられたことは、こちらの請求への反論でもある
見落とされやすいのが、相手方が述べている事情が、二つの場所で同時に働くという点です。
一つの事実が二か所に置かれる
「独身だと聞いていた」という説明は、相手方から配偶者への請求の理由であると同時に、こちらの請求に対して、既婚であることを知らなかったという反論としても述べられています。「請求の過程で職場に伝えられた」という説明も、別の責任を求める理由であると同時に、支払うべき金額を考えるうえでの事情としても持ち出されます。逆の請求への返事を考えるときは、その返事がこちらの請求にどう跳ね返るかを合わせて見ておくことになります。
記録の残り方に偏りがある
関係が始まった当時のやり取りは、相手方の手元にあることが多く、こちらからは確かめにくいのが通常です。反対に、請求を始めた後のやり取りは双方に記録が残ります。どちらの流れについての話なのかによって、確かめられる範囲が違うという前提で読むことになります。
慰謝料を請求された側から見た場合
請求を受けた立場で、こちらからも請求したいと考える場面についても触れておきます。
- 支払いを避けたいという理由だけで請求を持ち出すと、理由の書かれていない要求と受け取られ、話し合いが進みにくくなります。
- 関係の経緯についての主張であれば、向ける相手は交際していた相手方の配偶者ではなく、関係の当事者です。
- 請求の進め方について述べる場合は、どの時点のどの行為を指しているのかを具体的にしておくことになります。
- 支払いを拒む材料として告げることと、請求として立てることは別の作業です。前者のつもりで述べた内容が、後で理由を問われることがあります。
よくあるご質問
相手から「逆に訴える」と言われました。こちらの請求は取り下げたほうがよいのでしょうか
そう告げられたことだけで、こちらの請求の当否が変わるわけではありません。もっとも、内容を確かめないまま進めることも、取り下げることも、判断の材料が足りない状態での選択になります。まずは何を理由としているのかを確かめることが先になります。請求を途中でやめる場合の終わり方については、別の記事で述べています。
相手からの請求と、こちらの請求を差し引くことはできますか
差し引きは、同じ当事者どうしが互いに支払う立場にある場合の仕組みです。相手方の請求が配偶者に向けられたものであれば、こちらの請求とは当事者の組合せが違うため、当然に差し引かれるものではありません。話し合いの中で、互いに請求しないという形でまとめることはありますが、それは相手方の同意があって成り立つものです。双方が既婚である場合の整理は、別の記事で述べています。
示談が終わった後に、逆の請求を受けました
示談書に清算条項が置かれている場合、その条項が誰と誰の間の、どの範囲の問題について定めたものかによって結論が変わります。三者の間で取り交わしたのか、二者の間だけなのかによっても違いが出ます。清算条項の範囲については、示談書の条項を扱った記事をご覧ください。
まとめ
- 「逆に請求された」と感じる場面には、請求の進め方に対するもの、関係が始まった経緯に対するもの、支払われた後の分担の精算という、性質の違う三つの流れが混ざっています。
- 最初に確かめるのは金額ではなく、その請求が誰に宛てられているかです。
- 請求する権利があることと、その求め方が適切であることは別に判断され、民法709条や710条にいう不法行為と評価されれば、その部分について別に責任が生じることがあります。
- 二つの責任は差し引き合うものではなく、それぞれの理由と範囲で判断されます。
- 関係が始まった経緯についての主張は、関係の当事者である配偶者に向けられるもので、請求した側が当然に負担する立場に立つわけではありません。
- ただし婚姻関係を続ける場合、配偶者が支払う金額や求償に応じた金額は同じ家計から出ていくため、支払義務の所在と手元に残る金額は分けて考えることになります。
- 相手方が述べる事情は、逆の請求の理由であると同時に、こちらの請求への反論としても働くことが多く、返事の内容は両方への影響を見て決めることになります。
不貞慰謝料のご相談をお考えの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。慰謝料を請求したところ相手方から反対に金銭を求められた方からは、届いた書面をどう読めばよいのか、返事をどこまで書けばよいのかというご相談を多くいただきます。
請求する側の方からは、宛先と根拠の見分け方や、こちらの請求への影響を踏まえた進め方について、請求を受けた側の方からは、述べようとしている事情がどの場面で働くのかについて、状況を伺ったうえでご説明しています。書面が届いて対応を迷われている段階でも、そのままお持ちいただければ内容を確認いたします。


