【男女トラブル】恋人の車の頭金を払っていた場合、返してもらえる?
「交際中に貸したお金を、別れた後も返してもらえない。本人は連絡に応じないが、相手の親なら話が通じそうなので、親に請求できないだろうか」。元恋人への貸金をめぐっては、このようなご相談が少なくありません。弁護士ドットコムの法律相談でも、元交際相手の親に事情を説明して間に入ってもらい、いったんは親を通じて返済を受けたものの、数か月で再び滞ってしまったという相談が寄せられています。
結論からいえば、親が保証人になっているなどの事情がない限り、借りた本人ではない親に返済を求める法的な根拠は原則としてありません。ただし、親に請求できる場面がまったくないわけではなく、親に事情を伝えて協力をお願いすること自体が直ちに問題になるわけでもありません。この記事では、親に請求できる場面とできない場面を分けたうえで、親との関わり方の注意点と、借りた本人への請求を進める方法を解説します。
本記事は2026年10月時点の法令に基づいて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
原則として、親に返済の義務はありません
お金の貸し借りは、貸した人と借りた人との間の契約です(民法587条)。返済の義務を負うのは契約の当事者である借主本人であり、親子であっても、親が子の借金を当然に引き受けることにはなりません。
これは元恋人が成人している場合に限った話ではありません。相手が未成年のときでも、親が子の借金を自動的に返す義務を負うわけではありません。かえって、未成年者が親の同意を得ずに結んだ契約は取り消される可能性があるため(民法5条)、返済を求めにくくなる場面もあります。
また、「親には子を養う義務があるのだから」と考える方もいますが、扶養義務は親子の間の関係です。第三者である貸主が、扶養義務を根拠に親へ返済を求めることはできません。
親に請求できる可能性がある4つの場面
一方で、次のような事情があれば、親に対して支払いを求められる可能性があります。
親が保証人・連帯保証人になっている場合
お金を貸すときに、親が保証人や連帯保証人として署名していれば、親に請求できます。ただし、保証契約は書面(電磁的記録を含みます)でしなければ効力を生じません(民法446条2項・3項)。電話で「何かあれば親の私が責任を持ちます」と言われただけでは、保証人として請求するのは難しいと考えられます。
保証人と連帯保証人では責任の重さが異なります。単なる保証人であれば、「まず本人に請求してほしい」(催告の抗弁権)、「本人に財産があるので先にそちらから回収してほしい」(検索の抗弁権)と主張できますが、連帯保証人にはこれらの権利がありません(民法452条~454条)。
親が「代わりに払う」と約束した場合
別れた後の話し合いの場で、親が「息子の借金は私が払います」と申し出ることがあります。このような約束が、親自身も返済義務を負う合意(債務引受。民法470条など)と評価されれば、親に請求できる余地があります。
もっとも、口頭のやり取りだけでは、親が自分で支払う義務を負うつもりだったのか、「本人に返させます」という意味にすぎなかったのかが争いになりやすいのが実情です。親が支払いを申し出た場合は、金額・支払方法・期限を書面にして、署名をもらっておくことが大切です。
実際にお金を受け取ったのが親だった場合
「実家の生活費が足りない」「親の入院費が必要」と頼まれ、親の口座に直接振り込んだようなケースでは、そもそも誰が借主なのかが問題になります。契約の当事者は、名義だけでなく、誰が誰に貸してほしいと頼み、誰がお金を受け取って使ったかといった経緯から判断されます。親自身が借りる意思で受け取っていたといえれば、親に返済を求めることが考えられます。
元恋人が亡くなり、親が相続した場合
借主本人が亡くなると、返済義務は相続人に引き継がれます。元恋人に配偶者や子がいなければ、親が相続人となります(民法889条1項1号)。この場合、親は相続人として返済義務を負いますが、相続放棄をすれば引き継ぎません(民法939条)。相続放棄は、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所への申述によって行います(民法915条1項・938条)。
ここまでを整理すると、次のとおりです。
| 場面 | 親への請求 | 確認すること |
|---|---|---|
| 親が保証人として署名している | できる | 保証の書面があるか |
| 親が「代わりに払う」と約束した | できる余地がある | 約束の内容と、書面の有無 |
| 親自身が借主といえる | できる余地がある | 誰が頼み、誰が受け取り、誰が使ったか |
| 元恋人が亡くなり、親が相続した | できる(相続放棄をした場合は不可) | 相続放棄の有無 |
| いずれにも当たらない | 原則としてできない | 親の協力はあくまで任意 |
親に事情を伝えること自体は問題になるのか
親に支払義務がない場合でも、本人と連絡が取れないときに親へ事情を伝え、本人に返済を促してもらうよう頼むこと自体が、直ちに違法となるわけではありません。親が自分の判断で代わりに支払うことも、法律上認められています(第三者弁済。民法474条)。
ただし、伝え方には注意が必要です。次のような関わり方は、親の反発を招いて話し合いが進まなくなるだけでなく、程度によっては脅迫罪・強要罪・恐喝罪(刑法222条・223条・249条)や名誉毀損、損害賠償の問題に発展するおそれがあります。
- 支払義務がない親に対し、親が払うべきだと繰り返し迫ること。
- 親の自宅や勤務先に何度も押しかけること。
- 「払わないなら親戚や職場に知らせる」と告げること。
- 深夜や早朝に何度も電話をかけること。
親が協力してくれる場合も、誰がいくらをいつまでに払うのか、その支払いで貸し借りがすべて清算されるのかを合意書にしておくと、後になって話が蒸し返されることを防げます。なお、親が一部を立て替えてくれたからといって、親が残りの返済義務まで負うことになるわけではありません。
本人への請求を固めることが、回収への近道です
親に頼る前に、あるいは並行して、借主本人への請求の土台を整えておくことが大切です。まずは、お金を渡したことと、それが「あげた」のではなく「貸した」ものであることを示す記録を集めます。
- 借用書、念書、返済の約束を書いたメモ。
- 振込の記録や通帳の記載、ATMの利用明細。
- 「必ず返す」「来月返す」などのLINEやメールのやり取り。
- 一部が返済されたことがわかる記録。
借用書がない場合の考え方は、恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?で詳しく解説しています。
記録がそろったら、本人に対して書面で返済を求め、応じてもらえなければ、支払督促や少額訴訟(60万円以下の金銭の請求。民事訴訟法368条1項)、通常の訴訟といった裁判所の手続を検討します。判決などを得たうえで、本人の預金や給与を差し押さえることも考えられます。
また、個人間の貸金は、返済を求められることを知った時から5年で時効にかかるおそれがあります(民法166条1項。2020年3月31日以前の貸付けは原則として10年)。別れてから時間が経っている場合は、早めに確認しておきましょう。
弁護士に相談するメリット
親に請求できるかどうかは、保証の書面があるか、親がどのような言葉で何を約束したか、お金の流れがどうだったかによって変わります。弁護士に相談すれば、手元の資料をもとに、親に請求できる余地があるのか、本人への請求に絞るべきかを整理できます。
また、弁護士が代理人として本人や親とやり取りすることで、感情的な言い合いになったり、意図せず相手に圧力をかけてしまったりする事態を避けながら交渉を進められます。親が協力を申し出た場合の合意書の作成や、裁判所の手続への移行まで、一貫して任せることができます。
よくあるご質問
相手の親に内容証明郵便を送ってもよいですか?
親が保証人でない場合、親は返済を求める相手ではないため、親に宛てて請求の書面を送っても、法的な効果はほとんどありません。かえって圧力をかけていると受け取られるおそれもあるため、親への連絡は事情の説明と協力のお願いにとどめるのが無難です。請求の書面は、借主本人に宛てて送ります。
親が「本人に払わせます」と言ってくれたのに、返済が止まりました。親に請求できますか?
「本人に払わせます」という言葉は、親自身が支払うという約束とは評価されにくいと考えられます。この場合は、借主本人への請求を進めることになります。親とのやり取りの記録は、本人が借りたことを裏付ける資料として役立つことがあります。
貸したお金が元恋人の実家のために使われていました。親に請求できますか?
お金の使い道が親のためだったとしても、それだけで親が借主になるわけではありません。ただ、親が借りることを頼んでいた、親が直接受け取っていたといった事情があれば、親に請求できる可能性があります。経緯がわかるやり取りを残しておきましょう。
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元恋人への貸金トラブルは弁護士にご相談ください
元恋人に貸したお金を相手の親に請求できる場面は限られていますが、本人への請求の進め方や記録の整え方によって、回収の見通しが変わることがあります。親にどこまで関わってもらってよいか迷っている段階でも、まずは状況を整理することから始めてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


