【風俗トラブル】その場で知人に電話して相談することは許される?
本記事は、2026年11月時点の刑法、民法、ストーカー行為等の規制等に関する法律に基づいて記載しています。文例は一般的な考え方を示すもので、実際に適した文面は、相手が誰か、何を求められているか、これまでのやり取りの内容によって変わります。
「お店で知り合った女性と個人的にLINEを交換していたところ、『奥さんに全部話す。黙っていてほしいならお金を用意して』とメッセージが届いた。何と返せばよいのか分からない」。「店のスタッフを名乗る人から『キャストと連絡先を交換したのは規約違反だ。今日中に返事をしろ』と連絡が来て、返信を急かされている」。どちらも、キャストとの個人的なやり取りをきっかけに脅しを受けた方から寄せられるご相談です。
インターネット上には「相手にしない」「すぐに弁護士へ」という説明が多く見られます。それ自体は誤りではありません。ただ、すでに返事を求められていて、何か一言返さないと相手の行動がエスカレートしそうな場面で、どのような文面であれば後の交渉に響かないのか、どのような言葉を避けるべきなのかまでは、あまり書かれていません。
この記事では、キャストとの個人的なやり取りをめぐって脅しを受けたときに、相手へ返信する場合の文例と、避けたい文面を理由とともに整理します。キャスト本人からの請求に応じる義務があるかどうかは【風俗トラブル】キャスト本人から個人のLINEで連絡が来た|店を通さない請求の扱いで、恐喝にあたる場面の考え方は「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で解説しています。
返信する前に整理しておきたい3つのこと
文面を考える前に、相手と要求の中身を確認しておくと、送るべき内容がはっきりします。
連絡してきたのは誰か
連絡の相手は、大きく分けてキャスト本人、店の担当者、キャストの交際相手や知人を名乗る人物の3通りです。キャスト本人であれば個人間の問題、店であれば店の規約に基づく請求という形をとることが多く、第三者を名乗る人物の場合は、その人物にそもそも交渉する立場があるのかから確かめる必要があります。第三者からの連絡については【風俗トラブル】キャストの交際相手・知人を名乗る男性から連絡が来たもあわせてご覧ください。
何を求められているのか
求められている内容は、金銭の支払い、直接会うこと、連絡を続けること、謝罪などさまざまです。「家族に話す」「職場に連絡する」という言葉は、それらの要求を通すための材料として持ち出されていることが多いため、脅しの言葉そのものではなく、その裏にある要求が何かを分けて読み取ることが大切です。
すぐに返信しなければならないのか
相手が「今日中に」「1時間以内に」と期限を切ってきても、その期限に法的な意味があるわけではありません。一方で、まったく反応しないことで相手が家族や勤務先に連絡する行動に移るおそれがある場合には、要求には答えずに、受け取ったことだけを短く伝えるという選択もあります。返信は相手の要求に答えるためのものではなく、自分の立場を崩さずに考える時間と記録を確保するためのものと位置づけると、文面を選びやすくなります。
送ってよい文面の例
ここで挙げる文例は、いずれも「短く」「事実や支払いを約束しない」「感情的な言葉を入れない」ことを共通の考え方にしています。
受け取ったことだけを伝える
最初の返信で迷ったときは、要求への回答を保留し、確認する意思だけを伝えます。
文例1(受け取ったことだけを伝える)
ご連絡は拝見しました。内容を確認したうえで、改めてこちらからご連絡します。
「確認したうえで」と書くことで、相手の言い分を認めたわけではないことを示せます。返信の期日を自分から約束する必要はありません。
請求の中身と根拠を示すよう求める
金銭を求められている場合は、金額と、その根拠を示すよう求める文面が考えられます。
文例2(請求の中身と根拠を確認する)
ご請求の金額と、その根拠(どのような事実について、どのような取り決めに基づくものか)を書面でお示しください。内容を確認したうえで回答します。
店の規約に「連絡先の交換は禁止、違反した場合は〇〇万円」といった定めがあるとしても、その説明を受けて合意したといえるのか、金額が実際の損害と比べて過大でないかは、別に検討する余地があります。違約金の定めは損害賠償額の予定と推定され(民法420条3項)、内容が著しく不相当であれば公序良俗に反するとして効力が争われることもあります(同法90条)。根拠を求めるのは、こうした検討の材料をそろえるためです。
家族や勤務先への連絡を控えるよう求める
家族や勤務先への連絡をほのめかされている場合は、連絡先を自分に限るよう求めます。
文例3(家族や勤務先への連絡を控えるよう求める)
本件について、私の家族や勤務先へのご連絡はお控えください。ご連絡は私宛てにお願いします。
お金を払わなければ家族に知らせると告げて支払いを求める行為は、内容によっては恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(同法222条)が問題になり得ます。ただ、返信の中で罪名を挙げて相手を責めると、話し合いがこじれる原因にもなります。文面では、控えてほしいことを淡々と伝えるにとどめるのが無難です。
直接会うことを断る
「会って話そう」「店に来い」と求められた場合は、対面での話し合いを断り、やり取りの方法を指定します。
文例4(直接会うことを断る)
直接お会いしてのお話し合いは控えさせていただきます。やり取りは、このメッセージか書面でお願いします。
対面の場では、その場で書面への署名や支払いを求められることがあり、後から内容を確かめることも難しくなります。文字のやり取りに限ることで、記録も残ります。
キャスト本人に、個人的な連絡を終える意思を伝える
相手がキャスト本人の場合、こちらからの連絡がこれ以上続くことを相手が嫌がっている可能性もあります。断られた後も連絡を重ねると、つきまとい等(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条)にあたると主張されるおそれがあるため、連絡を終える意思をはっきり伝えておく文面も有効です。
文例5(個人的な連絡を終える意思を伝える)
今後、私から個人的にご連絡することはありません。本件について必要なご連絡があれば、このメッセージでお願いします。
連絡先を渡された後のやり取りで起きやすいことは、【風俗トラブル】キャストから個人的な連絡先を渡された|応じた後に起きやすいことで解説しています。
弁護士に依頼した後に送る
弁護士に依頼した場合には、窓口が代理人に移ったことを伝えます。
文例6(代理人に窓口が移ったことを伝える)
本件は弁護士に依頼しました。今後のご連絡は、代理人の弁護士からいたします。私への直接のご連絡はお控えください。
この文面は、実際に依頼した後に限って使ってください。依頼していないのに弁護士の名前を出すと、かえって相手の不信を招き、話し合いが難しくなります。どの文例も、相手の主張を認める言葉、支払いを約束する言葉、相手を責める言葉を入れないという点で共通しています。
避けたい文面と、その理由
焦っているときほど、次のような言葉を書いてしまいがちです。
| 避けたい文面の例 | 避けたい理由 |
|---|---|
| 払いますので、家族には言わないでください | 支払う意思を示したと受け取られ、金額の交渉で不利になりやすい |
| 全部私が悪いです。規約違反をしました | 事実関係を確かめる前に、相手の主張をまとめて認めた記録になる |
| いくら払えば終わりにしてもらえますか | 金額を相手に委ねることになり、高い金額を示されやすい |
| 〇日までに振り込みます | 支払いの約束として扱われ、後から見直すことが難しくなる |
| そっちの店も違法だろう。警察に行くぞ | 言い返しの言葉が、こちらからの脅しと受け取られることがある |
| 今から会いに行きます | 対面の場で署名や支払いを求められる危険がある |
| (本名・住所・勤務先などを書き添える) | 相手が持っていなかった情報を自分から渡すことになる |
支払いや認める言葉を先に出さない
脅しを止めたい一心で「払います」「私が悪いです」と書くと、そのメッセージが後に、支払いの約束や事実を認めた証拠として持ち出されることがあります。謝罪の気持ちがあるとしても、何について謝るのかを整理する前に、包括的に非を認める言葉を書くことは避けたほうがよいでしょう。
言い返しや脅し返しが招くこと
相手の言い分に納得できず、強い言葉で言い返したくなることもあります。しかし、「警察に行くぞ」「こちらも訴える」といった言葉は、相手にとっては新たな材料になり、こちらからの脅しだと主張されるきっかけにもなります。言い返すかわりに、文例のように要求事項だけを短く書くほうが、結果として自分を守ることにつながります。
新しい個人情報を書かない
相手がどこまで自分の情報を把握しているかは、多くの場合分かりません。弁解のつもりで勤務先や家族の事情を書き添えると、相手の手元にない情報を渡してしまうことになります。配偶者宛てに郵便を送ると言われている場合の備えは、【風俗トラブル】配偶者宛てに郵便を送ると言われた|家族に届く前にできることをご覧ください。避けたい文面に共通するのは、相手に交渉の材料や主導権を渡してしまうという点です。
送る前に確認しておきたいこと
- 相手から届いたメッセージを、日時と相手の表示名が分かる形で画面保存しているか。
- 送ろうとしている文面に、支払いの約束や、事実をまとめて認める言葉が入っていないか。
- 相手が把握していない本名・住所・勤務先・家族の情報を書いていないか。
- 感情的な言葉や、相手を責める言葉が入っていないか。
- 同じ内容のメッセージを何通も続けて送ろうとしていないか。
- 送った後に相手から返ってくる反応を想定し、次にどうするかを決めているか。
やり取りの記録は、後に弁護士へ相談するときにも、警察へ相談するときにも重要な資料になります。相手のメッセージを削除したり、やり取りの画面ごと消したりしないようにしてください。記録の残し方については、録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方も参考になります。
窓口を弁護士に移すという選択
文例を参考に自分で返信することはできますが、やり取りが続くほど、判断を迫られる場面は増えていきます。
自分で返信を続けることの難しさ
相手は、返信の内容を見て次の要求を組み立ててきます。請求額が連絡のたびに変わる、期限を短く区切られる、家族や勤務先の名前を具体的に出されるといった展開になると、一つひとつの返信に慎重な判断が必要になり、精神的な負担も大きくなります。相手の要求が具体的になってきた段階や、家族・勤務先の情報を相手が把握していると分かった段階は、窓口を移すことを検討する目安になります。
弁護士が窓口になった後の流れ
弁護士に依頼すると、弁護士から相手に受任したことを通知し、以後の連絡は代理人を通すよう求めます。そのうえで、請求の根拠を確認し、応じる必要があるか、応じるとしてどの範囲かを相手と協議します。家族や勤務先に知られないように進めるための考え方は、家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説で解説しています。食事に行っただけで家族と勤務先に知らせると告げられた方が、支払いなく解決に至った事例として、【解決事例】食事に行っただけで「妻と職場にバラす」と脅され約40万円を請求された事案を、支払いゼロで解決もご覧ください。
よくあるご質問
既読をつけたまま返信しないと、不利になりますか?
既読のまま返信しないこと自体で、法的に不利な立場になるわけではありません。ただ、相手が反応のないことを理由に家族や勤務先への連絡に動くおそれがある場合は、文例1のように受け取ったことだけを伝えておく方法もあります。返信するかどうかは、相手の要求の内容や、相手が把握している情報の範囲を踏まえて判断することになります。
相手から「この文面をそのまま送り返せ」と言われたら、どうすればよいですか?
相手が用意した謝罪文や誓約文をそのまま送るよう求められることがあります。その中に、事実を認める言葉や支払いを約束する言葉が含まれていれば、後に証拠として使われる可能性があります。内容を確認できるまでは送らず、文例1や文例2のように、確認したうえで回答すると伝えるにとどめるのが無難です。
相手のアカウントをブロックしてもよいですか?
ブロックすること自体は問題ありませんが、その前にやり取りの記録を保存しておくことが大切です。また、ブロックによって連絡手段がなくなると、相手が家族や勤務先に連絡するという形で行動に出ることも考えられます。ブロックするときは、文例3や文例5のように連絡の窓口や意思を伝えてからにするか、弁護士に窓口を移したうえで行うと、混乱を抑えやすくなります。
まとめ
- 返信の前に、連絡してきたのが誰か、何を求められているのかを整理する。
- 返信は要求に答えるためではなく、立場を崩さずに時間と記録を確保するためと位置づける。
- 送ってよい文面は、短く、事実や支払いを約束せず、感情的な言葉を入れないことが共通点である。
- 店の規約に基づく違約金であっても、合意の有無や金額の相当性は別に検討する余地がある(民法420条3項、同法90条)。
- 金銭を求めて家族への連絡をほのめかす行為は、内容によっては恐喝罪や脅迫罪が問題になり得る(刑法249条、同法222条)。
- キャスト本人への連絡を重ねると、つきまとい等と主張されるおそれがあるため、連絡を終える意思を伝えることも検討する(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条)。
- 要求が具体的になった段階や、家族・勤務先の情報を相手が把握していると分かった段階では、窓口を弁護士に移すことを検討する。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。キャストとの個人的なやり取りをきっかけに金銭を求められたり、家族や勤務先への連絡をほのめかされたりしている方は、相手への返信を送る前の段階でもご相談いただけます。
すでにやり取りを始めてしまい、どこまで返信してよいか分からなくなっている方も、届いたメッセージの記録をお持ちいただければ、これまでの経緯を踏まえて今後の進め方をご説明します。


