【風俗トラブル・女性用風俗】女性客の身バレ|職場・家族に伝わる経路と遮断の順序

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

「利用したことを職場に言う、と店から言われている」「トラブルになってしまい、このまま家族に伝わるのではないかと眠れない」。女性用風俗をめぐるご相談では、支払いの当否そのものよりも、この不安のほうが先に語られることが少なくありません。一方で、何がどこまで伝わることを心配しているのかは、ご本人の中でも整理されていないことがよくあります。

 インターネット上には、身バレという言葉を扱った記事が数多くあります。ただ、その多くは風俗で働く女性が素性を知られないための対策か、男性客が配偶者や交際相手に知られる場面を扱ったものです。書かれている内容が誤っているわけではありませんが、利用する側が女性である場合を正面から扱った法律の解説はほとんど見当たりません。立場が違えば、情報が動く経路も、打てる手の順序も変わります。

 この記事では、性的サービスを利用した女性が、その事実やトラブルが職場・家族に伝わることを心配している場面に絞り、情報が伝わる経路と、遮断に手をつける順序を整理します。請求への応じ方や金額の妥当性、削除請求の進め方は別の記事で扱っていますので、ここでは経路の話に限定します。

この記事で扱うこと・扱わないこと

 はじめに範囲を示します。読み進める前に、ご自身の状況がどこに当たるかを確かめてみてください。

  • 扱うこと。職場や家族に情報が伝わる経路の棚卸しと、遮断に手をつける順序。
  • 扱うこと。書面や裁判になった場合に、宛先をどこまで動かせるか。
  • 扱わないこと。店やセラピストからの請求に応じるべきかどうかの判断。
  • 扱わないこと。インターネット上に書き込まれた場合の削除や発信者の特定の手続。
  • 扱わないこと。すでに逮捕や呼び出しがある場合の見通し。個別のご相談をおすすめします。


 なお、この記事は利用したこと自体を責める趣旨ではありません。同時に、相手方に実際の被害が生じている場合には、経路の設計より先に、その被害に向き合うことが解決の近道になります。経路を把握することは、事実をなかったことにするためではなく、これから何が争いの材料になるのかを知るためのものです

「知られたくない」を三つに分けて考える

 同じ「知られたくない」でも、中身は三つに分かれます。どれを心配しているのかによって、打てる手がまったく違います。

一つ目は、利用したという事実そのもの

 これは、すでに店やセラピストが知っている情報です。契約や記録が存在する以上、後から存在しなかったことにはできません。ここを消そうとする行動が、後で最も重い負担になります。

二つ目は、トラブルになっているという事実

 請求を受けている、言い争いになっている、といった状況です。ここは、誰との間でどうやり取りするかによって、外に出る量が大きく変わります。遮断の実務が最も効くのがこの層です。

三つ目は、手続が動いているという事実

 通知書のやり取り、裁判所からの書類、捜査機関からの連絡です。制約は大きいものの、宛先や窓口の設計によって動かせる余地が残っています。

 つまり、一つ目は動かせず、二つ目は大きく動かせ、三つ目は部分的に動かせるという順になります。ご相談の場で「すべて知られないようにしたい」と伺うことがありますが、法律は配偶者や勤務先に知られない権利を保障しているわけではありません。できるのは、伝わる経路と時期を選べる幅を広げることです。

職場や家族に伝わる経路を棚卸しする

 まず、どこから情報が出ていくのかを一覧にします。ご自身に当てはまる行だけを見ていただければ十分です。

経路どこから出てくるか動かせる余地
端末とアカウント予約や連絡の通知、閲覧や購入の履歴、共有された設定自分の側で調整しやすい
お金の動きカードや口座の明細、後払いの請求、現金の増減支払方法の選び方で幅がある
相手方からの連絡電話、メッセージ、自宅や勤務先への来訪窓口を移すことで大きく変わる
第三者経由口コミや投稿でのつながり、知人との偶然の遭遇限られる
郵便と書面通知書、裁判所からの書類届出や送付先の設計で一部動かせる
公開される記録訴訟の記録ほとんど動かせない


 この表で大事なのは、右の列が経路ごとに違うという点です。すべてを同じ強さで塞ごうとすると、動かしやすいところに手が回らなくなります。

遮断の順序|どこから手をつけるか

 順序を誤ると、労力の割に効果が出ないことがあります。次の四段階で考えると整理しやすくなります。

第一に、これから増える情報を止める

 通知の表示方法、共有しているアカウントや位置情報の設定、支払いに使う手段。ここは相手の同意も手続も要らず、今日中に見直せます。ただし、すでに存在するやり取りや記録を削除することは、この段階に含めないでください。後に金銭の請求や刑事の手続に発展した場合、削除の事実自体が不利に評価されることがあります。自分に不利に見える記録ほど、残したまま弁護士に見せていただくほうが結果的に有利です。

第二に、連絡の窓口を一本化する

 直接の電話やメッセージが続いている場合、そこが最も情報を運びやすい経路です。代理人を立てて連絡先を弁護士に移すと、自宅や勤務先への直接の連絡は通常止まります。もっとも、相手がこれを守るとは限りませんし、守らせるための手段は別に必要です。窓口を移せば何も届かなくなる、という説明を見かけますが、実務はそこまで単純ではありません。

第三に、書面の宛先を設計する

 通知書や裁判所からの書類が自宅に届くかどうかは、次の章で述べるとおり、ある程度は設計できます。ただし設計には時間がかかるため、動き出す前に着手しておく必要があります。

第四に、動かせない部分を確認する

 同居家族との家計の共有、すでに相手が持っている連絡先や身分証の写し、裁判記録の公開性。これらは塞げません。塞げない部分を早く確定させ、そこは伝わる前提で備えるほうが、結果として消耗が少なくて済みます。

女性が客の場合に見落とされやすい経路

 男性客を前提にした解説では触れられないものの、実際のご相談でよく出てくるのが次の四つです。

店を通らない、担当者個人とのやり取り

 派遣型のサービスでは、予約は店を通しても、その後の連絡が担当者個人のアカウントに移っていることがあります。この場合、店に窓口の一本化を申し入れても、個人からの連絡は止まりません。誰との間の話なのかを最初に切り分ける必要があります。

口コミや投稿から結びつく

 利用者どうしの情報交換が活発な分野では、投稿や相互のつながりから利用の事実が推測されることがあります。投稿の内容そのものより、いつ、どのアカウントと結びついているかのほうが手がかりになりやすい点は意識しておいてよいところです。

端末の共有設定と位置情報

 家族間で写真や位置情報を共有する設定にしている場合、意識しないまま情報が同期していることがあります。設定の見直しは第一段階に当たるため、優先して確認する価値があります。

同居家族と家計を共有している場合

 明細に表示される名称が店舗名と異なることはありますが、いつ、どこで、いくら動いたかという事実は残ります。弁護士に依頼した場合の費用の支払方法も同じ経路をたどるため、相談の入口で伝えておいていただくと調整ができます。

「職場に言う」「家族に伝える」と告げられたとき

 支払いを求める場面で、この種の言葉が出てくることがあります。落ち着いて扱うべき場面です。

告げること自体が、別の問題になり得る

 人に知られたくない事情を持ち出して金銭を求める行為は、脅迫や強要、恐喝の問題として評価される余地があります。どこからがその線を越えるのかは事情によって変わるため、別の記事で詳しく扱っています。ここでは、言われた側が黙って応じなければならない場面ではないという点だけ押さえてください。

その場で決めない

 その場での支払い、書面への署名、新しい連絡先を渡すこと。この三つは、いったん持ち帰る余地があります。急がせる言葉が続く場合ほど、いったん保留にして構いません。

やり取りの残し方

 日時、相手、言われた内容を、その日のうちにご自身のメモとして残しておくだけでも意味があります。記録の取り方そのものは別の記事で扱っています。

職場に伝わった場合に、実際には何が起こるのか

 「職場に言う」と告げられたとき、最も恐ろしく感じるのは処分の可能性でしょう。ここは冷静に見ておく価値があります。

私生活上の行為は、当然には処分の理由にならない

 最高裁は、私生活上の行為を懲戒の理由とするには、行為の性質や情状、会社の事業の種類や規模、その従業員の企業内での地位などを総合して、会社の社会的な評価に及ぼす悪影響が相当に重大であると客観的に評価される場合でなければならないという枠組みを示しています。最高裁昭和49年3月15日判決です。勤務時間外の私的な行為で、それ自体が犯罪に当たるものでもない場合、この枠組みを満たすと判断されるのは限られた場面です。

例外的に、職場と接点を持つ場合

 勤務時間中の行動である、会社の設備や経費が使われている、職務上の立場が関係している、といった事情があると、評価は変わり得ます。処分を受けた場合の争い方は別の記事で扱っていますので、通知を受け取った段階でご相談ください。

書面や裁判になったときの経路

 ここが、経路の中で最も誤解の多い部分です。

通知書は、同居のご家族が受け取ることがある

 内容証明郵便は書留として扱われ、対面での交付が基本になります。事前の到着の知らせもありません。裁判所からの書類についても、送達すべき場所で本人に会えないときは、同居の方などのうち書類の受領について相当のわきまえのある人に交付することができるとされています。民事訴訟法106条1項です。この場合、ご家族が受け取ったとしても、送達は原則として有効に扱われます。

送達を受ける場所は、届け出ることができる

 民事訴訟法104条1項は、送達を受けるべき場所を裁判所に届け出ることができ、あわせて送達を受け取る人も届け出ることができると定めています。代理人の事務所を送達場所として届け出れば、その後の書類は自宅に届かなくなります。ただし、訴えられた側の場合、最初の一通は届出より前に送られるため、自宅に届くのが原則です。ここが最大の制約になります。郵便の送付先の細かな選択肢は、別の記事で整理しています。

記録は、原則として公開される

 訴訟の記録は、当事者以外の人も閲覧を請求できる仕組みになっています。判決に至る場合、内容が第三者の目に触れる可能性は残ります。示談や和解で終える選択肢を検討する意味は、金額だけの問題ではありません。

かえって伝わりやすくなる行動

 良かれと思って取った行動が、経路を増やしてしまうことがあります。

  • 郵便を受け取らずに放置する。手続が進み、後の段階でより目立つ形で書類が届くことがあります。
  • 期限のある書類を開かずに置く。答える機会を失うと、選べる選択肢が減ります。
  • 存在しない住所や連絡先を伝える。後で説明がつかなくなり、信用の問題に発展します。
  • 相手に直接、口止めを持ちかける。新たな要求の材料になることがあります。
  • 弁護士にも事情を伏せる。前提が違うまま方針を立てると、途中で組み直すことになります。


相談の前に整理しておくとよいこと

 次の点をメモにしておいていただくと、初回のご相談で具体的な設計まで進めます。

  1. 相手が誰か。店なのか、担当者個人なのか、その両方なのか。
  2. どこまで伝えてしまったか。氏名、住所、勤務先、身分証の提示や撮影の有無。
  3. 今どの経路で連絡が来ているか。電話、メッセージ、郵便、来訪の別。
  4. 郵便物の送付先や電話の時間帯について、希望があるかどうか。
  5. 費用の支払方法について、家計と分けたい事情があるかどうか。
  6. 最も避けたいことは何か。職場か、家族か、記録が残ることか。


よくあるご質問

店は、家族からの問い合わせに利用歴を答えるのでしょうか。

 個人情報保護法27条は、本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供することを原則として制限しています。したがって、問い合わせがあったからといって店が答えてよいことにはなりません。ただし、これは店が答えないことを保証する規定ではなく、実際に伝わってしまった場合の回復は別の問題になります。

弁護士に依頼したこと自体が、職場や家族に伝わりますか。

 弁護士には守秘義務がありますので、こちらから伝えることはありません。もっとも、守秘義務は弁護士が漏らさないという根拠であって、他の経路から情報が届かないことまで意味するものではありません。連絡方法や書面の宛先について、ご希望を最初に伝えていただくほうが行き違いが起きません。

配偶者に知られた場合、慰謝料の問題になりますか。

 夫婦間での評価は、行為の内容や関係の状況によって判断が分かれます。この点は男女トラブルの記事で扱っていますので、そちらをご確認ください。この記事の範囲は、あくまで情報が伝わる経路の設計にとどまります。

まとめ


  1. 「知られたくない」は、利用の事実、トラブルの事実、手続の事実の三つに分かれ、遮断が効く幅がそれぞれ違う。
  2. 経路は、端末とアカウント、お金の動き、相手方からの連絡、第三者経由、郵便と書面、公開される記録の六つに整理できる。
  3. 手をつける順序は、これから増える情報を止める、連絡の窓口を移す、書面の宛先を設計する、動かせない部分を確認する、の順になる。
  4. すでにあるやり取りの削除は最初に置かない。後の手続で不利に評価されることがある。
  5. 私生活上の行為を懲戒の理由とするには、会社の社会的な評価への影響が相当に重大であることが求められる。最高裁昭和49年3月15日判決の枠組みである。
  6. 裁判所からの書類は同居の方が受け取ることがあり、その場合も送達は原則として有効に扱われる。民事訴訟法106条1項。
  7. 送達を受ける場所は届け出ることができるが、訴えられた側は最初の一通が自宅に届くのが原則である。民事訴訟法104条1項。
  8. 店が家族の問い合わせに利用歴を答えてよいわけではない。個人情報保護法27条。


女性用風俗をめぐるトラブルでお困りの方へ

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。ご相談の入口で、郵便物の送付先やご連絡の方法についてご希望を伺うことができますので、遠慮なくお申し付けください。

 請求を受けて対応に迷っている方も、まだ何も起きていないものの経路が気になっている方も、早い段階のほうが選べる幅は広くなります。どこから手をつけるべきかの整理だけでも、状況は動かせます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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