風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐには
コンカフェやガールズバーで思いがけない金額の会計を告げられた、あるいは「あれは色恋営業だったのではないか」と後から感じて返金を求めたい——そうしたご相談が増えています。ただ、キャバクラやホストクラブを前提にした解説をそのまま当てはめると、実際には使えないルールを頼りにしてしまうことがあります。
この記事は、支払いを踏み倒すための解説ではありません。請求のどこまでに支払義務があるのか、法律上どこまで争えるのか、そして求め方を誤って自分が責任を問われる側に回らないためにどうするかを、順に整理します。
まず確認したいのは「その店がどの営業なのか」
コンカフェ・ガールズバーの法律上の位置づけは、一つではありません。同じような看板を掲げていても、次の三つのいずれかの形で営業しています。
| 営業の形態 | 必要な手続 | 接待 | 午前0時以降の営業 |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業のみ | 保健所の営業許可 | できない | 酒類の提供はできない |
| 深夜酒類提供飲食店営業 | 保健所の許可+公安委員会への届出 | できない | できる |
| 風俗営業(接待飲食等営業) | 保健所の許可+公安委員会の許可 | できる | 原則としてできない |
実務上、コンカフェやガールズバーの多くは、二段目の「深夜酒類提供飲食店営業」の届出で営業しています。深夜まで営業したいからです。そしてこの営業では、法律上「接待」をすることができません。つまり多くの店は、接待はしていないという建前で営業していることになります。
ここでいう「接待」とは、風営法2条3項が定める「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」を指します。カウンター越しかボックス席かで決まるわけではありません。特定の客の隣について継続的に会話の相手をする、一緒にゲームやカラオケをするといった実態があれば、接待と評価されることがあります。
この「接待の実態があるか」「許可を受けているか」が、後で説明する各ルールが使えるかどうかの入口になります。まずはご自身が行った店がどれに当たりそうかを、頭に置いておいてください。
使ったお金を三つに分けて考える
次に、支払ったお金を性質ごとに分けます。ひとまとめに「返してほしい」と考えると、どこから手をつけるべきかが見えなくなります。
- 店に対する飲食代金。セット料金、ドリンク、ショット、シャンパン、チェキ代、延長料金などで、店との契約に基づく代金です。
- キャスト個人に直接渡した現金やプレゼント。店との契約ではなく、個人に対する贈与と評価されるのが通常です。
- まだ払っていないツケ(売掛)。これは「返してもらう」話ではなく、「支払う義務があるか」という話になります。
一つ目は契約の効力を争う余地があります。二つ目は民法549条の贈与にあたり、渡し終えた分については民法550条ただし書により原則として一方的に取り戻すことができません。三つ目は、請求を受ける側としての防御を考える場面です。以下では主に一つ目と三つ目を扱います。
高額会計は、どこまで争えるのか
請求された金額が、そのまま支払義務のある金額とは限りません。ただし、コンカフェ・ガールズバーの高額会計は、路上で声をかけられて連れ込まれるタイプの店とは形が違うことが多く、争いやすい形と争いにくい形があります。
争う余地が比較的ある形
- メニューに載っていない名目(指名料、席料、サービス料など)が後から加算されている。
- 注文していないドリンクやボトルが伝票に計上されている。
- 「セット料金に込み」と説明されていたものが、別料金として請求されている。
- 泥酔して判断ができない状態のときに、次々と注文が入っている。
- 料金表が示されず、口頭の説明と実際の請求が大きく食い違っている。
争いにくい形
- 表示されている単価どおりの積み上げで、自分が注文した記録が残っている。
- 金額は高いものの、メニュー上の価格自体は事前に確認できる状態だった。
- 何度も来店し、同じ料金体系で支払いを続けてきた。
コンカフェ・ガールズバーの高額会計は、後者の「一杯ずつは安いが、積み上がって高額になる」型が多いのが特徴です。この場合、「高すぎると感じた」という感覚だけで支払義務を否定するのは容易ではありません。
もっとも、飲食のサービスを実際に受けている以上そのすべてが不当請求とは言い切れない一方、説明と違う請求まで支払う義務があるわけでもありません。争点は「ゼロか全額か」ではなく「いくらか」になることが多い、と考えておくと現実的です。
なお、会計の場で帰してもらえない、脅すような言動をされたといった場面での具体的な対応は、別稿「ぼったくりバー・キャバの高額会計|ぼったくり防止条例と支払い拒否」で詳しく整理しています。
条例と改正風営法は、その店に及ぶのか
ここが、コンカフェ・ガールズバーで最も誤解されやすい部分です。ルールごとに、及ぶ店の範囲が違います。
| ルール | 主に適用される店 | 違反した場合 |
|---|---|---|
| 東京都ぼったくり防止条例 | 接待をして酒類を提供する営業のうち、指定区域内にある店 | 不当な勧誘・取立てに罰則(6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金など) |
| 風営法22条の2 | 接待飲食営業(2条1項1号の営業)を営む者。許可の有無は問わない | 支払わせる目的で客を威迫して困惑させる行為に罰則(6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金) |
| 風営法18条の3 | 接待飲食営業を営む「風俗営業者」=許可を受けた店 | 指示や営業停止といった行政処分の対象(刑事罰の定めはない) |
整理すると、次のようになります。
- 接待の実態がある店であれば、許可を受けていなくても風営法22条の2は及びうる。
- 一方、18条の3は許可を受けた風俗営業者が対象なので、許可を取らずに営業している店には条文上そのままは及ばない。
- ぼったくり防止条例は、接待があり、かつ東京都公安委員会が告示した指定区域内にある店が対象。指定区域は歌舞伎町など一部の繁華街に限られず、都内の30を超える区市が丁目単位で指定されている。
- 接待の実態がなく、カウンター越しの接客に徹している店では、これらのいずれにも当たらないことがある。
そして、もう一つ大切な点があります。風営法もぼったくり防止条例も、行政上の取締りのための決まりです。店がこれらに違反していたとしても、それだけで支払義務が当然に消えたり、払ったお金の返還を求める権利が自動的に生まれたりするわけではありません。民事の交渉や裁判では、店の言動が悪質であることを示す材料として働く、という位置づけになります。
「色恋営業だった」を理由に返金を求められるか
好意があるように見える接客そのものは、違法ではありません。ここが出発点です。
2025年6月28日に施行された改正風営法(令和7年法律第45号)は、色恋営業の一部を規制の対象としましたが、対象となるのは要件を満たした場合に限られます。具体的には、客が「相手も自分に好意を抱いている」と誤信していることを知りながらそれに乗じたうえで、飲食等をしなければ関係が破綻する、あるいはこのままでは相手が降格や配置転換といった業務上の不利益を受けるといったことを告げて客を困惑させ、飲食等をさせる行為です。
したがって、「優しくされた」「好意があると思っていた」「営業時間外もメッセージのやり取りをしていた」というだけでは、この規制には当たりません。「色恋営業だったから返金してほしい」と店に申し入れる相談自体は増えている一方、要件を満たさない事案が多いことは実務家からも指摘されています。
民事上の返金請求としては、次のような組み立てが考えられます。
- 消費者契約法4条3項6号のいわゆるデート商法の規定による取消し。ただし「社会生活上の経験が乏しいこと」が要件とされており、通い慣れた成人の常連客の場合はハードルが高くなります。取消権は追認できる時から1年、契約時から5年で行使できなくなります(同法7条1項)。
- 民法96条1項の詐欺・強迫を理由とする取消し。当初から欺くつもりだったことの立証が壁になります。
- 民法709条の不法行為による損害賠償。組織的・計画的な働きかけがあった場合に検討されます。
- 民法90条の公序良俗違反。認められれば契約は無効ですが、事案によっては不法原因給付(民法708条)の議論も出てくるため、常に有利に働くとは限りません。
いずれも、やり取りの記録が残っているかどうかで結論が大きく変わります。関係が悪化した後にメッセージの削除を求められ、証拠が足りずに請求が認められなかったという指摘もあります。色恋営業と返金の関係については、別稿「コンカフェ・ガールズバーで恋愛感情を利用された場合、お金は返してもらえる?」でより詳しく扱っています。
求め方を誤ると、立場が入れ替わる
この分野で最も注意していただきたいのが、返金を求める側だったはずが、いつの間にか責任を問われる側になってしまう場面です。
- 拒絶されているのに連絡を送り続ける。恋愛感情等を満たす目的が認められれば、ストーカー規制法の問題になりえます。
- 店に居座り、退去を求められても出ない。刑法130条後段の不退去罪にあたる可能性があります。
- 大声を出す、営業を妨げる。刑法234条の威力業務妨害罪の問題になりえます。
- SNSに店名やキャストの源氏名を挙げて投稿する。内容によっては刑法230条の名誉毀損罪や、民事の損害賠償の対象になります。
- 「返さないなら通報する」「ネットに書く」と告げて金銭を求める。刑法249条の恐喝罪や223条の強要罪と評価される線があります。
感情の整理がつかないまま動くと、返金を得られないばかりか、自分が刑事事件の対象になりかねません。請求は、書面で、事実と根拠を示して行うのが原則です。
コンカフェ特有の、もう一つの落とし穴
コンカフェやガールズバーは、キャストの年齢層が若い業態です。ここに、客側にとって見落とされやすいリスクがあります。
相手が18歳未満だった場合、性的な関係を持てば、東京都青少年の健全な育成に関する条例18条の6に違反するものとして、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となりえます(同条例24条の3)。相手の同意があったかどうかは関係がありません。年齢を知らなかったという言い分も、確かめる機会があったのに確かめなかったと判断されれば通りにくくなります。
また、店外で個人的に連絡を取り合っている場合、そのやり取りは双方向に記録として残ります。自分にとって有利な証拠であると同時に、相手側にとっての証拠でもある、という意識を持っておく必要があります。
いま残しておくべきものと、相談先
高額会計にせよ色恋営業にせよ、後から結論を左右するのは記録です。
- 伝票、領収書、レシート、クレジットカードの利用明細。
- 店やキャストとのメッセージのやり取り。自分から削除しないでください。
- 来店の日時、支払った金額、言われた内容を時系列にまとめたメモ。
- 店の料金表やメニューの写真、店内での説明の録音。
- 支払いのために借入をした場合は、その記録。
公的な相談窓口としては、消費者ホットライン(188)と、警察相談専用電話(#9110)があります。請求への対応や返還交渉そのものを代わりに進めてもらう必要があるときは、弁護士への相談をご検討ください。店から繰り返し連絡が来ている場合は、窓口を一本化するだけでもやり取りの負担は大きく変わります。
まとめ
- コンカフェ・ガールズバーは、飲食店営業のみ、深夜酒類提供飲食店営業の届出、風俗営業の許可のいずれかで営業しており、どれに当たるかで使えるルールが変わります。
- 使ったお金は、店への飲食代、キャスト個人への贈与、未払いのツケの三つに分けて考えます。
- 請求額がそのまま支払義務の額とは限りませんが、表示どおりの積み上げ型は争いにくく、争点は「いくらか」になりがちです。
- ぼったくり防止条例は接待と指定区域、風営法22条の2は接待の実態、18条の3は許可を受けた店であることが、それぞれ前提になります。
- これらに違反していても、それだけで支払義務が消えるわけではなく、民事では評価材料として働きます。
- 好意を示す接客そのものは違法ではなく、規制の対象となる色恋営業は、関係の破綻や業務上の不利益を告げて困惑させた場合に限られます。
- 求め方を誤ると、不退去・威力業務妨害・名誉毀損・恐喝などで立場が逆転します。記録を残しながら、書面で進めてください。
【監修】弁護士法人若井綜合法律事務所 代表弁護士 若井亮(東京弁護士会・登録番号47827/池袋・新橋)当事務所は風俗トラブル(100%客側)や男女トラブル対応、刑事弁護を中心にお受けし、累計90,000件以上のご相談をいただいています。本記事は一般的な解説であり、結論は個別の事情により異なります。全国から24時間・年中無休で無料相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。


