【風俗トラブル・キャスト側】客から「店に通った金額を返せ」と内容証明が届いたら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

キャバクラやラウンジ、ガールズバー、コンカフェなどで働いていた方のもとに、以前のお客様から「これまで店に通って使った金額を返せ」と書かれた内容証明郵便が届くことがあります。来店が途絶えた後や、お店を辞めた後、連絡を断った後に届くことが多く、封筒の体裁や「法的措置」という言葉に強い不安を覚える方も少なくありません。

 この記事では、キャスト側の立場から、内容証明が届いたときに支払義務をどう考えるか、書面のどこを確かめるか、届いた後に何をしておくとよいかを整理します。

この記事は、2025年6月28日に施行された改正風営法を含め、2026年10月時点の法令に基づいて記載しています。個別の事情によって結論が変わることがあるため、具体的な対応は専門家にご相談ください。


内容証明が届いても、それだけで支払義務が決まるわけではない

 内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に差し出したかを日本郵便が証明するサービスです。書かれている請求が正しいと裁判所や公的機関が認めたものではありません。「◯日以内に返金がなければ法的措置をとる」と書かれていても、その期限自体に法的な強制力があるわけではありません。

 一方で、内容証明は「請求を受けた」という事実を記録に残す手段でもあり、訴訟の前段階として送られることもあります。根拠のある請求が含まれている場合に放置すると、相手が裁判を起こしたときに不利な進み方になるおそれがあります。慌てて支払うことも、まったく読まずに放置することも避け、まずは内容を落ち着いて確かめることが出発点になります。

「店に通った金額」は、誰に払ったお金かで分けて考える

 「使った金額を返せ」という請求には、性質の異なるお金がひとまとめにされていることがよくあります。返還を求められる根拠は、お金の流れによって変わります。

お金の種類支払った相手基本的な考え方
飲食代・指名料・ボトル代など店契約の当事者は店であり、キャスト個人が返還を求められる根拠は通常は乏しい
現金・プレゼントキャスト個人贈与にあたるのが通常で、渡し終えたものは原則として返還を求めにくい
「貸して」と頼んで受け取ったお金キャスト個人返す約束があれば貸金として返還義務が生じる


店に支払われた飲食代など

 お客様が店で支払った代金は、店とお客様との間の契約に基づく支払いです。売上に応じた歩合(バック)がキャストに支払われていても、それは店とキャストの間の取り決めであり、お客様が支払った代金そのものをキャストが受け取ったことにはなりません。そのため、店への支払いについてキャスト個人に「返せ」と求める請求は、法律上の根拠を示しにくいのが一般的です。

キャスト個人に渡された現金やプレゼント

 誕生日のプレゼントや「応援したい」という気持ちで渡された現金は、贈与と考えられるのが通常です。書面によらない贈与であっても、引渡しが終わった部分は解除できないとされています(民法550条)。関係が終わったことや、期待していた交際に発展しなかったことだけを理由に、渡し終えた金品の返還を求めることは難しいと考えられます。

借りたお金

 これに対し、「貸してほしい」と頼み、「いつ返す」といったやり取りがあったお金は、貸金として扱われる可能性があります(民法587条)。LINEなどに返済の約束が残っている場合は、返還義務があることを前提に、金額や支払方法を話し合う方向になることがあります。贈与か貸付かは、受け取った当時のやり取りが判断の材料になります。

返還の請求が問題になりやすい場面

 好意的な言葉をかけたり、親しい雰囲気で接客したりすること自体は、直ちに違法とされるものではありません。ただし、次のような事情がある場合には、返還や損害賠償の請求が問題になることがあります。

  • 交際する意思がないのに交際や結婚を約束し、それを理由にお金を出させた場合。
  • 病気や借金など事実と異なる事情を伝え、それを理由に現金を受け取った場合。
  • 「来てくれないと関係が終わる」などと告げて、困惑させて来店や注文をさせた場合。


 一つ目と二つ目は、詐欺を理由とする取消し(民法96条1項)や不法行為(民法709条)の主張につながる可能性がある場面です。もっとも、請求する側が、当初から欺く意図があったことなどを立証する必要があり、通常の接客の範囲内のやり取りであれば、認められるハードルは高いと考えられます。

 三つ目については、消費者契約法に恋愛感情に乗じた勧誘による契約の取消しの規定があり(4条3項6号)、2025年6月施行の改正風営法でも、接待飲食営業の営業者に対して、こうした働きかけで飲食等をさせることが禁止されました(18条の3)。ただし、消費者契約法の取消しは主に店との契約の問題であり、風営法は行政上の規制であるため、違反があったことから直ちにキャスト個人への返還請求権が生じるわけではありません。

届いた書面で確かめておきたいこと

 返事をするかどうかを考える前に、書面の次の点を確かめておくと、状況を整理しやすくなります。

  • 差出人がお客様本人か、代理人の弁護士か。
  • 請求の宛先がキャスト個人か、店も含まれているか。
  • 請求額の内訳と、店への支払いと個人に渡したお金が区別されているか。
  • 返還を求める理由として、何が書かれているか(貸したお金、だまされた、など)。
  • 回答や支払いの期限がいつか。
  • 「警察」「被害届」「勤務先」「家族」などへの言及があるか。


 差出人が弁護士であれば、以後のやり取りは代理人を通すことになります。お客様本人が差出人の場合は、書面の書き方からどこまで法的な整理がされているかを読み取れることもあります。

届いた後にしておきたいこと、避けたい対応


当時のやり取りを消さずに残す

 LINEやSNSのメッセージ、振込の記録、受け取ったプレゼントの内容などは、贈与か貸付か、どのような言葉が交わされていたかを示す材料になります。お客様との関係を終えたときに履歴を削除したくなることもありますが、トラブルが起きている間は残しておく方が、ご自身の説明を裏付けやすくなります。

直接連絡して話をつけようとしない

 早く終わらせたい気持ちから、お客様に直接連絡して事情を説明したくなるかもしれません。ただ、その場で「少しなら返す」と伝えると、返還義務を認めたと受け取られ、後の話し合いで前提にされることがあります。また、直接のやり取りが関係の再開のきっかけとなり、連絡や接触が続く場面も見られます。

期限に追われて支払わない

 書面の期限は相手が一方的に設定したものです。根拠のはっきりしない請求に応じて支払った後で、払う必要がなかったと分かっても、取り戻すことは簡単ではありません。期限が迫っている場合でも、支払う前に一度、請求の根拠を確かめる時間をとることをおすすめします。

店にどこまで伝えるかを考える

 飲食代など店への支払いが含まれている場合、本来は店が対応すべき部分もあります。一方で、店がキャストに代わって相手と交渉を進めることには、法的な問題が生じることもあります。店に知らせる範囲や、誰が窓口になるかは、状況を整理したうえで決めるとよいでしょう。

「詐欺で訴える」「勤務先に伝える」と書かれていたら

 内容証明に「詐欺で被害届を出す」と書かれていると、不安が大きくなるのは自然なことです。刑法上の詐欺罪が成立するには、受け取った時点で相手をだます意図があったことなどが必要であり、お金をめぐる行き違いがあることだけで、直ちに刑事事件になるわけではありません。民事の返還の問題と刑事の問題は分けて考える必要があります。

 また、正当な権利の行使であっても、「勤務先や家族に知らせる」と告げて支払いを迫る行為は、その態様によっては脅迫や恐喝にあたる可能性があります。書面に住所が記載されていることから、自宅を知られていることに不安を覚える方もいます。待ち伏せや繰り返しの連絡がある場合は、書面とは別に、警察への相談も含めて身の安全を優先した対応を考えることが大切です。

弁護士に依頼した場合の進め方

 弁護士にご依頼いただいた場合、まず当時のやり取りや受け取ったお金の内訳を伺い、請求のうちどの部分に法的な根拠がありうるかを整理します。そのうえで、代理人として回答書を送り、支払う理由のない部分については理由を示してお断りします。以後の連絡は代理人に一本化されるため、お客様と直接やり取りする必要はなくなります。

 借りたお金が含まれているなど、一部に返還すべきものがある場合は、金額や支払方法を話し合い、これ以上の請求をしない旨の清算条項や、接触しない旨の条項を入れた合意書を交わすことを目指します。相手が訴訟を起こした場合も、それまでに整理した記録をもとに対応します。

よくあるご質問


内容証明を受け取らなければ、請求はなかったことになりますか

 受け取りを拒んだり、不在のまま保管期間が過ぎたりしても、状況によっては相手方に届いたものと扱われることがあります。受け取らないことで請求そのものがなくなるわけではないため、内容を確認したうえで対応を考える方が、結果として負担が小さくなることが多いといえます。

お店を辞めていても請求されることはありますか

 お店を辞めた後でも、個人として受け取ったお金について請求を受けることはあります。ただし、辞めたことやお店を辞めると伝えなかったこと自体が、返還義務を生じさせるわけではありません。考え方は、在籍中かどうかにかかわらず、お金の性質に沿って整理することになります。

返金に応じないと、逮捕されることはありますか

 返金に応じないことだけを理由に逮捕されるわけではありません。ただし、事実と異なる説明でお金を受け取っていたなど、個別の事情によっては刑事上の問題が検討されることもあります。不安がある場合は、ご自身の状況を弁護士に伝えたうえで見通しを確認しておくと安心です。

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 客から「店に通った金額を返せ」と求められても、店に支払われたお金、個人として受け取ったお金、借りたお金では、考え方が大きく異なります。書面の文言にとらわれず、お金の流れと当時のやり取りを一つずつ確かめることが、適切な対応への近道です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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