大手事務所と個人・小規模事務所|規模による違いと選び方
弁護士に相談を断られることは、実際にあります
思い切って法律事務所に電話をしたのに、相談の予約すら受けてもらえなかった。あるいは、相談には行けたものの、その場で「お引き受けできません」と言われた。こうした経験をすると、自分の抱えている問題が取り上げるに値しないものだと言われたように感じてしまうかもしれません。
しかし、弁護士が相談や依頼を受けられない場面には、弁護士の側に選ぶ余地がないものが含まれています。とりわけ「利益相反」と呼ばれる仕組みは、法律と会規によって職務を行うこと自体が禁じられている類型で、事務所の都合や相談者への評価とは関係なく働きます。
この記事では、断られる理由を種類ごとに整理したうえで、利益相反という仕組みの中身、予約のときに相手方の名前を聞かれる理由、断られたときに次にとれる行動を、条文や制度に沿って説明します。
断られる理由は大きく二つに分かれる
断られる理由は、制度上受けられないものと、事務所の判断で受けないものに分けて考えると整理しやすくなります。この二つは、次にとるべき行動が違います。
| 区分 | 中身 | 弁護士側の裁量 |
|---|---|---|
| 制度上受けられない | 利益相反など、法令や会規で職務を行うことが禁じられている類型 | 裁量の余地がない。相談自体を受けられないこともある |
| 事務所の判断で受けない | 取扱分野、日程、見通し、費用の見合いなど | 事務所ごとに判断が分かれる。別の事務所では受けられることがある |
断られたことは、相談内容の軽重とは別の話
弁護士は、持ち込まれた悩みの重大さを審査する立場にはありません。断られた理由が制度上のものであれば、そこに相談内容への評価は入っていません。事務所の判断による場合でも、判断の前提は「その事務所が、その時点で、その事件をどう扱えるか」であって、相談者の人柄や問題の価値を採点したものではありません。
弁護士に「引き受けなければならない」という義務はありません
医師の応招義務にあたる規定が置かれていない
医師法19条1項は、診療に従事する医師は診察治療の求めがあった場合、正当な事由がなければこれを拒んではならないと定めています。いわゆる応招義務です。
これに対して、弁護士法には、私的な依頼について同じ内容の応諾義務を定めた規定がありません。弁護士が依頼を受けるかどうかは、原則として弁護士の判断に委ねられています。断られる可能性があること自体は、制度がもともと想定している姿だといえます。
ただし「受けるかどうかを知らせる」義務はある
弁護士職務基本規程34条は、事件の依頼があったときは速やかにその諾否を依頼者に通知しなければならないと定めています。受けるにせよ受けないにせよ、返事を保留したまま放置してよいことにはなっていません。
したがって、問い合わせをしたのに連絡がないまま日が過ぎている場合は、こちらから確認の連絡を入れて差し支えありません。期限のある書類を抱えているのであれば、なおさらです。
例外にあたるのが、官公署の委嘱と弁護士会の指定した事項
弁護士法24条は、弁護士は正当の理由がなければ、法令により官公署の委嘱した事項と、会則の定めるところにより所属弁護士会または日本弁護士連合会の指定した事項を行うことを辞することができない、と定めています。弁護士職務基本規程79条・80条にも、正当な理由なくこれらの委嘱事項を拒絶してはならないという規定が置かれています。
国選弁護人や当番弁護士、弁護士会の法律相談センターの担当といった場面がこれにあたります。一般の依頼と、公的な仕組みを通じた委嘱とでは、断ることのできる幅が違うということです。
もっとも、同規程81条は、官公署から委嘱された事項について職務の公正を保ち得ない事由があるときはその委嘱を受けてはならないとしています。委嘱の場面でも、後で述べる利益相反の考え方は働きます。
利益相反という仕組み
一方の味方にしかなれない
争いごとには、必ず相手方がいます。弁護士が一方の側に立って主張を組み立てる以上、同じ争いについて双方の相談を受けたり、双方の代理人になったりすることはできません。先に相談した人が話した事情が、後から相談した人のために使われかねないからです。
この考え方を条文にしたものが、弁護士法25条と弁護士職務基本規程27条・28条です。これらに該当する事件について、弁護士は職務を行ってはならないとされています。「引き受けない」ではなく「行ってはならない」という書き方である点が、事務所の判断による断りとの決定的な違いです。
主な類型
代表的な類型は次のとおりです。なお、類型によっては関係者の同意によって制限が解ける場合があります。
| 類型 | どういう場面か | 同意で解けるか |
|---|---|---|
| 相手方の協議を受けて賛助した事件 | 相手方が先に同じ事件を相談し、弁護士が事情を聴いたうえで具体的な助言をした場合(弁護士法25条1号・規程27条1号) | 解けない |
| 相手方の協議を受けた事件 | 助言に至らなくても、協議の程度と方法が信頼関係に基づくと認められる場合(同25条2号・規程27条2号) | 解けない |
| 受任している事件の相手方からの別の事件 | 現に受けている事件の相手方から、別の件で依頼を受ける場合(同25条3号・規程27条3号) | 受任中の事件の依頼者が同意すれば可 |
| 相手方が弁護士の近い親族 | 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹または同居の親族である場合(規程28条1号) | 依頼者が同意すれば可 |
| 受任中の他の依頼者を相手方とする事件 | 別の事件で受任している依頼者を、今回の相手方とする場合(規程28条2号) | 依頼者と相手方の双方が同意すれば可 |
| 依頼者どうしの利益が相反する事件 | 同じ事件に複数の依頼者があり、その利益がぶつかる場合(規程28条3号) | 依頼者と他の依頼者の双方が同意すれば可 |
このほか、公務員として職務上取り扱った事件や、調停・仲裁などの手続実施者として取り扱った事件も、職務を行い得ない事件とされています。
「相談しただけ」でも該当することがある
利益相反というと、正式に依頼を受けた場合の話だと受け取られがちですが、相談の段階で該当することがあります。相手方が先に相談に来ていれば、その時点でこちらの相談を受けられなくなる場合がある、ということです。
どこからが該当するかについては、古い最高裁の判断(最高裁昭和33年6月14日判決)が手がかりになります。そこでは、相談を途中で断った場合や、特に意見を述べなかった場合は「賛助」にあたらないが、事情を聴いたうえで具体的な法律上の手段を示す段階に達していれば賛助にあたるという考え方が示されています。
また、弁護士法25条2号は「協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの」という条件を付けています。立ち話程度のやり取りや、抽象的な質問にとどまる場合まで一律に含まれるわけではありません。この条件は、相手方が形ばかりの相談を各所で行って、こちらが弁護士を頼めなくする、という使い方を防ぐ趣旨のものだと説明されています。
利益相反は、担当した弁護士だけの問題ではありません
共同事務所の場合
複数の弁護士が一つの法律事務所を共にしている場合、弁護士職務基本規程57条は、他の所属弁護士が27条・28条によって職務を行い得ない事件については、自分も職務を行ってはならないと定めています。同じ事務所の別の弁護士が相手方の相談を受けていれば、原則として、その事務所では受けられないということです。
同条には「職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない」というただし書がありますが、これは事件情報の遮断など特別の事情がある場合を想定したもので、容易に認められるものではないと説明されています。
弁護士法人の場合
弁護士法人についても、弁護士法30条の18と弁護士職務基本規程63条から66条に、同じ趣旨の制限が置かれています。法人が相手方の協議を受けて賛助した事件、法人が受任している事件の相手方からの依頼による事件などが、業務を行い得ない事件とされています。
担当者を替えれば済むとは限らない
このため、「別の弁護士に代わってもらえないか」という申し出では解けないことが多くなります。逆にいえば、同じ事務所で断られても、別の事務所であれば受けられるのが通常です。断られたときに最初にとるべき行動が「他の事務所に当たる」ことになるのは、この構造によります。
なお、所属する弁護士が多い事務所ほど、相手方が先に接触している可能性は上がります。これは事務所の良し悪しではなく、確認する範囲が広いことの裏返しです。
予約のときに相手方の名前を聞かれる理由
確認しなければ分からない
法律事務所に相談を申し込むと、相談者本人の氏名だけでなく、トラブルの相手方や関係者の氏名を尋ねられることがあります。事案によっては、漢字表記や住所、法人であれば名称を確認されることもあります。
これは、ここまで述べた利益相反にあたらないかを確かめるための手順です。相手方が誰かが分からなければ、その人が先に相談に来ていたかどうかを照合できません。
弁護士職務基本規程59条は、職務を行い得ない事件の受任を防ぐため、取扱い事件の依頼者・相手方・事件名を記録するなどの措置をとるよう努めるものとしています。弁護士法人については同68条に同趣旨の定めがあります。もっとも、これらは規程上、行動指針または努力目標として位置づけられている条文です。確認の方法や範囲には、事務所によって差があります。
名前が分からないときは、その旨を伝える
相手方の氏名が分からない段階でも、相談自体をあきらめる必要はありません。分からないことをそのまま伝えれば、弁護士が事情を聴いたうえで対応の可否を判断し、改めて連絡する運用をとっている事務所もあります。
逆に、氏名の確認に応じられない場合には、その時点で相談をお断りするという方針をとる事務所もあります。確認に応じることは、結果として相談者自身の利益を守るための手順でもあります。
断る理由を説明してもらえないことがあります
理由を告げること自体が守秘義務に触れる
利益相反を理由に断られたとき、「なぜ受けられないのか」を説明してもらえないことがあります。冷たい対応に見えるかもしれませんが、これには理由があります。
弁護士法23条は、弁護士は職務上知り得た秘密を保持する義務を負うと定め、弁護士職務基本規程23条も、正当な理由なく依頼者について職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとしています。共同事務所や弁護士法人については、同56条・62条が、他の所属弁護士や法人の依頼者に関する秘密についても同じ義務を課しています。
ここで「相手方がすでに当事務所に相談に来ているため受けられません」と告げてしまえば、その相手方が相談に来たという事実そのものを漏らすことになります。そのため、利益相反を理由とする場合には、理由を明らかにできないまま断らざるを得ない場面が生じます。
「詳しくは申し上げられません」と言われたとき
理由が示されないことが、すべて利益相反によるとは限りません。ただ、理由を説明しない断り方が、必ずしも不誠実さの表れではないことは知っておいてよいと思います。
この場合、理由を問い詰めるよりも、次の事務所に当たるほうが早く進みます。あわせて、期限のある書類を抱えているなら、その事実だけは先に伝えておくと、緊急性のある窓口を案内してもらえることがあります。
利益相反以外に、断られる理由
取扱分野が合わない
弁護士に業務範囲の法的な区分けがあるわけではありませんが、実際には事務所ごとに取り扱う分野の重心があります。弁護士職務基本規程37条は事件処理にあたり必要な法令の調査を怠ってはならないとしており、扱いの少ない分野については、他を勧めるという判断が出ることがあります。
見通しが立ちにくい
主張を支える事実や資料が乏しい場合、時間が経って資料が散逸している場合、そもそも法的な請求として組み立てにくい場合などです。
弁護士職務基本規程29条3項は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならないと定めています。断られたという結果は、期待に沿う説明をせずに受任することを避けた結果である場合があります。
費用と得られるものが見合わない
請求できる金額よりも費用のほうが大きくなる見通しであれば、そのまま受任することが相談者の利益にならないことがあります。同規程24条は、経済的利益や事案の難易などに照らして適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなければならないとしています。
なお、資力の点が理由であれば、同33条が扶助制度などの説明に努めるものとしています。費用が理由と思われるときは、利用できる制度がないかを尋ねてみる余地があります。
日程と期限が合わない
期日や期限が目前に迫っていて、着手する時間が確保できないという理由です。この場合は、申込みの段階で期限を先に伝えているかどうかで結果が変わることがあります。
依頼の目的や方法が不当な場合
弁護士職務基本規程31条は、依頼の目的または事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならないと定めています。嫌がらせを目的とする申立てや、法律上とりえない手段の実行を求める場合などが想定されています。この類型は、事務所の裁量ではなく、受けてはならないものとして扱われます。
理由の種類ごとに、次の一手が変わる
| 断られた理由 | 次にとれる行動 |
|---|---|
| 利益相反 | 別の事務所に当たる。同じ事務所内での担当変更では解けないことが多い |
| 取扱分野が合わない | その分野を扱う事務所を探す。分野によっては他の資格者や公的窓口が適する場合もある |
| 見通しが立ちにくい | 判断の前提になった事実と資料を確かめ、不足しているものを補って改めて相談する |
| 費用が見合わない | 請求の範囲を絞る、扶助制度の利用を尋ねる、費用の総額と回収の見込みを併せて確認する |
| 日程が合わない | 期限を先に伝えて空き枠を尋ねる。期限が迫るときは相談できる窓口から順に当たる |
| 依頼の目的や方法 | 求めている中身を、法律上とりうる形に置き換えられないか整理し直す |
窓口によって、断られ方が違います
同じ「断られる」でも、どこに申し込んだかによって理由の出方が変わります。
- 法テラスの無料法律相談…相談を担当する弁護士等がすでに相手方やその関係者から相談・依頼を受けている場合は受けられないとされています。同一問題につき3回まで・1回30分という枠があり、刑事事件に関する相談は対象外です。費用の立替制度は、資力の要件に加えて「勝訴の見込みがないとはいえないこと」も要件とされており、相談は受けられても立替は利用できない場合があります
- 弁護士会の紹介制度…申込みを受けて弁護士会が選任する仕組みで、必ず受任してくれる弁護士を紹介する制度ではない旨が明記されている例があります。紹介できない場合にも、その旨の連絡があります
- 自治体の無料相談…同一内容は同一年度内に1回まで、係争中の案件は受け付けない、担当した弁護士にそのまま依頼はできない、といった制約が置かれていることが一般的です
- 法律事務所への直接の申込み…利益相反の確認を経たうえで、取扱分野や日程を含めて事務所が判断します
制度を通じた窓口ほど、あらかじめ条件が公開されています。断られる可能性がある旨も含めて事前に読めることは、窓口を選ぶうえでの利点でもあります。
断られたときにできること
動き方の順序
- 断られた事実と日付を控え、手元の書類に期限があるかを先に確かめる
- 別の事務所に当たる。利益相反は事務所単位で働くため、他の事務所では受けられることが多い
- 伝える材料を整える。時系列を一枚にまとめ、届いた書面は封筒ごと持参する
- 経路を変えてみる。弁護士会の紹介制度、法テラス、分野ごとの相談窓口など、入口は一つではない
- 「受けられない」と「解決できない」を切り分ける。制度上受けられなかっただけであれば、内容についての評価はまだ何も出ていない
断られにくくするための準備
- 申込みの段階で、相手方と関係者の氏名を伝える。分からなければ「分からない」と伝える
- 期限のある書類を持っているなら、その期限を最初に伝える
- 「何をしたいのか」を一つに絞って伝える。複数の目的が混ざると、扱える範囲の判断が難しくなる
- 不利な事情も含めて伝える。後から出てくると、受任後の見通しが変わってしまう
- 早めに動く。相手方が先に相談していれば受けられなくなる以上、時間は選択肢の幅に直結する
最後の点は、利益相反という仕組みの裏側にあたります。相手方が先に相談すればこちらが頼めなくなる場面がある、ということは、早く動くこと自体に意味があるということでもあります。
受任した後に辞任されることもあります
後から利益相反が判明した場合
弁護士職務基本規程58条は、共同事務所の弁護士が事件を受任した後に57条に該当する事由があることを知ったときは、速やかに依頼者に事情を告げて辞任その他の適切な措置をとらなければならないとしています。弁護士法人については同67条に同趣旨の定めがあります。
また、同42条は、複数の依頼者の間に現実に利害の対立が生じたときについて、それぞれに速やかに事情を告げて辞任その他の措置をとることを求めています。同32条は、その可能性がある場合に、受任の時点で辞任の可能性を含む不利益を説明しておくべきものとしています。
信頼関係が失われた場合
同43条は、依頼者との信頼関係が失われ、その回復が困難なときは、その旨を説明して辞任その他の措置をとらなければならないとしています。
なお、委任契約は民法651条1項により各当事者がいつでも解除できるとされており、依頼者の側から終わらせることもできます。いずれの場合も、着手金の扱いや実費の精算をどうするかは契約の内容によりますので、契約を結ぶ段階で、終わり方についても確認しておくことをおすすめします。
おわりに
弁護士に相談を断られることは、珍しいことではありません。そして、その理由の一部は、法令と会規によって「行ってはならない」と定められているために生じるもので、相談内容の評価とは関係がありません。
断られた場面で見分けたいのは、制度上受けられないのか、事務所の判断なのかという一点です。前者であれば別の事務所に当たるのが早く、後者であれば、伝える材料や求める中身を整え直すことで結果が変わることがあります。
いずれにしても、断られたこと自体を理由に立ち止まる必要はありません。期限のある書類が手元にあるなら、その期限だけは先に確かめたうえで、次の窓口へ進んでいただければと思います。


