闇金・ソフト闇金の取り立てを止めるには|法的な根拠と、止まらないときの現実的な選択肢

若井亮

若井亮

テーマ:不当要求

 取り立てが始まると、頭の中は「どうすれば止まるか」で占められます。ただ、実務で先に整理しておきたいのは、「取り立てを止めること」と「支払義務があるかどうか」は別の問題だという点です。この二つを混ぜたまま対応すると、止めるための行動が遅れたり、逆に払わなくてよいお金を払ってしまったりします。

 本コラムでは、取り立てを止めるための法的な根拠と手段、そして支払義務がどこまで残るのかを、条文と公的な統計に沿って分けて整理します。

1. 手段がないのではなく、たどり着くまでが遅れている

 警察庁「令和7年における生活経済事犯の検挙状況等について」(令和8年3月)によると、ヤミ金融事犯の相談受理件数は3,501件でした。相談当事者は20歳代が22.1%、30歳代が19.5%で、合わせて約4割を占めます。手口は、インターネットを含む非対面が87.3%。事務所に呼び出されるより、SNSやメッセージアプリでやり取りが完結する形が主流になっています。

 注目したいのは、警察に相談するまでに1か月以上かかった人が挙げた理由です。

  • 自力で解決しようと考えていた……65.0%
  • 警察へ相談するのを躊躇していた……13.1%
  • どこに相談したらよいのかわからなかった……12.5%

 つまり、止める手段が存在しないというより、手段にたどり着くまでの時間が被害を長引かせている、というのが統計から読み取れる実像です。

2. 闇金かどうかは、態度ではなく「登録」と「金利」で分かれる

 口調が丁寧でも、分割に応じてくれても、法的な評価は変わりません。判断材料は次の二つです。

貸金業の登録があるか

 貸金業を営むには登録が必要です(貸金業法3条)。無登録営業は同法11条1項で禁止され、違反すると10年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金(法人には1億円以下)という重い罰則が定められています(同法47条2号)。登録の有無は、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で確認できます。

金利が上限を超えていないか

  • 利息制限法1条……元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%。超えた部分は無効です。
  • 出資法5条2項……業として年20%を超える利息で貸し付けると5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金。
  • 同条3項……年109.5%(閏年は109.8%)を超えると10年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金。

 ここで見落とされやすいのが、礼金・手数料・調査料といった名目のお金も、名義を問わず利息とみなされるという点です。「利息は数千円だけ」という説明でも、手数料込みで計算すると上限を大きく超えていることがあります。

「借金ではない」と言われる形

 最高裁は令和5年2月20日の決定で、いわゆる給料ファクタリングについて、貸金業法2条1項および出資法5条3項にいう「貸付け」に当たると判断しました。賃金は労働者に直接支払わなければならず、譲り受けたとされる側は使用者に請求できないため、実質は顧客からの返済を予定した貸付けだ、という理解です。

 クレジットカードのショッピング枠現金化や、ギフトカード売買を装った取引も、実質が貸付けと評価されれば同じ枠組みで扱われます。「これは借金ではないから利息制限法は関係ない」という説明を、そのまま受け取る必要はありません。

3. どこからが違法な取り立てか

 貸金業法21条1項は、取立て行為の規制です。この条文の名宛人は「貸金業を営む者」であり、登録の有無を問いません。したがって、無登録の業者にも規定上は及びます。

 禁止されている主な行為は次のとおりです。

条項内容
柱書人を威迫し、または私生活・業務の平穏を害するような言動
1号内閣府令で定める時間帯(施行規則19条1項=午後9時〜午前8時)の電話・FAX・訪問
3号勤務先など、居宅以外の場所への電話・訪問
5号はり紙・立て看板等で借入れの事実その他私生活に関する事実を明らかにすること
6号他から借り入れて返済するよう要求すること
7号債務者以外の第三者に対し、代わりに支払うよう要求すること
8号協力を拒否している家族等に、更に要求を続けること
9号弁護士等や裁判所からの書面通知後、正当な理由なく直接弁済を要求すること

 違反には、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)が定められています(同法47条の3第1項3号)。

 さらに行為の態様によっては、脅迫罪(刑法222条)、恐喝罪(同249条)、強要罪(同223条)、威力業務妨害罪(同234条)、名誉毀損罪(同230条)などが重なって成立し得ます。「怒鳴られただけ」「職場に電話されただけ」と考えて記録を残さないまま済ませてしまうのは、後の手続で不利になります。

4. 取り立てを止めるための三つのルート

(1) 弁護士の受任通知

 代理人が就いた旨の書面が届いた後、正当な理由なく債務者本人に直接弁済を要求することは21条1項9号で禁止されています。もっとも条文は、通知後に「直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更に要求した」という二段構えの書き方になっており、通知一通で自動的に接触が止まる仕組みではありません。

 それでも意味が小さいわけではなく、窓口が本人から代理人に移ること自体が、その後の交渉と記録化の土台になります。

(2) 警察

 危害のおそれがあれば110番、そうでなければ警察相談専用電話(#9110)という使い分けになります。無登録営業と高金利それ自体が犯罪であり、令和7年中の無登録・高金利事犯の検挙は49事件、ヤミ金融関連事犯を含めると501事件が報告されています。

(3) 資金と連絡経路を断つ

 見落とされがちですが、実務上効くルートです。令和7年中、ヤミ金融事犯に関して口座凍結の検討依頼が6,610件・5,285口座、携帯電話の契約者確認が562件行われています。振込先の口座や連絡用の番号が使えなくなると、接触そのものが続きにくくなります。

5. 「止まること」と「払わなくてよいこと」は別

 インターネット上の解説では「闇金には1円も払う必要がない」と一律に書かれていることがあります。結論として近い場面は確かにありますが、根拠は一つではなく、層に分かれています。

 第一に、利息について。 貸金業法42条1項は、登録の有無を問わず、貸金業を営む者が年109.5%を超える利息の契約で貸し付けた場合、その契約は無効と定めています。この場合、利息を支払う義務はありません。

 第二に、元本について。 埼玉県の公的な解説では、借り手が受け取った元本は通常であれば返還する必要があるとしたうえで、業者の行為が極めて悪質である場合など個々の事情によっては、貸付け自体が公序良俗に反し、元本が民法上の不法原因給付に当たって返還不要と判断される場合がある、と整理されています。当然に返さなくてよい、という構造ではありません。

 第三に、すでに払った分について。 最高裁平成20年6月10日判決は、著しく高利の貸付けという反倫理的行為の被害者が、その行為に係る給付を受けて利益を得た場合、その利益を損害額から控除する(損益相殺的に調整する)ことは民法708条の趣旨に反し許されない、と判断しました。この考え方によれば、支払った元利金の全額を損害として請求できることになります。

 ただし金融庁は、この判決は年数百%から数千%という著しい高利の事案に着目したものであり、それに満たない利率の貸付けについてどうなるかは示されていない、と説明しています。いわゆる「ソフト闇金」と呼ばれる、比較的低めの利率を設定する形では、同じ結論になるとは限りません。

 止めるための行動は、支払義務の結論を待たずに始められます。逆に、支払義務の有無は利率・悪質性・立証の程度で分かれるため、「払う必要がない」という一般論だけを頼りに交渉するのは避けたほうが安全です。

6. すでに払ってしまったお金について

  • 損害賠償請求……民法709条。時効は同法724条により、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年です。
  • 振り込め詐欺救済法……金融庁のQ&Aは、対象となる犯罪にヤミ金融を明示しています。振込によって被害が生じた場合、金融機関への申出を通じて口座の凍結や被害回復分配金の支払という手続が用意されています。口座凍結は「取り戻す」だけでなく「止める」方向にも働きます。

 もっとも、相手方の特定が難しい事案が多く、回収の見込みは事案ごとに差があります。回収可能性と、まず接触を止めることは、切り分けて考えたほうが動きやすくなります。

7. 避けたい対応

  1. 他の業者から借りて返す……相手にとって最も都合のよい展開で、被害が横に広がります(そもそも21条1項6号で要求自体が禁止されています)。
  2. 「返せないなら口座を貸してほしい」「代わりに送金してほしい」に応じる……2026年7月10日施行の改正犯罪収益移転防止法により、口座等の不正な譲渡は3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(業として行った場合は5年以下・1,000万円以下)、他人のために送金する行為の罪が新設され2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(業として行った場合は3年以下・500万円以下)とされました。勧誘・誘引も対象です。自分名義の口座を保持したまま振込を中継する形も対象になり得るため、「口座は渡していない」は理由になりません。なお、家族間の支払代行や、食事会の幹事がまとめて送金するような正当な理由のある送金まで処罰されるものではないことは、施行に伴う説明でも例示されています。
  3. 身分証・勤務先・家族の連絡先・写真を追加で渡す……検挙事例では、貸付けの条件として性的な画像を送らせる手口も報告されています。担保と称する要求に応じる必要はありません。
  4. 一人で条件だけを交渉する……分割や減額の話に入ると、支払義務の前提を認めたと受け取られかねません。
  5. やり取りの記録を消す……メッセージ、着信履歴、振込明細は、後の相談で最も使う材料です。
  6. もう少し様子を見る……前述のとおり、相談の遅れは最も多い経路です。

8. 相談先


窓口主な用途
110番危害のおそれがあるとき、緊急時
警察相談専用電話(#9110)緊急ではない相談、経緯の記録
日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター金融庁指定の紛争解決機関。ヤミ金融に関する相談も対象、相談無料
金融庁 金融サービス利用者相談室業者や制度についての相談
金融庁「登録貸金業者情報検索サービス」登録の有無の確認
弁護士受任通知、刑事手続の対応、既払金の回収

おわりに

 取り立てが止まっても、そこに至った資金繰りの事情は残ります。止めることと、生活を立て直すことは別の作業です。連絡が続いている段階でも、記録を保全したうえで早めに外部の窓口に接続することが、結果的に選択肢を最も広く保ちます。

 「自力で何とかしよう」と考えた時間が、被害の長さを決めているというのが、統計が示していることです。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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