【親子問題】ひきこもりの子に身分証がない、マイナンバーカードは作れる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は2026年10月時点の制度をもとに作成しています。マイナンバーカードの受け取りに必要な書類や様式の扱いは市区町村によって異なるため、実際に手続をする際は、住民票のある市区町村の窓口に事前にご確認ください。


ひきこもりの状態が長く続いている子について、「運転免許証もパスポートもなく、本人を確認できる書類が手元に何もない」というご相談を受けることがあります。身分証がないままでは、部屋を借りる、携帯電話を本人名義で契約する、仕事に就くといった場面で手続が止まりやすく、子の自立を考えるうえで後回しにしにくい課題です。

 顔写真付きの身分証を一から用意する方法として、まず検討されるのがマイナンバーカードです。身分証を持っていなくても、マイナンバーカードを作る道はあります。ただし、受け取りの段階で本人確認書類が求められるため、「手元に何があるか」「本人が窓口に行けるか」によって進め方が変わります。この記事では、手続の流れと、本人が外に出られない場合の選択肢、親が代わりに動くときの注意点を整理します。

身分証がないと、どんな場面で困るのか

 成人した子が社会とのつながりを取り戻そうとするとき、多くの手続で本人確認が求められます。具体的には、次のような場面が考えられます。

  • 賃貸住宅の入居審査や保証会社の審査を受ける場面。
  • 携帯電話やインターネット回線を本人名義で契約する場面。
  • 銀行口座を開設する場面。
  • アルバイトや就職の手続で本人確認を求められる場面。
  • 生活保護などの福祉の手続で窓口に出向く場面。


 これまで身分証の代わりに使われることの多かった健康保険証は、多くの自治体の案内で、2025年12月2日以降は本人確認書類として使えないとされています。現在は、マイナ保険証を持たない人に交付される「資格確認書」が、顔写真のない本人確認書類の一つとして扱われています。親としては「保険証があるから大丈夫」と考えていたものの、いざ手続の段階で書類が足りないと分かる、ということも起こり得ます。

マイナンバーカードは「申請」と「受け取り」の2段階

 マイナンバーカードの手続は、カードを作ってほしいと申し込む「申請」と、出来上がったカードを窓口で受け取る「受け取り」の2段階に分かれています。身分証がないことが問題になるのは、主に後者です。

申請の段階では身分証の提出は求められない

 交付申請は、交付申請書に顔写真を貼って郵送する方法、スマートフォンやパソコンからのオンライン申請、証明写真機からの申請などで行えます。この段階で本人確認書類を提出する必要はなく、必要になるのは本人の顔写真です。交付申請書が手元にない場合は、市区町村の窓口で申請書を発行してもらう方法などがありますので、窓口で確認するとよいでしょう。

 顔写真は、縦4.5cm×横3.5cm、最近6か月以内に撮影した正面・無帽・無背景のものが基本とされています。ひきこもりの子にとっては、写真を撮ること自体が負担になる場合もあります。証明写真機や写真店に出向くのが難しい場合は、自宅で規格どおりの写真を用意できるかも含めて、本人が受け入れやすい方法を一緒に考えることが出発点になります。

受け取りの段階で本人確認書類が必要になる

 申請から一定期間が経つと、住民票の住所に交付通知書が届きます。受け取りは原則として本人が住民票のある市区町村の窓口へ出向き、本人確認書類を提示して行います。本人確認書類は、自治体の案内ではおおむね次のように分けられています。

区分主な書類
A書類(顔写真付きの公的な書類)運転免許証、パスポート、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、在留カードなど
B書類(氏名と住所、または氏名と生年月日が記載された書類)資格確認書、介護保険被保険者証、年金手帳・基礎年金番号通知書、生活保護受給者証、本人名義の預金通帳、学生証・社員証など


 どの書類をどの区分に含めるかは自治体ごとに細かな違いがあります。手元にある書類がどちらに当たるかは、交付通知書に同封される案内や市区町村のホームページで確かめてください。

本人が窓口に行ける場合は、B書類の組み合わせで足りることが多い

 本人が自分で受け取りに行く場合、多くの自治体ではA書類1点、またはB書類2点の提示を求めています。顔写真付きの身分証が一つもなくても、資格確認書と年金関係の書類、本人名義の預金通帳などを組み合わせれば、受け取れる可能性があります。

 国の事務処理要領では、A書類やB書類の提示が難しい場合に、市区町村長が適当と認めるほかの書類で確認する扱いも想定されています。書類が揃わないと感じても、あきらめる前に窓口で相談してみる価値はあります。

 また、本人が外出できる状態であっても、混み合う窓口での待ち時間や人目が大きな負担になることがあります。受け取りを予約制にしている自治体や、土日・夜間に受け取れる窓口を設けている自治体もありますので、本人にとって負担の少ない日時を選べるかどうかも確認しておくとよいでしょう。

本人が窓口に行けない場合は、代理人による受け取りを検討する

 やむを得ない事情で本人が窓口に出向けない場合、代理人による受け取りが認められることがあります。一般に必要とされるのは、次のような書類です。

  • 委任欄に本人が記入した交付通知書。
  • 本人の本人確認書類。
  • 代理人の本人確認書類。
  • 本人が窓口に来られない事情を示す書類。


 ここで壁になりやすいのが、本人の本人確認書類です。代理人による受け取りでは、本人の顔写真付きの書類が原則として必要とされることが多く、身分証を持たないひきこもりの子の場合、この条件を満たせないことがあります。

「個人番号カード顔写真証明書」という方法

 顔写真付きの書類がない場合に使われるのが、「個人番号カード顔写真証明書」です。本人の顔写真を貼った書面に、本人の状況を把握している立場の人が「この写真は本人に間違いない」と記入して証明するもので、未成年者や成年被後見人、長期入院中の方、施設に入所している方、在宅で介護サービスを受けている方などを対象に、様式を用意している自治体があります。

 自治体によっては、ひきこもり状態にある方用の様式を設けているところもあります。たとえば杉並区は、社会参加を避けている状態について公的な支援機関に相談しているひきこもり状態の方を対象とし、証明する人を、その方を支援する公的機関の職員と支援機関の長としています。

 この仕組みでは、家族が証明者になるのではなく、公的な支援機関とのつながりがあることが前提とされています。まだどこにも相談していない場合は、ひきこもり地域支援センターや市区町村の相談窓口に、家族が先に相談しておくことが、手続を進めるうえでも意味を持ちます。

【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないこと

 なお、ひきこもり状態にある方用の様式を設けていない自治体もありますし、書類が不足していると交付を受けられない扱いをとる自治体もあります。顔写真証明書を使う場合は、必ず事前に交付窓口へ連絡し、必要な書類の案内を受けてから出向くようにしてください。

親が代わりに手続を進めるときの注意点


委任欄や暗証番号は本人が記入する

 代理人による受け取りで使う交付通知書の委任欄や暗証番号の欄は、本人が記入するものとされ、窓口で代理人が書くことは認められていない自治体が一般的です。子が成人している以上、マイナンバーカードは子本人のものであり、親が子に代わって署名したり暗証番号を決めたりすると、本人の意思に基づかない書類を作ったことになり、問題となるおそれがあります。

 暗証番号は、本人だけが把握しておくのが基本です。親が管理し続けると、後になってカードの使い道や金銭をめぐる行き違いの原因になることもあります。手続を手伝う場面でも、本人の手で書いてもらう部分をはっきり分けておくことが大切です。

本人が乗り気でないときは急がない

 申請には本人の写真が、代理人による受け取りには本人の記入が必要になるため、本人の協力がなければ手続は進みません。「身分証くらい作りなさい」と迫るよりも、「部屋を借りるときに必要になる」「自分名義のスマートフォンを持てる」など、本人にとっての具体的な目的と結びつけて話すほうが受け入れられやすい傾向があります。

 本人が話し合いそのものを拒んでいる場合は、家族だけで抱え込まず、支援機関などの第三者に間に入ってもらうことも考えられます。

【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲

住民票がどこにあるかを確認しておく

 マイナンバーカードの手続は、住民票のある市区町村で行います。交付通知書も住民票の住所に届くため、子が実家を出ている、あるいは住民票だけを別の場所に移しているといった事情があると、手続先や書類の届き先が想定と異なることがあります。住民票の扱いについては、次の記事でも整理しています。

【親子問題】世帯分離とは|住民票・保険・年金の扱い

身分証の準備は、自立に向けた最初の手続の一つ

 本人名義の身分証があると、その後の手続の選択肢が広がります。家を出て暮らすための部屋探し、本人名義での携帯電話の契約、生活保護の申請など、独立に向けた段取りの多くは、本人確認ができることを前提に組み立てられています。関連する手続については、次の記事もご参照ください。


 当事務所では、弁護士が親の代理人として子と向き合い、提携する自立支援カウンセラーが家探しや仕事探し、生活保護の申請サポート、日々の金銭管理といった生活の基盤づくりを担当する形で、親子の問題に取り組んでいます。身分証の準備のような細かな手続も、独立に向けた段取りの中で、本人の状況に合わせて一つずつ整理していきます。

【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問

まとめ


  • 身分証がなくても、マイナンバーカードの申請自体は郵送やオンラインで行えます。
  • 受け取りの際には本人確認書類が必要で、本人が窓口に行く場合はB書類2点で足りる自治体が多くあります。
  • 本人が窓口に行けない場合は代理人による受け取りを検討し、顔写真付きの書類がなければ顔写真証明書を使えるか窓口に相談します。
  • ひきこもり状態にある方用の顔写真証明書は、公的な支援機関への相談が前提とされている自治体があります。
  • 委任欄や暗証番号は本人が記入するもので、親が代わりに書くことは避けるべきです。
  • 扱いは市区町村ごとに異なるため、手続の前に窓口へ確認しておくことが大切です。


 身分証がないという問題は、それだけを見れば事務的な手続の話ですが、ひきこもりの子にとっては外の世界と接点を持つ最初の一歩になることもあります。本人のペースを尊重しながら、支援機関や専門家の力も借りて進めていくことをおすすめします。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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