マナーうんちく話504≪あなたなら、どう答える?≫
4月は旧暦では卯の花が咲く時期ですから「卯月」と呼ばれますが、卯の花が咲くのはまだ一月くらい先になりそうです。しかしすべての生き物に清らかな気があふれるとともに、沢山の花が咲き乱れる絶好の季節です。
思い切り深呼吸して、新鮮な空気を一杯吸い込み、元気で前向きに歩んでいただきたいものです。
ところで4月は新年度で、沢山の新しい出会いがあり、希望に満ちた季節でもありますね。
問題は、新しいご縁をどのように生かすかです。
せっかく巡り合えて新しい縁を有効に結べるか否かでは、若者も高齢者の今後の人生が大きく変わってくるでしょう。
以前にも「マナーうんちく話」で触れましたが「袖振り合うも多生の縁」という言葉があります。
道を歩いていて、見知らぬ人と袖が振り合っただけの些細な事でも、前世からの深い縁によるものだという教えです。
「人と人との絆は大切にしなければいけませんよ」ということでしょう。
ではどうする?
先ずは新たな縁に気づき、それに感謝し、縁を深める努力をすることが大事です。
江戸幕府の剣術指南役を務めた柳生家に「小才は縁に出会って縁に気づかず、中才は縁に気づいて縁を生かさず、大才は袖すり合う縁も生かす」という家訓があります。
人と人との縁の大切さとともに、新たな縁の生かし方を説いた名言です。
大宇宙の中で、地球のように、水や空気や緑に恵まれた惑星は大変珍しく、その地球において、人に生まれてくる確率は、太平洋の中の小さな針を探すようなものだといわれています。
そして地球上には現在、約80億人の人が住んでいます。
その中での人との出会いになるわけですから、その縁はとても大切なものであり、それを生かす努力が必要になってくるわけです。
ちなみに縁を活かす具体的な努力として、「コミュニケーション能力」や「マナー」が必要であるというのが私の持論です。
今の日本は、学校でも家庭でも礼儀作法やコミュニケーションをほとんど教えないので、とかく曖昧になりがちですが、それらに関する知識や表現の仕方を十分修得していただきたいものです。
コミュニケーションは人と人との気持ちや価値観の疎通を円滑に行い、互いの信頼関係を築くためのスキルです。
従って先ずは「正確さ」が大事で、続いて「わかりやすさ」や「敬意」や「親しさ」などを考慮すればいいでしょう。
またマナーは相手に対する敬意や感謝や思いやりの気持ちであり、それを具体的に言葉や態度や文章などで表現するものです。
ただ表現の仕方は文化、歴史、気候風土、食べ物、宗教などにより異なります。
「不易流行」的側面も有します。
TPOに応じて臨機応変に対応することが大切だということです。
さらに、不必要に形にこだわらず、なぜそうするの?という合理的理由を理解することが大事です。
いずれも人間関係を築くための潤滑油であり、人生百歳時代をよりよく生きるための最良の伴侶になってくれるはずです。
人生百歳時代で最も大事なことは、人それぞれですが、ほとんどの人、特に高齢者は口を揃えて「健康」と答え、今や健康ブームです。
健康は勿論非常に大切ですが、生きる目的が健康維持になっては寂しいと思います。
江戸時代の長生きのバイブルともいわれ、当時のミリオンセラーになった貝原益軒の「養生訓」はとても有名です。
「人生40年」といわれた当時、認知症にも介護にも無縁で、84歳まで生きた彼の著書には重みがあり、現代でも見習うべき点は多々あります。
しかし貝原益軒という学者は「健康の大切さ」のみを説いているわけではありません。
「人としてどう生きるべきか?」「どうあるべきか?」を説いています。
その中で「マナーを身に着けることの大切さ」に触れている点が、誠に素晴らしいと思います。
《人に礼法あれば水の堤防あるがごとし。水に堤防あれば氾濫の害なく、人に礼法あれば悪事生ぜず》との名言を残しています。
人として生まれた以上、礼節がなければ、味気ない人生になりかねないということでしょう。
いくら科学が発展しても、いくら物が豊かになっても、いくら便利な世の中になっても、仙人でない限り、人は一人では生きていけません。
助け合い、支え合いがあってこそ、生きていけるわけです。
新年度に当たり、マナーやコミュニケーションの大切さを再認識し、それらに一層磨きをかけ、赤や青や黄色の花に負けないように、百歳時代に向けて幸せの花を一杯咲かせてください。