マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
季節外れの暖かさが続いていますが、本来2月は、一年で最も寒い月なので、更に着物を着るという意味の「衣更着(きさらぎ)」と表現します。
ただ和風の呼び名はまだまだあります。
なかでも「令和」の元号の由来となった「令月」は有名です。
なにをするにも大変いい月だといわれています。
「雪消月」も美しい呼び名です。
これまでに積もった雪が次第に解け、春への期待が込められているようです。
さらに「梅見月」も大変洒落たネーミングだと思います。
2月はまさに梅の月ということでしょう。
これらの名前は、厳しい寒さと、春への思いが共存しているようで、自然と共生してきた先人の繊細な感性が思い浮かびます。
《梅一輪 一輪ほどの 暖かさ》(服部嵐雪)
立春を過ぎると、それまで眠っているように見えた梅の木に、清楚な感じのする白い可憐な花が、凛とした香りを伴って咲いている姿が目立ちます。
ちなみに梅はとても香りが強く、花を愛でるのもいいですけど、香りを楽しんでいただけたらと思います。
夜に梅をみながら香りを楽しむのもいいものです。
余寒がまだまだ厳しい頃ですが、今どきの寒さはなんといっても春への期待があります。
厳しい寒さの中にも、春をひたすら待っているよ!という「喜び」があるということです。
そして令和6年2月19日(月)は二十四節気の一つ「雨水」です。
暖かくなってきたので、今まで降っていた雪が水に代わるとても縁起のいい日とされています。
今まで硬かった畑の土が潤いはじめてくるので、昔から農耕の準備をする目安になる日とされていますが、最近はあまり気にかけることはなさそうな気がします。
ところで日本は雪国ですから、時代や地域により多少異なりますが、雪を表現する素敵な言葉が多々あります。
この頃になると、雪にも多くの水分が含まれるようになりますが、「牡丹雪」は牡丹の花弁に例えて名づけられました。
降ってもすぐとけてしまう「淡雪」もこの時期ならではです。
「霙(みぞれ)」は雨と雪が同時に降る現象ですが、春と冬のせめぎあいが感じられます。
春になっても消えずに残っている雪は「名残の雪(名残雪)」といわれますが、「忘れ雪」という名前もあります。
今迄に降った雪が気温の上昇とともに溶けてゆくのに、名残惜しんで解けずにいるかのように見えるので「名残の雪」と呼ばれたのでしょう。
そしていよいよ雨脚が細くけむるように降る「春雨」へと変化していくわけですが、待ちに待った花見の季節到来ということです。
加えて地域によっては「雛飾り」をこの日にすると、良縁に恵まれるといわれますが、この風習もほとんど影を潜めましたね。
時代の流れといってはしまえばそれまでですが、寂しい気もします。
雨水の時期になると「春霞」がたなびき始めます。
私の住んでいるところは、周囲が山で囲まれているので、日ごとに山野の情景が変わっていくのがよくわかります。
とても心地よい変わり方だと思います。
ところで俳句の世界では「霞」は春の呼び名で、秋には「霧」と呼ばれ、霞は《たなびく》と表現し、霧は《立ち上る》といいます。
そして霞は夜になると「朧(おぼろ)」と呼ばれます。
ちなみに雨や霞や霧などで、周りがぼんやりすることを《けむる》と表現します。
《春の野に 霞たなびきうら悲し この夕かげに 鶯鳴くも》(大友家持)
雨水の頃に降る雨は「木の芽起こし」と呼びます。
花を咲かす雨ですが、本来は木の芽が膨らむのを助けてくれる雨だから、この様に名づけられました。
「催花雨」とも言います。
そういえば「春」の語源は「張る」といわれています。
植物の芽が日に日に膨らんでくる情景が眼に浮かびます。
雨水も末候になるにつれ、春の気配を強く感じるようになりますが、花や野菜にとっては、一雨ごとに春が来るわけです。
田んぼのあぜ道を散歩していると、和らいできた陽光の下で、葉もない野花の息吹をしっかり感じることができます。
気分も浮かれてきます。
我が家の畑の葉野菜も、寒い時期は横に張るのですが、この頃から上に、上に伸びていくようになります。
2月はまだまだ肌寒い日が続きますが、日照時間は確実に長くなってきます。
自然とともに、花咲く春を迎える準備を整えて頂ければと思います。
花屋さんには春の花が勢ぞろいです。
部屋に花や観葉植物を飾って、一足早く春気分を味わってみるのもお勧めです。
特に春を告げる花は見る人を笑顔にしてくれます。
さらにその爽やかな香りには、疲れているときに、気分を和らげてくれ、元気がもらえそうになります。