マナーうんちく話2183《今こそ再認識したい日本の「思いやりの文化」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:マナーの心得

日本が世界に誇るものは多々ありますが、中でも日本の大人は「思いやり」や「礼節」を大切にする感性を備えていることではないでしょうか。

自分の事だけでなく、常に相手を主体に考える美意識は、平和な社会背景から生まれ、育まれたものと思います。

さらに日本は世界的に見ても治安がいい国ですから、人々の公共マナーの意識も高いのが自慢ですね。

たとえば各種自動販売機が夜になっても荒らされることもないし、財布を落としても非常に高い確率でもとに帰ってきます。

聖徳太子が「和を以て貴しとなす」と説いて以来、和を重んじ、相手を思いやる国民性が世界から称賛されるということは素晴らしいことです。

コロナでマスク習慣が定着し、いまだにマスクを着用している人が多いですが、これは自分のためでもあり、相手に感染させないためでしょう。

加えて日本には「敬語」という美しい言葉がありますが、思いやりを伝える言葉も多くあります。

例えば「ありがとう」とか「ご縁」とか「癒し」などなど。
発する方も、発せられた方も、周囲で聞いている方も心地よくなります。

ビジネス社会での、売りて良し・買い手良し・世間良しの「三方良し」もしかりですね。

自分の事ばかりでなく、常にお客の事も、社会にも思いやりを発揮している素晴らしい精神です。

私も接客業に長年携わっていたのでよく分かりますが、お客様が喜んでくださっている姿を見ると大変嬉しくなり苦労が報われます。

だからこの精神が江戸時代から、今なお受け継がれている理由がよくわかります。

結局「人に喜んでいただける」「人の役に立つ」ということは、自分が幸せを感じられるということです。

ちなみに「思いやり」とは、相手に不快な思いをさせないという側面の他に、相手に好感を与えるという意味があります。

日本は稲作を中心にした農耕文化で栄えましたが、米作りは田んぼを耕したり、水の管理などもあり、一人では難しい仕事です。

従って常にいろいろな人と助け合い、支え合って仕事をしなければなりません。

そして日本は地震や暴風や洪水など自然災害の多い国ですから、常にいろいろな人と協力体制を取る必要があります。

だから共同体精神が培われ、家族や地域や職場の和を大切にし、自分だけでなく他者に思いやりを発揮したわけです。

江戸時代の庶民もしかりです。
武士のように権力も財力もなく、住まいも長屋で、トイレも洗面所も共同ですから、常に他者の事を考えなければなりません。

まだあります。
日本が素晴らしいのは、人だけでなく自然とも一体になり、自然にも素敵な思いやりを発揮してきたことです。

「自然に優しく」という思い上がりでなく、「自然に優しくしていただいている」という謙虚な気持ちで付き合ってきたわけです。

この点が西洋文化の個性強調と異なるところです。

ただ日本人は寄付をしたり、ボランティア活動の面では他国に遅れているようですね。

また最近は首をかしげるような出来事が何かにつけ多いように感じます。

「親の甘茶が毒になる」といわれますが、楽しければいい、美味しければいい、儲かればいいではなく、幼い頃より家庭でしっかり子どもに躾を施し、思いやりのある子に育てていただきたいものです。

「思いやりの心」は持ち合わせた性格もあるでしょうが、日常の生活の中でも十分育むことができます。

親と子の絆を深めるとともに、親が良き手本を示すことが大事と考えます。
「子は親の背中を見て育つ」ですね。


次に「おもてなしの心」です。
日本にはチップという制度はありませんが、見返りを求めず、誠心誠意おもてなしをする心が培われてきたのは、おもてなしの相手が神様だからだと思います。

歳神様をお迎えする正月、仏様をお迎えする盆の行事には、おもてなしの原点ともいえる素晴らしい感性がちりばめられています。

茶の湯を大成させた千利休は「マナーうんちく話」でも触れていますが、「利休七則」というもてなしの心を説いています。

これらは少しレベルが高く、なじみにくいかもしれませんが、日本の「飲食店のもてなし」は殆どの人が経験していることでしょう。

店に入るとほとんど例外なく、笑顔で「いらっしゃいませ」と温かく迎えてくれます。

席に着くと夏なら氷を入れた冷たい水に、冷たいおしぼりを出してくれます。
冬のお絞りは温めてくれています。

これらはすべて無料です。

水にせよ、お絞りにせよ、それなりの経費と手間暇がかかっているわけですが。それらが無料ということは、いかに店側が「おもてなしの気持ち」を発揮しているかということです。

だから客の立場としては「ありがとうございます」で答えるのが筋でしょう。

私は和食や洋食を問わず、テーブルマナーの講義をするときにはいつもこの話をします。

日本人にとっては水やお絞りが出るのはごく当たり前になっているのですが、改めて考えてみれば本当にこのサービスは素晴らしいと思います。


四季が豊かな日本には、世界屈指といわれるくらい多くの年中行事がありますが、和食はその行事と非常に深い関りがあります。

「節供」のように、旬の食材のエネルギーで、邪気払いをするものも多くありますが、「正月」や「盆」のように、神様や仏様や先祖を、酒や食事でもてなしてきたものも多々あります。

だからこそ、見返りを求めず、表裏なく、誠心誠意のおもてなしをチップがなくてもしてきたわけです。


最後に「思いやり」や「おもてなし」の様な素晴らしい日本の文化の本来の意味が、異なって伝えられたり、影をひそめてしまっているものも少なくありません。

戦後日本の学校教育から「礼儀作法」の授業がなくなってしまったからでしょう。

残念なことです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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