マナーうんちく話1164《どう違う?「寸志」と「松の葉」と「志」》
4月は卯の花が咲く時期だから「卯月」と呼ばれますが、今は桜、つつじ、菜の花などが見ごろを迎えています。
美しい花を見ながらのテイータイムも、この時期ならではの楽しみでしょう。
ところでお茶は万国共通の飲み物で、それぞれの国には独特のお茶文化が存在しますが、日本でお茶といえば日本茶が一般的です。
この他縁起を担ぐことが好きな日本には縁起の良いお茶があります。
正月に若水で作る「福茶」はその代表格ですが、結納や結婚式などのめでたい時に供される「桜茶」も、桜をこよなく愛する日本ならではの文化です。
何かとおめでたいことが多い4月ですから「桜茶」に触れてみます。
私もホテルで婚礼の仕事に携わっていた時には桜茶のサービスをしていましたが、結構喜ばれます。
日本では昔から、縁起を担ぐときにお茶を出すと「茶々を入れる」とか「茶を濁す」といって嫌われるので、お茶の変わりに「桜茶」を出すわけです。
ちなみに「茶々を入れる」とは邪魔な発言をしたり、余計な言動をすることで、「茶を濁す」とは、その場しのぎで物事をごまかすことです。
いっぽう「桜茶」は湯飲み茶わんの中でピンク色の桜がぱっと開くので「未来を拓く」といわれ、江戸時代にはかなり普及していたといわれています。
もともと八重桜を梅酢と塩で漬けたものですが、熱いお湯を注ぐと、お椀の中でピンク色の花がパッと開くから、とても縁起がいいとされたわけです。
出されたお茶は基本的には飲み切っていただきたいのですが、都合が悪ければ口を少しつけるだけでもいいでしょう。
残った桜の花は出来れば食べて欲しいのですが、無理をする必要はありません。
食べられなければそのまま湯飲み茶わんの中に残してもいいと思います。
厳格な作法はありません。
ただ欲を言えば「懐紙」などに包んで持ち帰えるほうがいいでしょう。
なぜなら湯飲み茶わんの中が綺麗さっぱりするからです。
桜茶はそんなに高価の物ではないし、お湯を注ぐだけで簡単に作れるので、家庭でも、めでたい時にはぜひ家族全員で頂いていただきたいものです。
先ず市販の桜茶を購入し、飲むときに桜の花についている塩をふるい落とし、湯飲みに一房から二房入れて、お湯を注げば出来上がりです。
塩の調整をしっかりして下さいね。
お湯を注げば、見た目もとてもきれいな花が開き、ほのかに桜の香りが漂ってくるので、独特の上品な香りと色合いの趣を楽しむことができ、めでたい席がより華やかになります。
まさに日本の文化です。
梅と桜をこよなく愛した日本人らしい風習を取り入れ、「ハレの日」の御祝いとして味わっていただきたいものです。
結納や結婚式のときにはもちろんですが、特に子どもの入園、入学や誕生日などには「未来を拓く」桜茶は大変良いと思います。
さらにスイーツなどのアクセントとしても気軽に利用したらいいでしょう。
前回にも触れましたが、日本では桜は神様が宿る神聖な花です。
その花で作られた桜茶でめでたい席を祝うにはふさわしい演出になります。
そして縁起物のお茶だけあって、いろいろな物語が存在します。
結納や結婚式では、主役はあくまで新郎新婦です。
従って新郎と新婦がいる席では、桜茶の花は頂かないことになっています。
新郎新婦が主役であり、花ですので、その花迄食べてしまったらだめということです。
私が主催している「生涯現役百歳大楽校」では、4月に第2学年の始業式も兼ねた講座がスタートしますので、参加者の皆様方に桜茶を振る舞う予定です。
講座の内容は「日本の祝い事の豆知識と作法」です。
桜茶のうんちくや作法にも触れるつもりです。