まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
7月の声を聞くと、さらに暑く感じます。
ところで和風月名では7月は文月(ふづき、ふみづき)ですが、その起源は諸説ありますが、一般的には、七夕に詩歌を供え、書道の上達を祈願したことが由来といわれています。
また中国では七夕に書物を天日干しする習慣があり、「文開月」と呼ばれていたのが「文月」になったという説もあります。
短冊に詩歌を書きお供えしたり、書物を干す習慣にせよ、なにか文学的要素が感じられるのが7月の特徴ではないでしょうか。
一方稲作を中心とした農耕文化で栄えた国日本では、米作りに由来する名前が多々あります。
例えば5月の「皐月」は「早苗月」の短縮形で、6月の「水無月」は田植えをするために田んぼに水を張る月という意味です。
そして「文月」は、成長した稲穂が米を含む月という意味の「穂含み月」からついたともいわれます。
今では月の表示は数字で表現しますが、明治5年まで使用されていた旧暦の表示は、様々な視点でのネーミングが付けられており、先人の豊かな感性にはただ感心させられるのみです。
また西洋のように、一部の権力者が自分の名をつけるようなことをしなかった日本人は本当に偉いと思います。
ちなみに旧暦と新暦では30日くらいの違いがありますから、旧暦の7月は今の7月下旬から9月上旬くらいになります。
「和風月名」のような素晴らしい名前も、デジタル化の波を受け、影をひそめてしまうのは誠に寂しい気がしますが如何でしょうか・・・。
昭和アナログ人間のひがみかもしれませんが。
猛暑を前に、今年は「節電」が呼びかけられていますが、食べ物や着るもの、それに調度品などいろいろ工夫して涼しさを呼びたいものですね。
昔の「しきたり」を有効に生かしたいものです。
四季の国ならではのユニークな文化「衣替え」は、現在は6月に行われますが、実は日本には7月になれば「建具」も入れ替えする風習があります。
建具の衣替えです。
クールビズの一環として、窓際にゴーヤを植え、暑さをしのぐ「ゴーヤのカーテン」が推奨されていますが、昔は夏になると「簾(すだれ)」をかけます。
さらに襖や障子も「葦戸(よしど)」に替えます。
出来る限り壁を少なくし、間仕切りを外すことで風通しを良くする文化は、四季の国ならでは文化ではないでしょうか。
さらに7月の「衣替え」もあります。
綿や絹を使用した素材を、7月と8月には麻のような素材に変えてしまうものです。
デザインや色だけでなく、素材まで変えるわけですから繊細な感性が必要になると思いますが、恐らくお金も結構かかるので、全ての人というわけにはいかなかったと思います。
現在はマンション暮らしも増え、加えて伝統的な素材も次第に失せてきたので、伝統文化を守ることも容易ではなくなりました。
また7月は各地で海開き、川開き、山開きが行われ、期間中に海難事故、水難事故、山岳事故にあわないよう無事を祈ります
いよいよレジャーの開幕となるわけですが、これらは、本来は自然の神様への畏敬の念と、無事を祈る先人の切なる願いだったわけです。
コロナも少し落ち着き、いろいろな行事が緩和された今、「今年こそは」との思いでレジャーを楽しむのは結構なことですが、先人への感謝の気持ちも忘れないようにしたいものです。
そして7月7日は五節句の一つ「七夕・笹の節句」ですが、二十四節気の一つ「小暑」です。
暑さが次第に厳しくなっていくという意味ですが、集中豪雨が起きやすい時期でもあるのでご注意ください。
小暑の次は7月21日の「大暑」ですが、小暑もしくは大暑から8月7日の立秋までを「暑中」といい「暑中見舞」を出す頃です。
四季が明確に分かれている日本には、暑い時期と寒い時期に、相手の体調を気遣う文をしたためていた文化がありましたが、暑中見舞いが一般に普及したのは大正時代になってからだといわれています。
小暑までは「梅雨見舞い」、小暑から立秋までが「暑中見舞い」、立秋過ぎたら「残暑見舞い」で、日付は書かず暑中見舞いは○○年「盛夏」、残暑見舞いは○○年「晩夏」となります。
暑中見舞いは、相手の住所地が梅雨明けをしてから出して下さい。
梅雨が明ければ急に暑くなるので、住まいと同じで暑中はがきも涼しさを呼ぶ工夫がほしいものです。
平安貴族は和紙にお香を沁み込ませて文を送ったとか・・・。
いわゆる「文香」ですが、何とも風流な文化だと思います。
私も時々香りの付いた便りをいただくことがありますが、皆さん達筆で恐れ入ります。
また名刺にも香りを付けている人がいます。
さらに今では文具店などでも色々と工夫を凝らした文香が販売されているようですが、香りは好き嫌いがあるのでご注意ください。
令和4年も半分過ぎました。
近所の氏神様で「茅の輪くぐり」をして、半年間蓄積した邪気を払って、気分を改め、令和4年の後半を元気でお過ごしください。