マナーうんちく話220≪就職祝いと親先輩の役割≫
その冬最後の雪を名残雪、もしくは「終雪」というそうですが、雪と雨が一緒に降るのは「霙(みぞれ)」です。
今まで降っていた雪が雨に変わり、水がぬるみ、草木の芽が芽生える頃になりました。
令和4年は、2月19日から3月4日までが二十四節気の2番目にあたる「雨水」です。
水がぬるみ始める頃ですから、農作業を始める目安になるわけですが、実は「お雛様」を飾るのがいいとされています。
現在のひな祭りは3月3日の「上巳の節句」、旧暦では梅の花が咲き始める頃の節句ですから「桃の節句」ともいわれ、もとは人形に自分の身体についた厄を移し、それを川に流したという「流しびな」に由来します。
つまり厄が移った人形を川に流すわけですから、雪から雨に変わって水量が増す雨水の頃が適しているということです。
ちなみに「雛」は雛鳥といわれるように、小さいという意味ですが、もともと雛飾りは平安貴族の結婚式を小さな人形で表現したものです。
日本には昔から「小さいもの」を、美しいとか、素晴らしいと感じる感性があったのでしょうか、小さくて愛らしいものや、細かく縮小されたものに強い美意識を感じたようです。
そして「幕の内弁当」「盆栽」「雛飾り」のように、国内で文化として根付くとともに、国際化の影響で広く海外にも知られるようになったわけですね。
特に盆栽や雛飾りなどは、小さくまとめたものから、大変大きな世界を連想させる素晴らしい文化だと思います。
さらに雛飾りには豊かな精神文化があります。
昔の人は母親が、女子とともに雛飾りを行い、いろいろなことを教えていたといわれています。
例えば、「雨水の時期に飾れば良縁に恵まれる」とか、「雛祭りが過ぎても人形を飾っておけば娘の婚期が遅れる」とか、いろいろと結婚にまつわる話が多いのも特徴です。
飾るタイミングや、後始末の大切さや、けじめのつけ方を教えたのでしょう。
雛祭りに供される蛤も「貞操」を説いたものです。
蛤は同じ貝でないと合わないので、夫婦が相互に性的純潔を守ることを諭したのでしょう。
さらに蛤の吸い物には、一つの貝に二つの身を入れ、夫婦がいつまでも仲良く
することを教えたようです。
だから今でも「結納」や「結婚式」では蛤の吸い物が供されますね。
今は結婚観が大きく変化しましたから、いろいろな捉え方がありますが、いずれにせよ、子どもの健やかな成長を願う行事には変わりないと思います。
何しろ昔は、乳幼児の死亡率が非常に高く、無事に育つかどうかは、「神のみが知る」といわれた時代ですから、親の思いも強かったのではないでしょうか。
今の日本は何から何まで大変恵まれています。
雛飾りも大変豪華になりました。
だから昔の教えは通じなくなったかもしれませんが、豪華さを競うより、雛飾りを通じ、物を丁寧に扱うことや、物を大事にする心をはぐくむことは大事にしたいものですね。
それがひいてはsdgs教育にも通じることではないでしょうか。
ちなみに女子が3人いる家庭の場合は、ひな人形を3人で仲良く共有するのもいいかもしれませんが、由来は「穢れを背負った人形」ですから、できれば、なにかひとつだけでも、それぞれの子供専用のものがあればいいと思います。