マナーうんちく話2074《神無月に改めて考えてみたい日本の精神文化と「おもてなし」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:マナーの心得

何十年も、何百年も満ち足りた思いで見つめられてきた光景だと思いますが、黄金色に熟した稲穂が首を垂れ、只今稲刈りの真最中です。

一年間に米作りのために費やした努力が報われるときで、収穫に感謝する秋祭りを盛大に開催したいものですが、どうやら今年も神事だけになりそうです。

ところで四季に恵まれ、稲作を中心とした農耕文化で栄え、神道や仏教を信仰する日本では、明治5年まで、月の満ち引きと太陽の動向をもとに作られた「太陰太陽暦」を使用していました。

今の新暦に対し「旧暦」ですが、現在のように月の表示は1月2月3月というように数字ではなく、その月に相応しい漢字で表していました。
「和風月名」と言いますが、これによると10月は「神無月」です。

全国の神様が出雲地方に出張され、神様が不在になる月です。
出雲地方は神様が集うので「神在月」ですが、大変重要な仕事をされます。

五穀豊穣の紳議を始め、日本の国民が心豊かに暮らせるように結婚をはじめ様々な縁づくりについての会議です。

コロナ禍で何かと疎遠になった今大変ありがたいことで、大歓迎ですね。

デジタル庁が発足しこれからはデジタル化が急速に加速しそうですが、人を本当に幸せにしてくれるのは良縁に恵まれることだと思います。

勿論国際化の進展を受け目先の課題は大切ですが、いずれにせよ、人と人との縁は古今東西必要不可欠でしょう。

さて、出雲地方に神様が出張されるわけですから、神様をお迎えするほうは大変です。まずお迎えの準備に始まり、おもてなし、そしてお見送りの仕事まで非常に多くの時間と手間暇が必要です。

何しろ相手は神様ですから、神経を使います。

今ビジネスシーンでも「おもてなし」という言葉が頻繁に使用されていますが、残念ながら重みを全然感じません。

日本の「もてなし」はそもそも神様へのおもてなしであり、さらにそれが儀式として長い時間をかけ現在に伝えられているわけです。

正月に里帰りされる歳神様にせよ、お盆に返ってこられる仏様にせよ、出雲大社に出張される八百万の神様にせよ、人の目には見えません。

日本人は目に見えないものに敬意を抱き、感謝の気持ちを捧げ、裏表なく、しかも見返りを求めないで、思いやりを込めてきたわけですね。

2013年の東京オリンピック招致委員会で話題になった日本のおもてなしは、誠に素晴らしい文化だと世界が絶賛したのも頷けます。

また1964年の東京オリンピックのテーマソングである「東京五輪音頭」をうたった、演歌歌手の三波春夫の「お客様は神様です」という名セリフは今でも有名です。

歌や芸によってお客様を喜ばせるための心構えを説いたものですが、日本人が昔から有しているおもてなしの気持ちを、見事に表現したキャッチフレーズではないでしょうか・・・。

おもてなしは、神様に祈るときのように雑念を払い、心を清らかにしなくてはいけないということです。

東京オリンピックが終わり久しくなりますが、スポーツの祭典としてのおもてなしはどうだったのでしょうか。

招致委員会でのおもてなしを前面に出したプレゼンは素晴らしかったと思ったのですが、その後は不祥事続きで、どう転んでも日本の「もてなしの心」が伝わったとは私には思いません。

コロナ禍の状況下で、何のために開催するのか?明確な説明はないままでした。

加えて、持続可能な五輪を目指しながら、箸を付けられていない弁当を大量廃棄して、日本の「もったいない精神」までないがしろにしています。
復興五輪の理念もどこにいったのでしょうか?

今回の大会で五輪の実態が変質した感が強いですが、日本が世界に誇る「おもてなし」や「もったいない文化」までうしないたくないです。

それにしても、巨額の費用をつぎ込んで、いったい何を得たのでしょうか・・・。

出雲で会議をされている800万の神様はどのように思われているのでしょうか・・・。

10月から11月にかけ様々な神事が出雲地域で執り行われますが、今一度本来のおもてなし精神を発揮したいですね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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