マナーうんちく話2026《日本ではなぜお金を包んで渡すの?長い歴史・深い意味・厳格な作法を有す祝儀文化》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:贈答のマナー

日本の贈答文化は神道や仏教の影響を強く受け、特別な概念を有しています。
祝儀もそうです。

「祝儀」とは、もともと婚礼などの御祝いの儀式を指していたようですが、今は色々な意味があります。

まず、親族や友人などが結婚する際に、お祝いの気持ちを表す目的で、お金や品物を渡す意味があります。

次に、いろいろなお祝いの行事の時に、お世話をして下さる方に贈る心付けの意味もあります。いわゆる喜ばしい時の祝意や互助活動の手間賃のようなものですね。

さらに芸能や特殊芸などに携わる人たちへの心づけの意味もあります。

加えて麻雀で特別な上がり方をしたら得点が加算されますがご祝儀と言います。

「この度はお世話になります」とか「ありがとうございます」の気持ちを込めるわけですが、幸せの「おすそ分け」をする意味も含まれます。

神道の「ハレ」と「ケ」に由来する、日本人らしい素晴らしい文化だと思います。

ところで日本人は昔から生涯において冠婚葬祭を非常に大切にしてきましたが、冠婚葬祭を平たく言えば「祝い」と「弔い」です。

そして日本には人生の節目の祝いが沢山存在します。
「出産」「初宮参り」「お食い初め」「七五三」「入学祝い」「卒業祝い」「成人式」「結婚式」、さらに「古希」「喜寿」「米寿」「白寿」「百寿」などの長寿の祝いなどなど。

これらに全て祝儀が伴うわけですね。

また人生は嬉しいことや、愛でたいことばかりではありません。

辛いことや、悲しいことも多々あります。
「病気見舞い」「火事見舞い」「災害見舞」「葬儀」などは「不祝儀」を贈ります。

現在では祝儀に対して様々な意見がありますが、このように祝意や弔意を表すことは、昔から交際の基本とされ、どこの家にも「祝儀帳」や「不祝儀帳」を用意して記録にしたためたものでした。

ちなみに日本では昔から、慶事や弔事にはお金を贈る習慣がありました。

稲作文化で栄え、神道を信仰する日本では古来様々な神事が執り行われたわけですが、その際農作物等を和紙で包んで、こよりで結び、奉納していました。

それが時の流れとともに宮中における儀式や武士の礼儀作法へと変化したようです。さらに慶事・弔事には何かと物入りですので、お金を贈って、そのたしにしてもらうようになったわけです。

ただ「もらいぱなし」というわけにはいきませんので、せめて半分くらいは返すという「お返しの文化」が生まれたのでしょうね。

全額返したら、せっかくの行為が無駄になるので、半額とか3分の1くらいになったわけです。

また「祝儀袋」がいつ頃から使用され始めたかは定かではありませんが、かなり古い歴史があることは確かでしょう。

神社に参拝する際に、手水舎で口と手を清めますが、これは、人はもともと汚れていると考えられているからです。

だから人が直接お金に触れることは、そのお金が汚れていまい、贈り物に相応しくなくなります。

だから清浄を意味する白い紙で包んで、お金を渡すようになったわけですね。

慶事に品物を贈る習慣は世界各国にも存在しますが、気持ちばかりの品を贈ったり、カードを贈ったり、またリストを用意したりで、日本のようにお金を袋に入れて贈ることはないと思います。

さらに難しいのが、非常に複雑多様な礼儀作法が伴うということです。

例えば「祝儀袋」にも用途により色々な種類があります。
「水引」もしかりです。
何のために贈るかを明確に表現した「表書き」も大変複雑です。

まだあります。
祝儀袋を包む「袱紗」です。
包み方にも作法があります。

これで終わりではありません。
「渡し方」にも厳しい作法があります。

いくら包むか?金額にも頭を痛めますが、それに加えてマナーです。

どこまで忠実に従えるかは人それぞれですが、専門家でない限り完ぺきというわけにはいかないのが現実です。

ではお金を贈るのに、ここまで厳しい決まりを設けたのか?

先人はここまで相手に気配りして、絆を深める努力をしたということでしょう。

日常生活を豊かに送るうえで、いかに人間関係が大切かということを理解していたということです。

世界に誇る素晴らしい文化だと思います。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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