マナーうんちく話2067《秋の七草と和顔愛語でおもてなし!「和気生涯楽習大学」スタート》
日差しがすっかり弱くなり、風が冷たさを運んでくると、里も山も紅葉色に染まります。
そんな彩に誘われたら、見ごろを迎えた「おらが故郷」の紅葉をじっくり堪能するのもいいですね・・・。
心に焼き付けたい風景や、次世代にも伝えたい故郷の秋は日本の大きな宝です。
風光明媚な景色のみならず、その土地・土地に刻まれた多彩な文化や歴史、グルメ等などの再確認してください。
ところでこの季節の季語に「木守柿(こもりがき・きもりがき)」があります。
柿は日本の秋を代表する果物で昔から重宝されていますが、その柿を収穫する際、数個あえて木に残すわけです。
なぜでしょうか?
柿に感謝の意をささげるとともに、労をねぎらい、来年の豊作を祈願するという意味が込められています。
また人間が自然の恵みをすべて独り占めするのではなく、鳥たちのために貴重な栄養源である柿を残してあげるわけです。
未だ物が貧しい時代に、人々は常に自然や動物のことまで気にかけ、共生を図っていたのですね。
現在は食べ物が豊かになりすぎたことと、高齢化の進展により、柿を収穫することも少なくなりましたが、木守柿はとても美しい言葉です。
世界を代表する喜劇王チャップリンは、「世界中の人がほんの少しずつでも素敵なマナーを発揮しあえば世界はさらに住みやすくなるのに・・・」という名言を残していますが、木守柿の季語を持つ日本は、本当に思いやりのあるいい国だと思います。
戦争で明け暮れた国々のマナーは危機管理的要素が強いわけですが、日本は四季が豊かで自然との共生が上手だったことと、昔から平和な社会を築いていたから鳥たちにも利他の気持ちがおよんだのでしょう。
自分の事より、常に他者や自然や目に見えないものに対して、心配りができる要素は、本当に素晴らしい文化ではないでしょうか。
例えばユネスコの無形文化遺産に登録されている和食のマナーは、常に他者に不快感を与えない点に重きを置いています。
だから箸使いにも細かな作法が存在するわけです。
今、世界屈指の長寿を迎えて、老後のために2000万円ためて、セカンドライフをグルメ、旅行、ゴルフなどで楽しく過ごすことに人気が集中していますが、多くの時間をすべて自分自身のために使っても、恐らくハッピーな気分にはならないでしょう。
勿論個人の捉え方の問題ですが・・・。
自分の体と心を大切にしながら、他者のため、世間のための時間を持つことで生きる喜びがわいてくると思います。
ちなみに世間のためとは家庭や地域や社会全般です。
長年培ってきた自身の知識や知恵や経験やスキルが、世間のために駆使出来ればこんなうれしいことはないはずです。
長年生きていれば色々と人の世話を受けます。
直接的であれ間接的であれ世話になった以上、今度は無理のない範囲で、後に続く人のために「恩送り」出来たらいいですね。
そのためには先ず「衣食足りて礼節を知る」です。
世間のために役立つには自分の体と気持ちを大切にしてくださいね。
加えて物質的豊かさを追い求めてもきりがありません。
「足るを知るものは富む」という言葉があります。
満足することを知っているものは豊かになるということです。ただし、何もせず現状に甘んじているわけではありません。自分の信念に基づき努力をすることは大切です。それに加え私は好奇心を持ち続けて生きていきたいと考えています。