まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
稲作を中心とした農耕文化で栄えた日本人は、満ちたり、欠けたりする月のかたちで農作業のタイミングを計ってきました。
そのことは「二十四節気」や「七十二侯」で詳細に表現されていますが、お月様の様子を日常生活に巧みに取り入れ、身近に月を感じていたからこそ、お月様からパワーを吸収するとともに、様々な文化を形成してきたのでしょう。
ところでこの時期は南風とともに夏を見送り、本格的な秋を迎えるわけですが、9月は自然の猛威と優しさの両面を最も身近に感じられる時ではないでしょうか・・・。
初秋の季語に「桐一葉(きりひとは)」があります。
先人は他の樹木より早く落葉する桐の葉が落ちるのを見て、いち早く秋の到来を知ったわけです。
常に自然に寄り添い、自然とともに真摯に暮らした昔の人の感性は実に素晴らしいですね。
しかし自然は優しさだけではありません。
恐怖心を抱くような猛威を伴います。
やっと猛暑が過ぎ去ったと思ったら、暴風に見舞われるときです。
立春から数えて210日目(2019年は9月1日(日))は特に「二百十日」と呼んで、台風に注意する日としてカレンダーにも記載されています。
現在のように予報技術がなかった時代は、経験的にこの日をとりわけ恐れ、漁をやめたり、農作業への備えをしたのでしょう。
自然の猛威を感じる時ですが、自然からロマンを感じることも多々あります。
9月8日(日)は二十四節気のひとつ「白露」です。
秋の夜長は気温の下がり方が大きく、大気が冷えてきて草木の葉に露ができ、それが寒さで白く見えるようになります。
また露は涙にもたとえられ儚いものの象徴でもあったようです。
さらに朝の光を受けてキラキラ輝くので宝石にもたとえられます。
そして9月9日は五節句の一つ「重陽の節句」です。
七草の節句、桃の節句、菖蒲の節句。笹の節句は現在でもなじみが深く全国津々浦々でイベントが開催されていますが、別名「菊の節句」といわれる重陽の節句をご存知の方は少ないようですね。
しかし重陽の節句は縁起がいい奇数の最上位といわれる9が重なることから、五節供の中では一番格式や公的性格が高い節句で、大切な行事だったようです。
我が家でも毎年この日になると盃に日本酒を注ぎ、菊の花びらを浮かべていただき、長寿を祈願します。
ところで最近は恋をしたり、恋愛にネガティブになる人も珍しくなりましたが、「恋教え鳥」をご存知でしょうか?
9月の中頃になると燕が南の国に帰り、尾の長い鶺鴒(せきれい)がやってきます。
その昔「伊邪那岐(いざなぎ)」と「伊邪那美(いざなみ)」が結婚した時に、子どもの作り方を教えたことから、「恋教え鳥」と呼ばれ結婚式の時にも、その飾り物が重宝されたとか・・・。
そして9月20日は彼岸入りで23日は「秋分の日」です。
太陽が真東から登り、真西に沈んで、昼と夜の長さが同じになるということは春分の日と同じですが、異なる点は秋分の日を境に日ごとに昼の長さが短くなります。
夏の「短夜」に対して秋は「夜長」ですが、二百十日も彼岸も二十四節気ではなく、季節をより正確に把握するために設けられた日本独特の特別な暦日で「雑節」です。
貴族や武士の儀式用ではなく、農作業に密着した季節の目安であり、農業に携わる人の生活の知恵です。
空気が澄んでお月様が綺麗に見える9月は、「二十四節気」「五節句」「雑節」と旧暦の豊かさを存分に味わえる時です。
自然と真摯に向かい合ってみるのもお勧めです。