マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
日本人の生活はもともと農業と漁業でしたから、四季の移り変わりと日常生活は、今では考えられないくらい密接に結びついていました。
だから「和風月名」と呼ばれる、日本にふさわしい言葉が生まれたのでしょう。
これは旧暦の季節感がもとになっていますが、今の日本では英語で月の名前が言えても、和風月名という日本語で、月の名前が言える人はほとんどいません。
天災に見舞われるたびに「自然に優しく」と言っておきながら、この調子ですから寂しい限りですが、普段は特別に意識しなくても、四季の変化を敏感に察し、それを愛でる先人のDNAは残っています。
和風月名や雑節の言葉に込められた意味や思いを理解することにより、暮らしがより豊かになるでしょう。
新年に当たり「二十四節気」や「七十二侯」をたどりながら、平成最後の年と新しい年を見つめていくのもお勧めです。
残念ながら今の暦はデジタル化され、便利にはなったものの、昔の暦のように六曜、つまり先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口や二十四節気、雑節などが影を潜め、無機質になりました。
去年は全国至る所で天災が発生し甚大な被害に見舞われ、改めて自然との付き合い方が世界的に問われるようになりました。
日頃から自然に畏敬の念を抱き、自然と共生してきた先人の生活に思いを巡らせて行けば、旧暦の素晴らしさがより実感できると同時に、世界が直面している環境保全にも寄与できると思います。
ちなみに日本には古来より脈々と伝わっている多様な《しきたり》が存在しますが、これらは日本ならではの季節感によって培われてきました。
「二十四節気」も「七十二侯」も「節句」や「雑節」も中国から伝来したものですが、日本人の手によりそれから独自の進化を遂げ現在に至っています。
忘れ去るにはあまりにも「もったいない」豊かな内容や意味を含んでいます。
デジタル万能は便利にはなりましたが、お世辞にも「心豊かな生活」とは言えないと感じます。
デジタル生活の中にも旧暦の豊かさをバランスよく取り入れ、身も心も美しい生活を謳歌したいものです。