マナーうんちく話498≪うかつ謝り≫
春の陽光の中を、風がそよそよと吹き渡るさまを昔から「風光る」と表現しますが、うららかな春の日に山々の様子を見ていると非常に穏やかな気分になります。
先人は花が咲くことを「笑う」と表現しましたが、今まさに山笑う頃です。
「マイベストプロ岡山」にコラムを寄せるようになり7年が経過しました。
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」といわれますが、7年もたてばコラムの数だけはどんどん増え、今では1600を超えました。
いつまでたってもつたない文章ですが、数が増えれば、全国各地の多くの人といろいろなご縁が持てることは確かで、講演会や研修会にお声をかけて頂くほかにも、新聞社、テレビ局や個人の方からの質問も多く寄せて頂くようになりました(深謝)。
中でもうれしいことは、遠方より、わざわざ訪ねて下さる方が大変増えたことです。
桜が満開になった4月の初めに、日本に日本語を学びに来ている台湾の留学生が我が家を二泊三日で訪問してくださり、夫婦でおもてなしをさせていただきました。
学生時代から夢であった日本文化を学びにやってこられた既婚の中年女性で、子育てがひと段落した母親でもあります。
最初の日は「晴れの国岡山」を代表する行楽地であり、日本3大名園の一つである「後楽園」をご案内しました。
満開の桜に誘われて来園した着物姿の人も大変多く、美しい庭園と日本の国花ともいえる桜、そしてお城の風景がとても気に入っていただけたようでした。
夕食は我が家の手料理の和食を召し上がっていただきましたが、丁度月遅れの「雛祭の」時期でしたから、「白酒」と「手作りの甘酒」も楽しんでいただきました。
2日目はさらに日本の文化を堪能していただきました。
妻が華道教師でお花にお茶をたしなみ、さらに7年前から近所の公民館の着物の着付け教室に通っている関係で、朝から「着物」を着て頂き記念写真。
その後、「抹茶」を簡単な作法を交えて体験。
昼ご飯は3人で「お好み焼きと焼きそばパーティー」。
午後は「生け花」も経験していただき、その後スーパーに買い物に行きました。
夕食は「手巻きずし」で日本酒とともに楽しんでいただきました。
すし飯の作り方を熱心に勉強され、帰国後は台湾の家庭で早速作りたいとのことでした。
もともと日本の「年中行事やしきたりや作法」に興味を持たれていたので、3日目の午前中はその話をさせていただき、昼は地域自慢の桜の名所で、手作り料理の「お花見」をしました。その後「ワラビ狩り」を初体験していただきました。
花見は日本古来の伝統行事ですが、満開でしかも風が強かったので「桜吹雪の中での食事」に感激していただいたようで、とてもタイミングが良くラッキーでした。
日本は世界に誇る「おもてなしの文化」があり、地域には独特のおもてなしスタイルもあるようですが、もてなす側は「相手の心の負担にならないようにさりげなく」、そしてもてなしを受ける側は「遠慮の気持ちをごくわずかに持ちながら感謝の気持ちで」がポイントです。
従って営利を目的にしないおもてなしは、「する側」も、「される側」も本当に気持ちいいもので、ここに心と心の交流が生まれます。
最後に二泊三日で体験した日本の「行楽地」「年中行事の花見」「ワラビ狩り」「日本酒・甘酒・白酒」「和食」「お茶」「お花」「着物」「日本のしきたりの話と作法」のうち、どれが一番良かったと尋ねました。
答えはいずれでもありませんでした。
二泊三日の訪問で一番、楽しい・嬉しい・幸せと思い感動したのは「常に笑いのある会話」だったそうです。
万国共通のおもてなしのポイントは意外にここにあるかもしれませんね。
女性であり、母である人だけに大変気づかいができる人で、私たちも自己満足だけではなく、おもてなしを通じ、今回も沢山のことを教えて頂いたような気がしました。
次の機会にぜひ生かしたいものです。