マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
草木もより元気になり、百花繚乱と表現されるように沢山の花が咲き乱れ、小鳥がさえずり、優しい風が吹く春はいくつ年を重ねてもウキウキ、ワクワクします。
どんどん春の鋭気に触れて下さい。
そして「出会いの春」といわれるように、4月は新年度のスタートで、学校でも、職場でも多くの新しい出会いがある時期です。
前向きに出会いを求めて行動に移すのもお勧めです。
ちなみに明治の初めに日本は、旧暦から現在使用している新暦に変わったわけですが、多くの場合「新年度」は4月になっています。
このコラムで花見と稲作の関係に度々触れましたが、日本の暦は稲作が大きく影響しているように思います。
また日本のしきたりの起源は稲作と深い関係にあります。
今でこそ大型の機械で稲作は効率的になりましたが、昔は88の手間を要する大仕事です。
田を耕し、水を通してそれを管理する必要があります。
とても一人ではできないので、いろいろな人と協力しながら作業を進めなければなりません。
だから「和すること」が必要不可欠になります。
休みも勝手にとるわけにはいきません。
みんな同じ日に休み、同じように働くようになるわけです。
加えて自然が相手ですから、自然とも共生しなければなりません。
こうした過程で、しきたりや風習が根付いていくわけですが、それだけではありません。
常に感謝の心を持ち続けて、祭りの行事などを通じその心を表現し、喜びを共にしてきたわけです。
ところで4月になれば様々な出会いのシーンがあちこちで展開されます。
新しい出会いがあれば、それに感謝する心を持つことが大切だと考えます。
次に折角の出会いを有効に生かす工夫をしてください。
神様から与えられた新しいご縁をいかに結び、深めていくかということで、今後の人生はおおきくかわります。
徳川幕府の剣術指南役を務めた柳生家の家訓に、才能のあまりない人は縁があっても縁に気がつかないが、中位才能がある人は縁があればそれに気づくことができる。しかしそれを生かすことはできない。
それに比べて才能がある人は、「袖振り合う縁も多生の縁」と言って、袖が単に触れ合っただけの些細な出会いでも、その出会いをものにしてしまうとあります。
どんな人や事や物に出会い、何を感じて、どう行動に移すかは、10人いれば10通りの考えがあるでしょう。
折角の縁に巡り合えても、どんな気づきがあって、どう行動するかにより、今後が大きく変わることをぜひ認識してください。
この地球という星に人間として生まれてきたのも、新たな出会いも、自分の努力ではどうにもなりません。
それらを天から与えられた宝物と認識し、その先を有効に生かす努力は、自分でしなければなりません。