マナーうんちく話521≪お心肥し≫
長雨と台風で刈り入れが遅れましたが、陽光に輝く稲穂が日本の秋を実感させてくれます。
黄熟した稲穂はいつみても前向きの気分になれます。
米を主食にしている日本人ならではの感覚でしょうか。
稲の出来不出来がその年の生活を左右するので、当たり前といえば当たり前かもしれませんね。
以前にも触れましたが「実るほど首を垂れる稲穂かな」という有名な言葉があります。
しかし稲は頭をたれても決して倒れません。
なぜだかお判りでしょうか。
しっかりと地中の中で根を張っているからです。
稲の根が活性化するためには様々な努力が大切なわけですが、こればかりは実際に米作りに携さわらないと理解できないかもしれませんね。
昔から日本人は田んぼに非常に気配りをしているということです。
それと同様、ビジネスでもプライベートシーンでも他人に対して気配りができる人は素敵です。
その人がそこにいるだけで場が明るくなったり、なごんだりする素敵な人をホテルでの接客の仕事を通じ多々見てきました。
高価なブランドの衣装や小物を身に付けているとか、スタイルが良くて美人という人ではありません。
一様に他人に対して気配り上手な人だからです。
では「気配り美人」とはどのような人かといえば、ひとえに素敵なマナーはさりげなく発揮できるということにほかなりません。
TOPに応じて、仰々しくとか、わざとらしくではなく、あくまでもさりげなくサラッとマナーが発揮できる人です。
必要に応じて社内研修などでビジネスマナーを学ぶのもいいですが、本当の優雅さは日常生活の中で身につくものです。
従って、できれば毎日あわただしく過ごすのではなく、たまには自然の中に身を置き、余裕を持つことをお勧めします。
加えて年中行事に関心を持ち、その由来や意義を正しく理解することをお勧めします。
西洋から伝わった行事より日本の伝統行事に関心を持ってください。
そうすることで美しい気配り精神が宿ってきます。
社員研修で形にはまったビジネスマナーが身についたとしても、それがそのまま日常生活を潤してくれるとは限りません。
今は男女共同参画社会とか男女平等が当たり前になりましたが、互いに権利ばかりを主張するばかりではなく、
日本人特有の細かで美しい配慮は大切にしていただきたいと思います。
不必要に媚びることなく、凛とした美しさは心地良いコミュニケーションにもなるでしょう。
物が豊かで便利な時代になるとともに、国際化の進展に伴い、西洋のライフスタイルが幅を利かせていますが、日本には世界に誇る「和の礼儀作法」があります。
窮屈だ、型苦しいというイメージが先行しているようですが、「思いやりの心」を具体的に表現したものです。
真の国際化とは、西洋かぶれすることなく、まずは自国の文化や礼儀作法に精通し、それを国際社会に発信することだと考えます。
特に和食がユネスコの無形文化遺産に選ばれた理由を理解し、和食のテーブルマナーを身に付けるだけでも、気配りは格段に上手になるでしょう。
私が主催する和食のマナーは、毎回あらゆる層の人が受講されますが、ひとえにこのような理由があるからだと思います。
加えて「プロトコール」、つまり国際儀礼では他国の文化の尊重があります。
そのためにも、自国の文化はしっかり精通しておきたいものです。
これは数えきれないくらいありますが、私は一番に「和食のマナー」をお勧めします。
美しい箸使いはいつみても美しいもので、そこにはその人の教養がにじみ出ている気がします。