マナーうんちく話92≪優雅さが自慢!和の作法≫
本来は食べることが目的ではないことをしながら、ついでに食べることもあります。
例えばテレビを見るのが目的なのに、ついでにお菓子も食べるとか・・・。
よくないと思いつつつい癖になってしまいます。
ひとえに「飽食の国」と言われ、食べ物が氾濫しているからだと思いますが、意識を持つことをお勧めします。
江戸時代のことわざに「たてばシャクヤク座ればボタン歩く姿はユリの花」がありますが、当時の着物を着た女性が、畳で見せる美しい立ち居ふるまいを表現した言葉です。
日本の礼儀作法には、エレガントなふるまいの基本になる「一回一動作」があります。
例えば結婚披露宴で新郎新婦の幸せな門出を祝い乾杯するときに、シャンパングラスを持って起立するか、起立してグラスを持つかでは雲泥の差があります。
一回一動作の理念では、起立する行為と、グラスを持つ行為を独立させます。
つまりその動作に心を込めて美しさを醸し出すということです。
従ってこの場合は、先ず起立する、そしてグラスを持ちます。
「その動作に心を集中させる」という観点においても「ながら食い」はよろしくありません。
あくまで「食べる」ことに集中させることです。
そして食前と食後の挨拶をきちんとおこない、「オン」と「オフ」のメリハリをつけるのもお勧めです。
自分も落ち着くし、周囲の人も心が穏やかになり、信頼感や安心感を抱くでしょう。
しかし認知症予防体操などでは、いくつかの動作を重複させる「ながら体操」も奨励されています。
例えば散歩しながら数を数える、歯を磨きながら足を動かすなどです。
素敵なマナーが要求される場面か、認知症予防のためか・・・。
臨機応変に振舞ってください。
ただマナーの視点では、家庭や職場や学校においては、相手を思う心が存在して、それを言葉や態度や表情などで具体的に表現することで交流は生まれるわけです。
あわただしく過ぎる生活の中で、どのように意識的に改善できるか考えてみるのもお勧めです。
自分本位ではなく、いかに相手を思い、心を込めることができるか・・・。
マナーとはそういうものです。
古今東西「生きることは食べること」ですから、食材や同席する人に配慮した美しい食べ方ができる人は、結局何をしてもうまくいくと思うわけです。
そして上に立つ人ほど「美しい食べ方」の良き模範を示していただきたいものです。