マナーうんちく話239≪バラ色の人生とマナー≫
日本の四季の美しさは世界中の人がうらやましがるところですが、同時に日本は「和」をとても大切にする国です。
最近欧米諸国から様々な文化や学問が持ち込まれ、欧米の権利や個性を大切にする「個人主義」が特に広まってきた感が有ります。
しかし日本は稲作を中心とした農耕文化で栄えた国です。
米作りには水田が必要で、水田は水の管理が必要です。
一人では難しいのでみんなで力を合わせる必要があります。
だから個性や自由よりも「協調」や「調和」が大切になるわけです。
加えて米作りには自然と仲良く暮らす力も必要です。
自然を詳細に観察し自然に順応した生き方が大切になります。
日本人くらい、人と人との調和、自然との共生を大切にする国はないのではないでしょうか・・・。
日本の礼儀作法はこのような社会背景から生まれています。
従って日本のおもてなしの根源を成すものは「思いやりの心」と言えます。
ところで、利休が説くおもてなしの心の一つに「降らずとも雨の用意」という項目があります。
お持て成しをする時にはいつも「相手の為に万全の備えをしなさい」という意味です。
現在は天気予報が発達しているお陰で、今は降っていなくても天気予報が雨だったら一応傘を用意します。
恐らく誰でも出来る簡単なことです。
しかし利休は、今がたとえ晴れていても、とっさの時に備えて傘を用意しておく、その気配りこそがおもてなしの心だと述べています。
「備えあれば憂いなし」ですね。
また、「石橋をたたいて渡る」という諺が有ります。
ビジネスシーンでも、何か一大事が発覚すればそれに向けて必死になります。
当然のことでしょう。
しかしビジネスを行う限り、常に色々なことを想定して、最悪の事態に備えて置くことが必要だということですね。
原発事故や自然災害時に対する備えも非常に大切です。
一時学者の「想定外」という言葉がはやりましたが、このような無責任な態度は感心しませんね。
雨が降っていなくても、お客様をお迎えする以上は常に傘の用意、即ち万全の備えをする気配りが日本流のお持て成しではないでしょうか。
加えて利休は「時刻は早めに」とも説いています。
何事も心にゆとりを持てという教えでしょう。
このゆとりが相手を思いやることに繋がるからです。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉には、相手を思いやるには先ず自分自身が充実することが大切であるという意味が有りますが、まさにその通りです。
ゆとりを以って万全の備えでお持て成しをする。
この気持ちを常に大切にしたいものですね。