マナーうんちく話464≪「おいとま」と「お見送り」のマナー≫
日本の「おもてなし」の精神は世界が認める素晴らしい文化です。
そして「おもてなし」=「ホスピタリティー」と表現されますが、私は少し意味合いが異なると思っています。
四季が明確に分かれているせいで、日本の年中行事の数は世界屈指だと言われていますが、四季折々に開催される年中行事には食事が付き物です。
加えて日本は稲作を中心とした農耕文化で栄えた国であり、神様(神道)・仏様(仏教)の国でもあります。
つまり古来より脈々と受け継がれてきた日本の年中行事は、米、神様、仏様と非常に密接な関係が有ります。さらに日本人は四季を愛で、自然と仲良く暮らし、豊かな感性を育んできた民族です。
このようなことから日本のおもてなしの原点は、「四季の美」で持て成す点にあると言っても過言ではないと思います。
欧米諸国にはまねのできないことでしょう。
また先祖、つまり「神様を敬う精神」がとても旺盛です。
年中行事の多くは神様を敬うものですね。
ここにも日本のおもてなしの大きな特徴があるのではないでしょうか。
たとえば「お正月」はご先祖の里帰りです。
これに対して丁寧におもてなしの準備をして正月を迎えます。
そして正月になると、心を込めてお持て成しをして、お見送りするわけですね。
具体的には12月中旬の「松迎え」から準備が始まり、正月にはお節料理でお持て成しをします。ここにおもてなしの原点が集約されていると思います。
神様と共にお節料理を食すために「祝い箸」まで用意している点からも頷けます。
また春分の日には「ぼた餅」で仏様を持て成し、「秋分の日」には「お萩」で持て成します。
お盆に仏様が里帰りされるので、「迎え火」を焚いてお迎えして、ごちそうや盆踊りをしてもてなします。そして送り火を焚いて丁重にお見送りをします。
秋になり稲刈りが終われば、神様に感謝の気持ちを込めて「秋祭り」を盛大に執り行い、祭りずしなどと共に持て成しします。
このように四季折々において、ご先祖を神様・仏様として崇拝し、ご馳走やイベントでもてなすのが日本の持て成しだと考えます。
従って、神様をおもてなしするのですから裏表があってはいけません。
だから「おもてなし」=「表裏無し」なのです。
下心もありません。
日本のおもてなしの文化は非常に清らかなものだと思います。
だからこそ、お持て成しを「する側」と「される側」も、時と場所、目的に相応しい立ち居振る舞いが求められるわけです。
西洋の「個」を重要視するサービスとは基本的に異なると思うわけです。
年中行事のいわれやしきたりを正しく理解することで、日本人のおもてなしの心がより理解できます。
歳時記のマナーのコラムも是非参考にして下さい。