マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
1月7日は「七草粥」でおなじみですね・・・。
正月のご馳走を食べ過ぎた胃腸を休ませると共に、邪気を払うこの行事は、飽食の時代に相応しい行事だと思います。
ところで、七草には「春の七草」と「秋の七草」がありますが、前者は食用で、後者は観賞用です。
そして、1月7日は「七日正月」と言われ、七種の野菜が入ったお粥を食べる風習が全国津々浦々にあります。
野菜というより、早春に野や山に自生する「若菜」と言った方が良いかもしれませんね。
セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロがそうですが、最近はセットで販売されているので都会でも簡単に手に入ります。
全部揃わなければ、大根や蕪の葉だけでも充分楽しめます。
現在の日本では四季を通じ豊富な野菜が入手できますが、昔は寒い時期は野菜に恵まれず、ビタミン類の補給も思い通りに行きません。
しかし、自然界では新しい生命が芽吹いています。
自然と寄り添って生きていた先人はここに目を向け、この新しい命を頂くことで、病気にならないよう心がけたのでしょう。
ちなみにこれらの野菜は、六日に野や山に出向いて摘んでおくわけですが、このことを「若菜迎え」と言います。
12月13日に年神様をお迎えするために「煤払い」を行い、その後門松に使用する松を切りに山に出かけますが、このことを「松迎え」と言うのとよく似ています。
今のように娯楽が無かった昔は、若菜を摘むことは、春を迎える喜びと共に、大きな喜びであったことだと思います。
だから万葉集に、春の野山で若菜を摘んだ歌が多いのも頷けます。
そして平安時代になると、この風習が七日の若菜摘みの行事となったようです。
摘んだ若菜はお粥に入れるために包丁で細かく刻みます。
この時は、大きな音をあえて出しながら刻みますが、なぜでしょう・・・。
農作物を食い荒らす鳥を追い払うためです。
野菜を食べる動物は猪、鹿、猿等で至る所にいますが、鳥の被害も大きいわけです。
我が家の畑にも春先になると色々な鳥の軍団がやってきますが、これは防ぎようがありません。
「鳥を追い払う行事」が各地で存在するのでしょうか。
七草の行事は、この行事も加味されたものだといわれております。
また、四季が明確に分かれている日本には「五節句」がありますが、七草は「七草の節句」あるいは「人日の節句」とも言われています。
「人日の節句」とは、人の吉凶を占う日とされ、江戸時代には幕府が公式行事としたので、七草を食べる人日の節句が定着しました。
丁度時期的には大根や蕪の葉が元気良く、芹(せり)が競り合うように盛んに生える頃でもあります。
なにはともあれ、今日はお粥を食べ、胃腸を休め、邪気を払い、この一年元気で活躍できるコンディションを整えて下さい。
正月気分に、そろそろ区切りをつける頃でもあります。