マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
上品で、礼儀正しく、教養の在る男性と言えば「英国紳士」を思い浮かべますが、日本の上流の武士もそうでしょう。
山高帽をかぶり、三つ揃えのスーツを着て、傘を持ち、申し分のない美しい仕草の英国紳士も恰好いいですが、日本の武士も兎に角格好良く、現代人が見習うべき点が外見も内面も多々あります。
但し、国際化の時代ですから、TPOに応じ、英国紳士を見習うか、武士を見習うかの判断が大切です。
例えばレディーファーストが要求されるのか、男性優位が良いのか、和室か洋室か等などです。
前回は主に江戸商人の「江戸しぐさ」のソフト面に触れましたが、ここでは補足の意味も込めて武家礼法を整理しておきます。
恰好いい生き方と申しますか、「心豊かな生き方」にとても役に立ちますので、是非参考にして下さい。
武士は多分に危機管理的要素や、自分を誇示するための、ある種の美意識的要素が強かったと思います。
さらに目上の者に対しては謙譲の意識が常に付きまといます。
例えば「上座」です。
身分や地位により居場所が異なり、常にそれを意識する必要があるわけですから窮屈です。
和室の上座は一般的に「床の間」と「床脇棚」により決まりますが、現代では床の間が無い家もあります。
そのような時には、入口から遠い場所が上座と考えればいいでしょう。
さらに眺めの良い場所や冷暖房が良く効く所も考慮して下さい。
いずれにせよ今風の上座の考えは、「お客様に心地良く、くつろいでいただける場所」だと心得て下さい。
一方、客側としては、主人が床の間を勧めてくれたことに感謝の気持ちを忘れないことです。
加えて、「正座」や「お辞儀」です。
江戸時代になり平和な社会が訪れると正座が中心になります。
主人に対して尊敬の念を抱き、敵意が無いことや服従を表現するために定着し、さらに明治になって正式な座わり方として、当時の文部省も推奨し、礼法にも取り上げられたいきさつがあります。
この正座は兎に角美しい座わりかたで、外国の人には難しいでしょう。
是非モノにして頂きたいものです。
さらに「立つ・座わる」動作の中で経由する姿勢に「き座」があります。
正座と直立の中間における基本動作です。
これは覚えておくと大変品の良い立ち居振る舞いになります。
加えて、他家を訪問し、履き物を脱いで揃える時にも上品な振る舞いが出来ます。
次回に続きます。