マナーうんちく話535≪五風十雨≫
毎年野菜作りの傍ら菊をほんの少しばかり栽培していますが、今年も品の良い香りが漂い始めました。
菊はもともと奈良時代に薬草として日本に伝えられたそうですが、江戸時代には観賞用として本格的な栽培が始まり、庶民にも愛されるようになりました。
そしてその伝統を受け継ぎ、この時期になると全国津々浦々で菊花展が開催され、菊人形がお目見えします。
そういえば競馬にも「菊花賞」と言うレースがありますね。
菊は仏事にも良く使用されますが、晩秋になり花が少なくなり、野山が閑散とした時期に、霜にも負けず凛とした花を咲かせるので、昔から縁起の良い花とされています。
だから50円硬貨にも登場しているし、皇室の紋章にもなっていますね。
また、このコラムでも詳しく触れましたが、五節句の中でも一番格式の高いとされている9月9日の「重陽の節句」は「菊の節句」とも言われます。
酒を入れた盃に菊の花びらを入れて飲む「菊酒」は、長寿にあやかれるという言い伝えがありますが、なかなか風流で、心が豊かになります。
では「菊枕」をご存知でしょうか?
今が旬の菊の花びらをつまみ乾燥させます。
概ね10本程度の菊の花弁を使用して、2日程度、天日干しされたらいいでしょう。
それを布の袋に詰めて、普段使用している枕に忍ばせれば出来上がりです。
昔は女性から男性に贈られたものですが、恋しい人が夢に登場するという言い伝えがあります。
バレンタインデーのチョコレートもいいですが、日本人ならではの感性に触れてみるのもお勧めです。
安眠効果が期待でき、頭痛によく効くとされています。
《ぬひあげて 菊の枕の かおるかな》
大正から昭和にかけて活躍した女流歌人杉田久女が、師匠である高浜虚子に、長寿の願いを込めて贈った句です。
菊は邪気を払い、長寿をもたらすとされていますので、自分への贈り物として、また大切な人へのプレゼントとして手造りされるのもお勧めです。
「菊枕」は晩秋の季語にもなっていますが、菊は今が旬ですから、とてもお洒落なプレゼントになると思うのですが・・・。
今朝の紙面にハロウィーンイベントが大きく報じられていましたが、日本の伝統ある美しい文化が、外来の文化にとって代わるのを心配しています。
やはり自国の礼儀作法や文化は大切にしたいですね。