マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
医学の専門家でもなく、権力や財力がなくても、日本は現在、普通の人が100歳まで生きられる時代になりました。
秦の始皇帝が財力や権力にモノを言わせ、配下の者に不老長寿の薬を探し求めさせた話しは有名ですが、それでも始皇帝が生きたのは半世紀です。
それに比較すると今の日本は本当に素晴らしいと思います。
長寿は人類全ての永遠のテーマであり、それが達成できたことは誠に目出度くも有り、喜ばしいことです。
終戦直後は先進国の中で最も平均寿命が低かった日本が、僅か半世紀で世界屈指の長寿国になった原因は色々あります。
医療制度が充実したこと、医療技術が発達した事、国民の健康への関心が深まった事等も大きな理由ですが、経済が豊かになり国民一人当たりの栄養状態が向上した事が大きな理由でしょう。
日本人は元々勤勉な国民ですから、戦後の普及に向け国民が一丸となって努力して成し遂げた偉業です。
しかし、素直に喜んでばかりいられません。
多くの課題も新たに生まれました。
長寿社会は裏を返せば高齢者の多い社会です。
国連の定義によると、総人口のうち65歳以上の高齢者の占める割合が7%以上になったら「高齢化社会」、14%以上になったら「高齢社会」、21%以上になったら「超高齢社会」と言いますが、現在の日本は25%を超えています。
4人に1人は高齢者ということですが、山間地域等では3人に1人、2人に1人という地域も珍しくありません。
それに加えて、少子化です。
高齢者を支える働き盛りの人が多ければいいのですが、少子化のあおりを受け働き手も減少するので、負担が大きくなるわけですね。
少子化の原因はひとえに晩婚化や未婚化や非婚化ですが、こちらも留まるところを知りません。
つまり、今の日本は高齢化と少子化がどんどん進行していると言うことです。
加えて、「平均寿命」と「健康寿命」のギャップがあります。
日本人の平均寿命は男性80歳、女性87歳ですが、健康寿命は男性71歳、女性74歳です。
このことは何を意味しているかと言えば、男性は亡くなるまで9年間、女性は13年間、自立できずに介護等のお世話になる計算です。
高齢者が増加すると共に、介護を必要とする人も益々増えるわけですから、介護に関する施設や介護に携わるマンパワーも当然不足します。
「介護難民」というキーワードが生まれるゆえんです。
介護難民とは、介護が必要な状態の高齢者が、家庭でも施設でも必要な介護が受けられない人です。
遠い話しではありません。
誰しも身近でなりうることですよ。
次回に続きます。