マナーうんちく話535≪五風十雨≫
青い空、緑の山、百花繚乱の花、小鳥のさえずり・・・。
4月も半ばを過ぎると、全国津々浦々において、カラフルな鯉のぼりが大空に泳ぐようになります。
「地域創生」が旬の話題になる中、鯉のぼりで町おこしを試みている町も結構ありますね。
鯉のぼりは「端午の節句」に飾られますが、《屋根より高い鯉のぼり 大きい真鯉はお父さん 小さい緋鯉は子ども達 面白そうに泳いでいる》と歌われる「こいのぼり」の曲は有名ですね。
ところで「端午の節句」をご存知でしょうか?
1月7日の「人日の節句」、3月3日の「上巳の節句」、5月5日の「端午の節句」、7月7日の「七夕(しちせき)」、9月9日の「重陽の節句」を五節句といいますが、端午の節句はこの五節句の一つです。
3月3日の「上巳の節句」は「桃の節句」と言われ女子の節句ですが、これに対し、「端午の節句」は「菖蒲の節句」ともいわれる、男の子の成長を祝う節句です。
そして、5月は菖蒲が旬ですが、菖蒲は邪気を払う効果があります。
加えて、「男の子は武を尚(たっと)ぶべし」と言われたように、旬の植物で邪気を払う効用がある「菖蒲」と、「尚武」をかけて「尚武の節句」とも言われます。
ところで、桃の節句にはお雛様を飾りますが、端午の節句には「鯉のぼり」を大空に威勢よく泳がせます。
長い歴史を有していますので、その由来に触れておきます。
室町時代の頃、武家の家では、男の子が生まれると「吹き流し」を立てて祝いました。
それが江戸時代になると町人も真似るようになります。
但し町人は武士と同じようにはできませんので、吹き流しの代わりに、紙で作った鯉を大きな竹の頭に付け、大空を泳がせるようになったと言われています。
なぜ鯉なのか?と言えば、中国に「鯉の滝登り」と言う故事があります。
黄河の上流に竜門と言われる大変流れが急な滝がありますが、その滝を登りきることが出来た鯉は「竜」になると言う言い伝えがあります。
龍は中国の創造上々の動物ですが、皇帝のシンボルとして扱われてきた神秘的な生き物です。
だから「鯉の滝登り」は大変縁起が良いので、いまでも立身出世や家運隆盛を祈って絵や掛け軸に描かれています。
また、難しい関門を突破した事を意味する言葉で「登竜門」は有名ですね。
ちなみに、日本で最初に成文化されたマナーは聖徳太子がお造りになった十七条の憲法だといわれていますが、当時の官僚たちにとっての登竜門は、礼儀作法に精通することだったようです。
女の子の成長を祝う「上巳の節句」。
男の子の立身出背を願う「端午の節句」。
共に親が子に与える素晴らしい贈り物で、いつまでも残したい行事です。
しかし、親が子に与える最高の贈り物はマナーだと言うことも、是非認識して頂きたいものですね。
ちなみに、「5月飾り」は何もかも清らかで生き生きと輝く頃の24節季の一つ「清明」に飾るのがよいとされていましたが、あまりこだわる必要はないでしょう。
しかし、縁起物ですから大安吉日の日に飾られるのがお勧めです。
お雛様のように「早く飾り、早くしまう」ものではないようです。地域の慣習にあわせればいいでしょう。