マナーうんちく話604≪武士は食わねど高楊枝≫
お客様にお茶を出すケースは公私に渡り多々あります。
最近は、お茶を出すことを控えている職場もあるようですが、マナーの視点から言えば寂しいことですね。
これはともかくとして、お客様にお茶を出して、それが冷めてしまったら、どう対応するか?迷うこともあります。
お客様に出したお茶が冷めると言うことは、お客様が遠慮して飲まれない、体調に不具合をきたしている、話が盛り上がっている等と原因は様々です。
加えて、お客様の好き嫌いも有れば、喉の渇き具合もあります。
また、室温にも影響されます。
しかし、一般的には概ね30分くらいが経過したら、新しい飲み物に変える事をお勧めします。
この際、出来れば前のお茶と同じものではなく、別の種類がお勧めです。
勿論、器も別の物に変えて下さいね。
「三杯のお茶(三献茶)」という有名なエピソードがあります。
その昔、豊臣秀吉が狩りに行きました。
喉が渇いたので近くの寺に出向き、茶を所望しました。
早速、小僧が大きめな器で、生ぬるいお茶を出してくれました。
秀吉はそれを一気に飲み、お代りをしました。
次に出されたお茶は、中くらいのお椀にやや熱めのお茶でした。
一杯目と異なるので、それを飲んだ秀吉はあえて三杯目を要求しました。
今度は、小さめなお椀に熱いお茶が少し出ました。
その見事な応対に、秀吉はすっかり感心して、小僧を召抱えました。
この小僧が後の石田光成です。
このエピソードの言わんとすることは、同じお茶でも、相手の状況や状態に応じて臨機応変に対応することの大切さです。
そして、真心をこめてお持て成しをしてくれた相手の心意気をくみ取ると言うことです。
これにはそれなりの知識やスキルが必要です。
今流のマニュアルとは異なります。
マナーは法律ではありません。
特に日本のマナーは思いやりの心が基本ですから、このような臨機応変な対応はとても大切です。
しかし、そうは言え、このような対応は誰でもできるわけではありません。
一番良いのは、出す時にお飲み物は、コーヒー・紅茶・日本茶をご用意いたしておりますが、お好みは?と聞いてあげることです。
場合によっては、堅苦しい雰囲気が漂い、お客様の好みが伺えそうもない時には日本茶が無難です。