まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
春分の日の3月21日、日本列島は春の陽気に誘われ早々とソメイヨシノの開花が発表されました。
日本人に生まれて本当に良かったと実感する頃でもありますね。
俳句をたしなむ人は良くご存知だと思いますが、この時期の季語に「山笑う」があります。
そういえば木々たちが一斉に芽吹く春の山は、霞の中で優しく微笑んでいるような気がしませんか?
そして夏になると、葉が水気を多く含み、爽やかさや鮮やかさで覆われて来るので「山滴る」と表現されます。
さらに秋になると、赤や黄色に色づき、まるでお化粧をしているようになるので「山装う」と言われます。
加えて冬になると、それらの葉は木枯らしと共に落ち葉になり、山全体が無表情になるので「山眠る」となります。
昔の人の山は、気高くそびえる高い山だけではなく、木が生えていれば林も里も山と呼んでいたようですね。
だから、これらの表現は、暮らしの中にある里山の四季の移ろいを、細かく観察し、人の動作に例えたのでしょうか。
本当に素晴らしい感性ですで。
日本が世界に誇る「思いやりの心」が凝縮された礼儀作法は、このような素晴らしい環境や感性から生まれたわけですね。
不必要に西洋かぶれするのではなく、この美しい言葉も景色も作法も、現代に生きる者としてしっかり認識し、次世代に残していきたいものです。
ところで、このように四季折々に変化する日本の山はどんな山だと思いますか?
冬になる前に、古くなった葉が全て落ちてしまう「落葉樹」の山です。
ちなみに、一年中緑を絶やさない木は「常緑樹」と言われ、マナーの世界では縁起のいい木だとされています。
例えば、日本では松が神の宿る木とされ、門松にも使用されたり、松竹梅という縁起がいい言葉の筆頭になっています。
欧米でもクリスマスツリーは樅の木です。
新幹線に乗ると実感できますが、日本は「山の国」で国土の3分の2は山地ですが、これからしばらくは山笑う光景が続きます。
別れや出会いの季節であり、新年度の準備で何かと多忙な時ですが、気候は過ごしやすく、穏やかな日になってきます。
たまには心にゆとりを持って、美しい日本の四季を堪能するのもお勧めです。
心が洗われます。
また、自分が今住んでいる地域の光景を細かに観察することは、人を見る目を肥やすことにもつながります。
《故郷や どちらをみても 山笑う》 正岡子規