マナーうんちく話813《この世をば 我が世と思う望月の・・・》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

先日の日曜日はお祭りの所も多かったと思います。
祭りと言えば「祭りずし」や「鯖ずし」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

祭りずしは池田のお殿様の倹約令により庶民が知恵を働かせて作った料理ですが、鯖寿司は「青魚の王様」と言われる位美味しくて栄養価も高い鯖を美味しく保存するために、先人が編み出した究極の料理です。

数字をごまかすことを「サバを読む」と言いますが、これは、鯖は大変鮮度が落ちやすく数も多く、丁寧に時間をかけて正確に数えられないので、大雑把に数えたからです。

また、今時の果物は栗に柿が主役になりますが、柿は「柿が赤くなると医者が青くなる」と言われる位栄養価が高い果物です。

甘い柿と渋い柿がありますが、渋い柿の皮をむいで干したものが「干し柿」です。縄につるして干すから「つるし柿」とも言われます。

こうすることにより、渋い柿を甘い柿に変身させたわけで、今流に言えば干し柿は日本を代表するドライフルーツだと思います。

なにしろ、動物も目もくれない渋い柿が、人の力で甘くなるわけですから、大変縁起物として重宝されました。
だから正月飾りには今でも欠かせないわけですね。

お殿様の命に背かないように知恵を絞って作った祭ずしを考案したり、足の速い鯖を鯖寿司にして保存性を高めたり、渋い柿を干すことで甘くしたり、先人は感性も豊かですが頭も相当良かったのではないでしょうか。

ところで、このコラムでも二十四節季を頻繁に取り上げていますが、二十四節季は旧暦の歳時記です。

旧暦は月の満ち欠けが基準になりますが、今の季節はお月様が大変綺麗な頃で、「お月見」をします。

お月見は十五夜や十三夜の月、つまり「二夜(ふたよ)の月」を愛でることですが、十五夜の月を愛でたら十三夜の月も愛でることが大切だといわれております。片方だけだと「片見月」とか「片月見」といって嫌われるからです。

そして平成26年の「十三夜の月」は10月6日です。
旬の豆や栗をお供えするので、別名「豆名月」「栗名月」とも言います。

では、なぜ中途半端な十三夜の月を好んだのでしょうか?
完璧な満月でなく、あえて少し欠けているお月さまを愛でたということは、当時の人は「腹8分を良し!」としたのでしょうね。

「腹8分に医者いらず」と言いますが、食欲の秋だからと言って毎回ご馳走を満腹になるまで頂き生活習慣病になるより、出来る限り「腹8分」を目指したいものですね。贅沢に慣れてしまったらとても難しいことですが・・・。

《この世をば わが世と思う望月の 欠けたることも なしと思へば》

栄華を極め幸せの絶頂にあった藤原道長が、祝いの席で呼んだ歌です。
この世はまさに自分の世だと思う。今宵の満月のように、欠けたことがなく、なにもかも満ち足りていると思へば・・・。

今から約1000年前の歌ですが、当時は物質的には今と比較にならないほど貧しかったはずですが、権力の頂点に立った藤原道長は、思いのまま贅沢のし放題です。しかし、やがてそのひずみが出ることになります。
この歌を詠んだ頃は、既に今でいう糖尿病を患っていたと言われています。

ちなみに、片見月は縁起が悪いと言ったのは江戸時代の遊女で、満月に来店したお客様を十三夜にも呼び込もうとする策だったわけです。

貧しいながら頭と知恵を働かせた遊女と、栄華を極め贅沢三昧で生活習慣病に侵された道長。
どちらの生き方にも教えられることがあります。

「十三夜に曇りなし」と言われますが、今夜あたり空を見上げて、お月様を見ながら、色々と物思いにふけるのもいいかもしれません。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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