マナーうんちく話786≪涼風至る「夏の果て」≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

台風一過再び猛暑がやってきました。
しかし8月も中旬ともなれば、日中は暑い!暑い!といいながらも朝夕には涼しい風を感じるようになります。

台風による暴風にはなんらロマンを感じることはできませんが、四季が明確に分かれている日本では、季節の変わり目には、その季節ならではの風が吹いてきます。

なかでも、厳しい暑さを和らげてくれるこの時期の涼しい風は、身も心も心地良くなります。だから七十二候では「涼風至る」と表現して、秋の気配の始まりとしています。
つまり、今は秋の気配が忍び寄っていることを察知する時なのです。

また、世界的に美しい言葉と言われている日本語には、四季の感性を木目細かく表現した「季語」があります。

「猛暑、炎暑、酷暑もやがて果てる時が来て、秋になるよ」と言う意味で、先人はこの時期のことを「秋隣(あきとなり)」「夏の果て」「夏惜しむ」「ゆく夏」等と表現しました。

季語は約10000存在するといわれていますが中でも、猛暑から心地良い秋に移行する時期の「夏の果て」「秋隣」等は特に人気が高いそうで。
なんとなく解る気がしますね。

そして、「ひぐらし」が鳴く頃になりました。
夕暮れに響くひぐらしの声は、夏を惜しむように聞こえますが、まさに秋を知らせてくれる蝉で、晩夏の風物詩で季語は秋です。

夕方に鳴くから「ひぐらし」と名前が付きましたが、7月頃から朝夕に林や公園や街路樹から聞こえてきます。

他の蝉が少なくなる今頃から、物悲しげに鳴き始めるので、余計に秋のイメージが強くなるのでしょうか。

一方果物では、既にブドウがお目見えしましたが、桃が最盛期を迎えています。
桃は中国原産で3000年の歴史を有するそうですが、日本でも縄文の頃には食されていたと考えられています。

ところで、桃と言えばお雛様ですが、桃の花は春の季語で、邪気を払うと共に、一つの枝に沢山の花を付けるから子宝に恵まれる言い伝えがあります。

一方桃の実は丁度今が食べ頃ですが秋の季語です。
日本では白桃が主流で「晴れの国」岡山が有名です。
ちなみに、既に過ぎましたが、8月9日と10日は語呂合わせで「8910(ハクトウ)」の日です。

さて、夏の暑い盛りに出すのは暑中見舞いですが、この時期からは「残暑見舞い」になります。但し、目上の方には「残暑伺い」がお勧めです。

概ね8月の終わり頃までに出して下さい。
ポイントは身体に変化が起こる時期ですから、「お変わりございませんか」「ご自愛ください」等、相手の身体を気遣う言葉を盛り込むことです。

蝉に変わり、秋の虫が鳴き始めるまで少し時間がありますが、夏から秋への移ろいを、ファッションのみならず、空の色や、月の形や、虫の声や、空の色や、風の向きなどを心で感じることもお勧めです。

「自然に優しく」などと言う表現も良いかもしれませんが、自然に優しくしてもらっているのは人の方ですから、自然に寄り添い、自然の移り変わりを五感で感じ、自然に対して素敵なマナーを発揮して下さいね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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