マナーうんちく話520≪電車内でお化粧するの、どう思う?≫
花菖蒲(はなしょうぶ)が美しく彩っています。「はなしょうぶ」は「菖蒲(あやめ)」という名前で古くから日本人に愛された、水辺を好む涼やかな和の花です。
稲が生育する水田でもよく見かけますが、昔の人はこの花が咲くようになったら、梅雨に備えたと言われています。
そして、菖蒲に良く似た花で「杜若(かきつばた)」があります。
「あやめ」と「かきつばた」とくれば、美人を選ぶときに決まり文句になっている「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」の言葉が有名ですね。
平安時代に活躍した武将源頼政と、宮中の女官であった菖蒲前(あやめまえ)と言う美女が恋をしましたが、その恋はなかなか実りませんでした。
そんなある時、頼政は宮中を悩ます怪鳥を退治すると言う手柄を立てます。
そこで、鳥羽上皇から「褒美をとらすが何を望むか?」と言われて、頼政は迷うことなく「菖蒲前」を頂きたいと申し出ました。
鳥羽上皇も彼女を素直に渡したら面白くありません。そこで鳥羽上皇は、宮中の美女11人と菖蒲前に、濃い化粧をさせて一同に集めました。
いずれも迷うばかりの美女揃いになるわけですが、頼政はこの中から間違いなく菖蒲前を選ばなくてはなりません。
困った頼政はここで歌を詠んだわけですが、その歌が鳥羽上皇に感動を与え、頼政は菖蒲前と思いを遂げることが出来たというお話しです。
良すぎて選択に迷うような経験ならいくらあっても良いですね。
今回は《「和食」と「洋食」のマナーの基本的な違い》について触れてみます。
動物が生きて行くためには、「食べること」と「飲むこと」は不可欠です。
しかし、他の動物と異なり、人間が食べたり飲んだりする時には様々な決まり事があります。
人間は、皆で、道具を使って、料理した物を食べます。
皆で食べる行為は世界各国共通ですが、食べ物や、食べる時に使用する道具や、料理方法は、その国々の気候・風土、国民性、食文化、歴史、宗教等により大きく異なります。
そして、それぞれの国では、自国に相応しい食べ方を工夫してきたわけです。皆が、仲良く、安心して、平等に食べることができ、かつコミュニケーションが図れるような様々なルールを、長い時間をかけて作られたものがテーブルマナーです。
ちなみに、西洋は宗教戦争に見られるように常に戦争の歴史でしたから、その中から生まれたテーブルマナーの特徴は「危機管理的要素」があります。
加えて、「社交的要素」も含まれています。
例えば、「ワインのテイスティング」や、「使用していない手は武器を持っていないことを示すために常にテーブルの上に置く」等です。
また、厳格な序列や、品位を保つために食卓の雰囲気をある一定以上に保つための心配り等も大切な要素です。
これに対し、自然と共生し、農耕文化で栄えた神様・仏様(神道・仏教)の国日本は、平和を尊び、「神人共食文化」を築いたので、どちらかと言えば柔軟な対応と美しさを追求しています。
つまり、和食のマナーは柔軟な対応で他者に対する思いやりの心を大切にするわけです。
さらに、豊かな精神文化を有し、「器を持って食べる」と言う世界でも大変ユニークなマナーが存在します。
テーブルマナーの難しい点は、食習慣や食べ物や宗教等が大きく異なる点で、様々なスタイルが存在することです。しかし、その背景には必ず「なぜそうするのか?」と言う合理的な理由が必ず存在します。
大切な事は、理由を理解し、和食にせよ、洋食にせよ、不必要に作法に神経質になるのではなく、料理を提供してくれた人に感謝することと、美味しく楽しく食べること、そして、同じテーブルで食事をする人に好感を与えることです。