マナーうんちく話521≪お心肥し≫
ホームセンターに行くと夏野菜の苗が目立つ頃になりました。
最近は苗の販売も年々早くなり、4月下旬にはお目見えしますが、「八十八夜の忘れ霜」「九十九夜の泣き霜」といって、立春から数えて88日目や99日目に霜に見舞われ、被害をこうむることがあります。油断大敵です。
しかし、さすがこの時期になると霜の心配も無くなるので、カボチャ、スイカ、茄子、ピーマン、トマト、トーモロコシなどの夏野菜を移植します。
その際「ミミズ」を良く見かけるようになります。
ミミズは手も足も目も有りませんので「見えず」が、やがて「ミミズ」になったと言われております。
ミミズは、土の中にいますので目立ちませんが、初夏の訪れを告げてくれると同時に、畑の土を理想的な状態にしてくれる大変ありがたい生き物です。
つまり、野菜や果物が喜ぶ肥えた土壌を作ってくれる「縁の下の力持ち」です。
最近は住宅事情も大きく変化したので、「縁」を知らない人も増えてきましたが、縁側の事です。だから縁の下と言えば、表からは見えない縁側や床の下です。
縁側や床下には家を支える土台があり、縁の下の力持ちとは、その土台を力持ちに例えたわけです。
従って、「縁の下の力持ち」とは、他人のために努力する人のたとえです。
表舞台で活躍する人を、見えない裏で支える人で、比較的報われることの少ない人ですね。
日本独特の慣用句に「内助の功」がありますが、これと良く似ています。
内助(ないじょ)の直接の意味は、内部からの援助ですが、「賢い妻」とか「立派な妻」の意味もあります。
従って「内助の功」と言えば、夫の外での働きをサポートする妻の功績を意味します。
昔は男性優位の社会で、妻は目立たぬ存在だったので生まれた言葉だと思いますが、現在は女性の社会進出が目覚ましく、最近はあまり口にしたり耳にしたりすることが少なくなりました。
加えて歌舞伎や文楽で、黒い服と黒い頭巾を着用して、舞台装置を扱ったり、役者の手助けをする人がいます。
黒子(くろこ)と呼ばれていますが、「黒衣(くろご)」のことです。
「縁の下の力持ち」も「内助の功」も「黒衣」も、表には出ないで裏方に徹する点では共通していますが、人間が出来ていないと難しそうです。
特に上司はこうありたいものですね。
部下が上司に花を持たせる必要はあまりないと思いますが、上司は部下に花を持たせることは良いですね。
上司は部下に対し、必要に応じてアドバイスはするが、旨く出来たら部下を褒めて、手柄は部下に譲れるような上司は素晴らしいと思いますが、皆さんはいかがでしょうか?
人はとかく自分の事を良く思われたいものです。
だから人に自慢話を、つい、したくなります。
しかし、人に自慢話はしないのがマナーです。
なぜなら、人に自慢話をするのは気持ちいいですが、聞かされるのは気持ち良くないからです。
縁の下の力持ちもマナー美人も、人の手柄を素直に喜び、自慢話を笑顔で聞ける人です。